第127話 王都の年末 その17
前回までのあらすじ
王都で同居生活をすることになった将臣、ファイ、ゆあ、ターニャ。
ゆあの姉で王太子妃のヒルダに関わり、王太子の跡目争いに貢献すると、将臣は騎士に叙され、ターニャは男爵を継ぐことになった。
そして、ターニャは故郷のリヨイで人材を集めて水道工務店を開業した。
そのころ、ゆあはリヨイで成敗した騎士オリワンの配下を名乗る者から、呪いの魔法でタヌキに変えられてしまった。
将臣は帰省先の故郷で、母親と水神から呪いを解くヒントを得る。
王都に戻った将臣は、母親から紹介されたシヴの弟である聖職者エーゲに会い、術者の魂の場所を検知する魔導機器を手に入れた。
そして年末、将臣は年始から二週間、ジミノフへでの研修を命ぜられた。
将臣はその帰りに道、ファイがドワーフくんと会っているのを見つけ注意したが、逆に正拳突きをくらい気絶し、通りかかったターニャに助けられた。
夕食のおり、ファイは格闘技をやめて建築を学びたいというが、将臣は、ファイに格闘技学校は卒業するよう提言した。
話の流れで水神を呼び、ゆあの呪いの解き方のヒントを探ると、どうやらゆあの子宮に呪術が込められているらしい。
もし、パンツのようなものを作るのであれば、ウエストや脚部分のパッキンとしてゴムのような素材が必要になるだろう。将臣はこの世界でゴム素材はまだ見たことがなかった。配管の継ぎ手も、ガスケットを使って漏水を止めている。
ガスケットというのは、銅のような比較的柔らかい金属でできた平たいリングのことだ。配管の継ぎ手に挟んで締め込むと、ガスケットが潰れて継ぎ手の間がうまく埋まる。これでゴムパッキンと同じような役割が得られる。しかし金属なので柔軟性がない。だからパンツを作る上では、脚やウエストに密着させる部分のパッキンには使えない。
本当にこの国にはゴムがないのだろうか?将臣は市場を見て回らねばならいと思った。
「ゆあ、ゴムないかな?」
「ゴム?何ですのそれ?なくちゃダメですの?」
「ゴムを付けないと大変なことになるかもしれない」
「おい、何の話をしておるんじゃ?」
以前リヨイで明らかになったが、水神もまた転生者である。水神は何か想像して恥ずかしくなってしまった様で、顔を赤らめていた。
「え?ゴムがないとパッキンが造れないでしょ?温水パンツに付けないと水がだだ漏れで大変だよ。でもこの国でゴムを使った製品をみたことがないからさ」
「この国でって、お兄ちゃん外国行ったことないよね?」
「あ、ええと、あれ?あ、あああ。本で呼んだんだよ。外国にはゴムっていう伸びたり縮んだりする材料があるって。年が明けて市場が開いたら探しに行こうかな」
「ふうん。変なの……」
将臣は年末年始のゆっくり食事をしている時にでも、転生のことを話してしまおうと思った。
「よし、パンツは材料がないと始まらないから、この話は一旦ここで終わり。水神、ありがとう。ゆっくり風呂に入っていってよ。なんなら年末年始もいっしょにどう?」
「そうじゃのう。じゃあお言葉に甘えてゆっくりさせてもらおうかのう。一人の年越しはしみるからの。将臣、わしと一緒に風呂に入るか?」
「あ、ええと、間に合ってるよ」
「うふふ。水神様、是非、私の部屋に泊まってください」
「やっぱり客人用のベッドくらいあった方がいいのかな?あ、そうだファイ、先日行った祭殿で話した聖職者が母さんの弟だったよ」
ファイは驚いた顔をした。
「え?じゃあ、おじさんなの?」
「そう。全然聞いたことなかったよな。ファイや母さんによく似てたよ。今度会いに行こう。ていうか呼んだらくるかな?ターニャ、来そうだったら呼んでもいい?」
「お義母様の弟さんなのでしょ?もちろんお呼びして」
「ゆあも、会ってるから大丈夫だよね?」
「ええ。よろしくてよ」
「あと、お小夜も寂しそうにしてるから、呼んでもいいかな?みんなで楽しく食べよう」
ターニャは固まった。
「ええ。良いわよ」
ターニャは無表情で声のトーンが低くなった。乾いた目をしている。
※初稿で聖職者の弟が兄と間違っておりましたので、訂正しました。
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