第29話 罪状
前回までのあらすじ
リヨイの村に派遣された将臣は、ダンジョンのモンスターが領主の娘を誘拐したときく。
将臣たちはダンジョンで老婆と化した水神と領主の娘を救出する。
ダンジョンを出ると、すでに夜が明けていたが、村人によればモンスターの夜襲を受けたと言う。
領主邸では、領主は虫の息だった。
領主は、これはモンスター襲撃ではなく土工山賊キンドーの仕業だと言うと絶命した。
湯八がキンドーのアジトに潜入すると、今回の件はキンドーと村の治安担当騎士オリワンの謀略であると判明した。
勇者一向は、オリワンとキンドーを打つべく決起し、パーティ編成して出撃した。
村に残った将臣は風呂に入ったが、水神が入ってきて何故か召喚スキルを授かった。
ゆあたちはキンドーのアジトに攻め入る。
一方、勇者一向はキンドーのアジト付近に到着し、森の影に待機した。
「さて、そろそろですわね」
将臣のスキルが発動される刻限になると、勇者一向はアジトの門へと向かった。
「おいなんだてめえら、あっトラオ!?」
ドカッ。ラヌクスが門番の首に手刀を浴びせて気絶させた。
「行きましょう」
「こっちでやす!宴会をしてる部屋は中庭に面しておりやす。こっちを突き抜けましょう!」
湯八の案内で中庭方面へと進む。
「おいなんだてめえらどっから!?」
バキっ。ヘルポスが峰打ちした。
周囲は段々と騒がしくなり、小競り合いをしながら宴会がなされている部屋の前に到着した。戸は開け放たれていて、中からもこちらが見えている。
「なんだ貴様ら!?」
「お前ら何者!?」
「お嬢様、あの鬼柄ベストを着たのがキンドーで、隣の綺麗な顔した兄ちゃんがオリワンでございやす」
「わかりましてよ」
ゆあはラヌクスに目線を送った。
「ラヌクス!」
「はっ!」
ラヌクスは公爵家の紋が入った筒を周囲に見せつけ厳しく声を張った。
「控えよ!こちらにおわしまするは、齢十三にして国王陛下より聖勇者の称号を賜りたる将来の大英雄!ガコエワ公爵令嬢聖勇者・レディゆあ様にあらせられるぞ!」
「ガコエワの公爵様のお嬢様!?ははぁっ」
「ははぁっ」
オリワン、キンドー、以下のもの一同は驚き慄き片膝をついた。
ゆあは気迫を込めて語り始めた。
「騎士オリワン!土工山賊キンドー!その方ら、リヨイ領主の座を強奪しようがため、領主の娘ターニャを亡き者にせしめんとし、さらにモンスターを装い村を襲撃し領主を殺害せしめたばかりか、自分が村を救ったなどという偽計を手柄に叙せられようとの企て。これ外道の所業にして卑劣極まれり。断じて許されぬ!大人しくガコエワ城衛兵科に自首を申し出よ!」
「なっ、何を証拠にそのようなことを!?」
「わたくしが証拠です!」
ターニャが叫びながら影から出てきた。
オリワンが焦る。
「ターニャお嬢様!?なぜ生きているのだ?」
ゆあは迫った。
「どうしまして?もはや言い逃れできなくてよ」
オリワンは苦悶の表情を抱えながら声を上げた。
「ぐぬぬぬぬ……!ガコエワのご令嬢に知れたとなれば最早これまで……。だ、だが、夜な夜なこんな田舎をプラつき歩くドラ娘。ここで野垂れ死んだとて何の不自然もあるまい!さっさと始末してダム湖に沈めてくれるわ!者ども出合え!出合え!」
ダダダダダっ!一同に出合った二十数名の配下の者たちが鈍器を構える。
「まあ!誰がドラ娘ですって!?」
「こやつは公爵家ご令嬢を語る痴れ者!ここから生かして帰すでない!今すぐ斬れ!斬り捨てい!」
「鈍器じゃ斬れねえから叩き潰しちまいな!」
キンドーは指示を訂正した。
「度し難いやつらですわ」
ゆあは声を低くして言うと、湯八に差し出された脇差を受け取り、すっと二刀流に構えた。
「わたくしの名前は引導代わり。奈落の底まで堕ちるがよい!」
断罪の刃が月光に光った。
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