第16話 第二階層へ
前回までのあらすじ
リヨイの村に派遣された将臣は、ダンジョンのモンスターが領主の娘を誘拐したときく。
協力要請を受けて村を訪れた勇者ゆあ一行と言い争いになり、六人の体が下記の様に入れ替わってしまった。
・将臣 と ゆあ
・ヘルポス と 村の双子の兄タツオ
・ラヌクス と 村の双子の弟トラオ
領主によれば、六人を元に戻す方法は、ダンジョンで水脈を発見して水の女神に頼むしかないという。
ダンジョンでの戦闘でラヌクスは毒を受けてしまった。
一行を遠くから見守っていた忍者湯八は、毒消しを水で加工する必要があると言い一行に先行した。
負傷したラヌクスをおぶって湯八の後を追う。
第二階層へ降りた勇者一向。第一階層とは、あたりの雰囲気が少し違った。泥っぽい壁が岩盤になった。進行方向に向かって右側が岩壁になっており、湿気を帯びている。かたや左側は二、三数メートルの崖になっている。
トラオが言った。
「これは地下水脈の跡なのでは?削れ方や谷底の堆積物からすると、最近まで水が流れていたように見える」
タツオが続いた。
「俺もそう思う。この段丘を遡上してみませんか?」
「さすがプロの土工ね。よくてよ」
少しいくと100m四方はあろうかという天井の高い空間に出た。
天井からは、無数の木の根が突き出ていた。少しだけではあるが、隙間から光も差し込んでいた。枯れた川を見ると、その周りには同様に枯れた苔や水辺の雑草が広がっていた。
タツオが一望し、やや驚いているようだ。
「こんなところがあったのか」
トラオは再び周囲を分析している。
「ここの植物もまだ枯れて間もない感じだな。やはり地下にも川が流れていたんだ」
「おい、トラオあれ。なんか標柱があるぞ。これが原因じゃないのか?」
一同が標柱の前で立ち止まる。15cm角で高さ50cm程度の標柱には、この水系の守り神を祀る的な言葉が示されていた。
「やっぱりそうだ。この御神体をそのままにして水を止めてしまったんだ。それで水神の祟りで亀がモンスター化したんだろう」
将臣は感心した様に言う。
「ダンジョン発生の経緯や生の現場。勉強になります」
「普通、我々の工事のときは、こう言うことはしっかりやるはずなんですが」
「神職ぬきに不躾だが、帰りに抜いて帰ろう。それで他にお社を建てて祀るしかないだろう。まずは水脈やお嬢様をさがさないと」
トラオの意見に全員が頷くと、先へ急ぎこの領域を後にするのだった。天井が高い空間を過ぎると、再び崖と壁の道を進んだ。
少しいくと、先の方からもくもくと湯気が流れてきた。違和感を感じつつも進むと、忍者の湯八が火を焚き、お湯を沸かしていた。
「湯八!水がありましたの?」
「あ、お嬢様。チョロチョロではありますが少しは流れていやす。一本道でしたので戻りやせんでした」
「よくてよ。……えっ?」
よく見ると、湯八のすぐ奥に老婆が腰掛けて飲み物を飲んでいる。
ゆあは老婆に訪ねた。
「おばば、そのほう一体どちら様ですの?」
「ん……。ワシかえ?ワシは、ここにあった水脈の守り神じゃ」
「「え」」
双子は驚いた。
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