第102話 帰省 その2
将臣は王都でのOJT研修にあたり、妹のファイ、ターニャ、ゆあと同居することになった。
将臣とターニャは、ゆあの姉である王太子妃ヒルダに関わったことで、王太子の跡目争いに貢献した。
その恩賞で将臣は騎士に叙され、ターニャは亡き父の男爵を継ぐことになった。
ターニャは貴族の身で飲食のアルバイトは流石にまずいと思い、故郷のリヨイで人材を集めて水道工務店を開業した。
その数日前、ゆあは以前成敗した騎士オリワンの配下を名乗る者から、呪いの魔法でタヌキに変えられてしまった。
ゆあはタヌキの姿で何とか帰宅し、偶然にも風呂に入ると一時的に元に戻ることがわかった。
本格的な冬が来る前に、将臣は妹と一度帰省することにした。
何故かゆあとターニャも着いてくることになった。
王都北の森を抜けた将臣たちは、山道を歩いていた。
葉が落ちた木々や、枯れ草色の草原を横目に山道を登っていき、村の入り口が見えてくる。
「お兄ちゃん、村が見えたよ!お父さんいるかな?」
「ああ。久しぶりだ。今日も村の入り口に立ってるだろうね」
将臣の父親である朔は、モシタイの村の第一村人である。普段は村の入り口付近に立ち、主に冒険者のレベルやスキルを確認する仕事をしている。
将臣は遠目に人影が動いたのがわかった。
「あ、あれじゃないか!?」
「本当だ!パパ〜!パパ〜!」
ファイは大声で叫び、手を振った。すると、遠くにいる朔もそれに気がついたようで、手を振り返して来た。そして、もどかしいが距離が少しずつ縮まっていく。
声が届きそうな距離になると、朔が話しかけて来た。
「こんにちは。ここはモシタイの村です。冒険者始まりの郷として知られています」
間髪入れず、将臣が突っ込む。
「おい親父、モブってんじゃねえぞ」
将臣の転生前の年齢で考えると、朔とはほとんど同じ年齢である。朔もそのことを知っているため、時折友人にでも突っ込むような口調になってしまうのであった。
「はははは。よく帰って来たな。そして、その年齢で騎士になるとは。大したもんだ。ファイも元気か?」
「うん、元気だよ。ただいま!」
朔は将臣の胸元のバスケットにタヌキがいることに気がついた。
「お!今日はタヌキ汁か?気が効くじゃないか!俺がさばいてやるよ」
タヌキゆあが、つぶらな瞳で将臣を見上げる。
「くぅぅぅん!くぅぅぅん!」
(ま、将臣!食べられてしまいますわ!)
「あいや、これは……」
だが、朔は何かに気がついた。
「あれ?そちらの女性はこの前来た例の……。すると勇者じゃないよな?ステータスが呪いになってる勇者がいるだろ?あ?まさか、そのタヌキか?」
将臣は、朔がターニャについて例の……と言葉を濁らせたことが気になったが、とりあえず話を進めた。
「そうなんだ」
「はははは!タヌキ勇者か!教会じゃ解けないのか?」
(ま、まあっ!お義父様とはいえ、失礼ですわよ!)
「この前あたってみたんだけど、ダメだったよ」
「そうか、とりあえず家にいってシヴが帰ってくるのを待ってろ。回復魔法の手習があるから、何か手がかりだけでもわかるかもしれないぞ」
「そうだね。じゃあ、家に行ってる」
しかし、ターニャが割って入った。
「あ!お義父様!先日は突然押しかけて申し訳ありませんでした!」
将臣は少し背筋に力が入った。
最後までお読みいただきありがとうございます。
もし面白いと思っていただけたら、↓から★★★★★をいただけるとよろこびます。
いいね、ブクマも励みになっています。ありがとうございます。




