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百鬼夜行と踊る神  作者: 蠣崎 湊太
少年篇
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日常は始末書とともに

え〜ついにです!五十話の大台に乗りました!!

飽き性の僕がここまで続けられたのもひとえに皆様のPVのおかげです!どうかこれからも末永く、拙作を読んでいただけると幸いです( ◜ᴗ◝)

「しゅ〜ん〜す〜い〜く〜ん〜???」


 朝、布団から起き上がるとそこには鬼の形相をした貞光さんと、あたふたしている織。それにしょんぼりしている花丸がいた。


「おねぇちゃんがしっかり言っておくから!さだみつはあんまりしゅんすいのこと怒らないで!しゅんすい!めっ!」


 どうやら、昨夜の無断外出がバレたらしい。と言うか、無断外出自体はもうずっとバレていて黙認されていたようだった。しかし、さすがに危険なことに手を出したとなっては貞光さんも黙ってはいられない。


 僕は上座衛門の特徴や強さ、技などを仔細に報告させられ、昼頃まで始末書を書かされ続けた。山のように盛り上がった始末書がさらに増えたと、貞光さんはもう怒ってるやら泣いているやら分からない狂乱の仕方をしていた。


「確かにこの場所での行方不明者の報告は多かったですしね...。深夜にしか出現しないとなれば発見が遅れるのも納得です。で!す!が!問題はそれをかぐや様と同伴でやっていたことです!かぐや様に何かあったら、春水くんは責任取れるんですか!?」


「はい.....。ごめんなさい....。」


 反省として、僕はしばらく外出任務は禁止。今日の日中は始末書と貞光さんの書類処理の手伝いをすることとなった。


「書類............。ハンコ....。書類、ハンコ、書類、ハンコ。ハンコ、領収書。ハンコ、ハンコ。書類、書類、書類。署名、ハンコ、ハンコ、書類。.....?これ、なんの領収書だろ?遊郭?!」


「あ、それは破り捨ててもらって大丈夫です。どうせ綱さんの借金になるだけですから。それでも、ここ二ヶ月は少ない方ですよ。」


 僕は今までのどんな作業よりも両手に力を入れて、領収書をふたつに引き裂いた。その後も淡々と貞光さんの書類を手伝っていると、久しぶりにヤスが僕の所へやってきた。


 ヤスは書類の山にあった領収書達を見てギョッとし、一瞬動きを止めた。何かを思い出したのか、顔を真っ赤にして頭をブンブンと振る。大方、この二ヶ月間綱さんに振り回されていて、その時に遊郭にも連れて行かれたのだろう。


「んっ...。いやいや、違う違う。シュン!久しぶりに決闘しようぜェ!日時は明日の昼!」


 ヤスは煩悩を振り切り、僕に握り拳を突き出した。言葉や立ち振る舞いはいつものヤスだったが、その目にはどこか覚悟や自信みたいなものが宿っている。僕はその燃える目に答えるように拳をぶつけ、答えを返した。


「乗った!久しぶりにやるんだ、全力で行くからね。」


「上等ォ!かかってこいやァ!!」


 お互いに笑みが零れる。当然だ。近い実力同士のぶつかり合い、気心のしれた相手との決闘。これが楽しくなくてどうする。


 ヤスはこの二ヶ月間、一体どんな修行を詰んだんだろう。そして、僕はどれだけ強くなれたのだろう。決闘は昼なので上座衛門の時のようには行かないが、それでも限定的な力を除いた全力をぶつけたい。


 わくわくした心地であれやこれやと考えていると、貞光さんに手が動いていないと注意を受けたのですぐさままた作業に戻る。ついでに作業をヤスにも手伝ってもらい、昼前に業務を終えてしまったので、二人で昼食をとることにした。


「この二ヶ月...ガチで大変だったぜ...。」


「そんなこと言って、遊郭に行ったでしょ。」


「ゴホッ?!そ...それは。あの...えっとだな...。」


 僕がニヤニヤとヤスをからかうと、ヤスは啜っていたうどんを喉に詰まらせて咳き込んだ。僕はすかさず水を差し出し、ヤスが水を勢いよく飲む。なんだか、こんな当たり前の動作が今は嬉しい。


「で?どうだったの?」


「ん?いやぁ...綺麗なねーちゃん達のおっぱいがだな...。」


「そっちじゃないよ!修行の方!!!」


 ヤスは人差し指を口に当て、それは秘密と言わんばかりに口を閉じた。さっきまでは照れてた癖に、ヤスはどうやらこの二ヶ月で随分と神経が図太くなったらしい。


 食事を終えて、僕はヤスと解散し自室に戻った。すると、自室には両手を組んで頬を膨らませている織がおり、僕は織にみっちり三時間お説教を受けた。


 内容を要約すると、今度から危ないことをする時はおねぇちゃんも連れていきなさい!との事だった。僕はまだいまいち織の強さが分かっていないのだが、まあ念の為これからは織に報告くらいしておこうと心に誓う。


「花丸も寂しいって!だから今日は一緒に寝ること!分かった?」


「ごめんね花丸...。じゃあ今日は一緒に寝ようか。」


 織は満足そうな顔で嫌がる花丸を抱き抱え、布団の中に潜り込んだ。僕はその横にすっと入り込み、狭くなった布団をしみじみと感じた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「しゅんすい!朝だよ!あーさ!おきて!!」


 ぺちぺちと僕の頬が軽く叩かれ、僕は目を覚ました。

 時刻は朝五時。織は見た目の割に早起きなので、それに合わせて僕も早起きになってしまっている。眠い目を擦り顔を洗って、身支度を軽く済ませて花丸の散歩に出かける。


(昼は決闘だし...体、暖めておかなきゃな。)


 そう思って、いつもより長い道のりの散歩へ出かける。町を出て開けた原っぱに到着すると、何やら人影があった。ここら辺は朝方に全く人がいないので、珍しさに思わず目を凝らしてみると、そこに居たのは巨大な木刀で打ち合いをしているヤスと綱さんだった。


「左がまだ甘ぇ。つったら今度は足元。ほら左!」


「押忍ッ!」


 僕はなんだか恥ずかしくなった。ヤスはこんな早朝から、汗をだくだく流しながら修行をしていたのだ。対して僕は散歩。体力作りのために走り込みをしている。と言えば聞こえはいいが、そんなのはヤスの修行の足元にさえ及ばない。僕はすぐに花丸を連れてその場を後にして、屋敷へ戻って腕立て伏せをした。


「やっぱりっ!ヤスは凄いっ...!だからっ!僕もっ!」


 腕立てを繰り返しながら、息を吐いて言葉を紡ぐ。すると途中で僕の背中に織が乗って来たので、僕はさらに腕立てのスピードを上げる。


「がんばれっ!しゅんすいがんばれ〜!」


「わん!わんわん!」


 最終的に花丸までもが僕の背に乗り、記録が三百を迎えたところで僕は二つの重みに潰された。そうして休憩を挟んで、ようやく屋敷の人達が起きてくる時間になった。流した汗を拭き、朝ごはんを食べるために食堂へと向かう。


 食堂にはヤスから頼光さんまでのかぐや以外全員が集結しており、朝なのにガヤガヤと賑わっていた。


「春水!綱から聞いたぞ!昼に保昌と決闘するんだって?」


「ヤスが勝つ方に俺は賭けるね。貞光お前は?」


「じゃあ私は春水くんで。後でやっぱ無しとか言わないでくださいよ。あ、季竹くんお醤油お願いしてもいいですか。」


「....はい。二人とも、怪我には気をつけてね。」


「いやはや、決闘とは若い!拙僧も若き頃にはよくやったものですなぁ...。」


「季武!こっちにも塩!」


 頼光さんだけが黙々と朝ごはんを口に運び続ける中、事はどんどん大きくなっていき、最終的には全員で僕達の決闘を見守るということになった。


 朝ごはんを終えて、僕は再び自室へと踵を返した。決闘用の木刀を取り出し、庭に出て手に馴染ませるために少しの素振りを始める。


「試してみるか....。」


 木刀を構え、新技の調整を試みる。新技の付け焼き刃とは言え、これも一つの手であることに変わりは無い。僕はそのまま昼までの時間を庭で過ごし、時間になったので決闘のために屋外の稽古場まで足を運ぶ。


 稽古場にはもう既に朝にいた全員が集結しており、今か今かと決闘が始まる瞬間を待ちわびていた。


「始めようぜシュン!早く来いよ!」

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