第69話 オペラ座の矮人 その9
将臣は王都でのOJT研修にあたり、妹のファイ、ターニャ、ゆあと同居することになった。
ある日、ゆあは将臣たちとの合同訓練で、将臣の同僚お小夜と知り合いになった。
一ヶ月もすると、ターニャは将臣のはっきりしない態度に不安と苛立ちを持ち始めた。
数日後、ゆあの姉であるヒルダ皇太子妃がお忍びでやってきた。
ヒルダはゆあにオペラ座への潜入を命じた。皇太子がオペラ座の地下に幽閉されているというのだ。
公演の当日、ヘルポスとラヌクスが加勢してボックスシートに入り開演を待った。
幕が開けると、将臣たちは楽屋で武装を整えたて地下へと入っていった。
ボックス席ではターニャと小夜が恋愛話をしていた。
『アタシも…将臣くんのこと好きになっちゃおうかな?』
「えっ!?」
ターニャの顔が引きつった
『うそうそ。冗談だよ。だって、向こうに彼氏いるし。ほんと冗談。ごめんね』
お小夜は続けた。
『でも公爵家のお嬢様とどうにかなる地位じゃないよね。どうなんだろ、その辺』
「第一村人協会の会長になればナイトには叙せられて、それだったらって言ってたわ?」
『それも怪しいよね。いくらナイトでもさ、ちょっと差が気にならない?第一、スーパーエリートでも若造が会長なんておかしいじゃん』
「ねえ、さっきから何が言いたいの?」
『ええとね。要するに、ゆあちゃんが将臣くんとどうにかるってのは、社会的に相当厳しいんじゃない?ってこと。だから、ターニャちゃんは、ターニャちゃんのまま自信を持って将臣くんと向き合えばいい!』
お小夜が自分の敵なのか味方なのか。ターニャはよくわからなくなっていたが、その言葉は胸に刺さった。
「あっ?え、ええ?う、うん……。そう、なのかなぁ……?」
『そうだよ〜。ていうかさあ。この催眠術みたいな歌声、まぢ勘弁だわぁ…。チンドン屋さんの音楽で踊った方が楽しいよぉ』
「さ、催眠術?お小夜ちゃんって面白いのね」
ターニャは心の曇りが少し晴れた気がした。それから二人は言葉を交わすことなく歌劇を鑑賞していた。
ガチャ。ターニャのいるボックス席のドアが開いた。
「あ、ま、まあくん……」
「ターニャ。とりあえず皆んなは地下に行った。あれ、お小夜ちゃん?」
お小夜は音楽が体に合わなかったと見え、すでに意識がなかった。椅子にふんぞり返り、完全に顎が上を向いて口が開いている。起きた時に腰が痛くなる姿勢だ。
将臣はボックスのステージ側から離れたベンチシートに腰をかけた。
「連絡は幕が終わったタイミングでいいの?」
「ああ。そのタイミングだね」
「そう」
ボックス席の最前面には、お小夜がふんぞり返り、その隣にターニャがいる。その後方、将臣が腰掛けている壁沿いのベンチシートにもオペラ歌手の歌声が流れた。
どうやら将臣にも歌声は合わなかったようだ。五分もすると、こっくりこっくりと眠かきをはじめた。
ターニャがそれに気がつき、将臣の隣に腰をかける。そして将臣に自分のショールをかけて呟いた。
「いいのよ、まあくん。私によりかかっても」
ターニャはそのまま将臣に寄り添い、第一幕が終わった拍手が鳴ると将臣の肩を揺らした。
「まあくん、まあくん。第一幕、終わったよ!?」
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