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百鬼夜行と踊る神  作者: 蠣崎 湊太
少年篇
48/235

からくり歌舞伎の大立廻り(ト書)

解説回なのでストーリーとは一切関係がないです....。もし良かったら読み飛ばさずに読んで欲しいです...。


あ、最近モチベが枯渇気味なのでいいねかコメントあると助かります!!

 からくり歌舞伎の上座衛門の術式は『歌舞伎狂言組十八番(かぶききょうげんくみじゅうはちばん)』です。


 能力効果は、十八ある演目のうち一つを再現すること。一演目を再現した後には三十秒のクールタイムが発生、そしてこれを八回繰り返すと、強制的に『外郎売(ういろううり)』が発動します。十八演目は基本的に重ねがけが不可能となっており、次の技を使用するためには前の技を解除する必要があります。


【血界侵蝕】『真打幕上(しんうちまくあげ)』は、前述した『歌舞伎狂言組十八番(かぶききょうげんくみじゅうはちばん)』のクールタイムを省略。技の連続発動を可能とさせる血界を空間に侵蝕させます。


 下記はその十八の技の詳細です。


 ・(しばらく)

 あらゆる攻撃に対するオート回避。回避行動は相手のアクションに合わせて最適な挙動が選択されます。持続時間は十五秒。


 ・七つ面

 (じょう)塩吹(しおふき)般若(はんにゃ)(うば)武悪(ぶあく)(おきな)鬼神(きしん)の七つの面を切り替えて使用が可能です。それぞれに固有の能力があり、どれか一つでも破壊される。もしくは一定以上のダメージが本体に与えられることで技の効果が切れます。


 (じょう)

 この面をつけている間、敵対相手の移動速度及び攻撃力がダウン。この面の使用者である上座衛門本人は、あまりこの面を使うことを好んでいない。


 塩吹(しおふき)

 この面をつけている間、相手の知能がダウン。やはりこれも、上座衛門本人が使用を好んでいない。


 般若(はんにゃ)

 この面をつけている間、目線を合わせ続けることでスタン値が溜まる。約五秒ほど目線が合えば、相手は一瞬全ての動きを停止する。後述する(うわなり)と見た目が似ているため、上座衛門本人は使いづらく思っている。


 (うば)

 この面をつけている間、相手の体力を吸収することが出来る。と言っても、威力はそこまで高くなく、せいぜい倦怠感を覚えさせる程度だ。ただこれも、上座衛門はあまり使用しない。


 武悪(ぶあく)

 この面をつけている間、面が自動で動いて相手の武器を補足。そのまま獲物を強奪することが出来る。だがやはり、これも上座衛門は好きでは無いようだ。


 (おきな)

 この面をつけている間、相手の技量をダウン。凄まじく強力な力を秘めているのだが、はっきり言って上座衛門はこの面をとても嫌っている。


 鬼神(きしん)

 この面をつけている間、腕が二本増える。単純かつ他にこれといって能力は無いのだが、上座衛門は七つ面の中で唯一この面だけは気に入っている。上座衛門は滅多に七つ面を使用しないが、もし使うとしたらまっさきに使われるのは恐らくこれだろう。


 ・象引(ぞうひき)

 素手状態の時、膂力が超向上する。倍率は三倍。普段の上座衛門は約一トンが持ち上げの最大重量だが、この技の発動時には三トンもの重量を持ち上げることが可能となる。


 ・蛇柳(じゃやなぎ)

 自身の攻撃の軌道を蛇のように自由自在に曲げることが出来る。例えば、制御の難しい全力の縦振りを自由に動かし、精密な動作をさせるということが可能だ。


 ・鳴神(なるかみ)

 上空に雷雲を作り出し、最大五つの雷を地上へ落とすことが出来る。落とされた雷は地面に落下する直前に軌道をターゲットへと変更し、ある程度のホーミング性能を得る。最大射程は五十メートル。


 ・矢の根

 切れ味の鋭い矢を作成し、飛ばすことが出来る。鳴神(なるかみ)とは異なり最大数は三十とやや多いが、その代わりにホーミング性能がない。


 ・助六所以江戸桜(すけろくゆえんえどざくら)

 傘を開きその内部から桜が散っている間、上座衛門を中心に半径三メートルの不可視結界を作り出す。この結界内で上座衛門に攻撃を加えようとアクションを起こした際、そのアクションは未然に阻害される。


 ・関羽(かんう)

 馬と青龍刀を召喚し、それらを自在に操ることが出来る。馬は通常の馬と何ら変わらず、また特に青龍刀にも能力がある訳では無い。


 ・押戻(おしもどし)

 自分の足元から竹を出現させ、鋭い先端で相手を突き刺すことが出来る。出現した竹は技を解くと自然に消滅し、後にオブジェクトとして残留することは無い。


 ・(うわなり)

 般若の面を出現させることが出来る。そしてこの面をつけている間、自身の全能力が向上する。さらに、この技は発動してから外郎売(ういろううり)まで効果が持続する。非常に使い勝手がいいが、七つ面の般若(はんにゃ)と見た目が似ているために取り違えやすく、あまり使われない。


 ・鎌髭(かまひげ)

 相手の首元に鎌を出現させる。オート操作で対象の首を狙うため、精度はそこまで高くない。しかし、首筋スレスレに出現するので、基本的に回避は不可能。ただ、一度外れればそこで技は終了する。


 ・外郎売(ういろううり)

 八つ目の技が終了した時点で必ず九つ目の技として発生する。この技の使用後は上座衛門は休眠状態となり、本体の損壊具合によって休眠時間が異なる。休眠状態の拘束時間は最小で一分、最大で五分だ。


 ・不動(ふどう)

 自身の背に法輪が浮かび、不動明王の炎を借り受けることが出来る。本人が解除するか法輪が破壊された時点で技は終了し、燃え移った炎も消失する。


 ・毛抜(けぬき)

 体毛を硬質化させ、自由自在に操れるようになる。しかしそこまで硬度は高くないため、あまり使いやすい技とは言えない。


 ・不破(ふわ)

 上座衛門の使う傘と相手の武器がぶつかり合う際に、威力や膂力の優劣に関わらず相手をノックバックさせる。ノックバック距離は二メートル程。


 ・勧進帳(かんじんちょう)

 黄金に輝く杖を召喚する。この杖は金剛よりも硬く、また絶対に破壊されない。ただこの杖を使うためには傘を一度しまう必要があり、傘との併用はできない。


 ・景清(かげきよ)

 腹の中から負のエネルギーを絞り出し、それを顕在化させる。この技の発動中は全身がどす黒く染まり、判断力を鈍らせる代わりにそれに見合った強化がかかる。その強化倍率が高ければ高いほど体は崩壊するため、短期決戦にしか使えない。


 ・解脱(げだつ)

 前述した景清(かげきよ)を解除する技。景清(かげきよ)の崩壊を食い止める以外にも、自分に向けられた異常状態を回復する能力も着いている。


千龝樂(せんしゅうらく)

 これは外郎売(ういろううり)の直後にのみ使える上座衛門の中でも最大奥義の大技です。この技を使用したが最後、上座衛門の崩壊は確実に決定します。能力としては単純な力の放出。それに加えて、力の継承です。これを回避せず、真っ向から受け止めた相手には上座衛門崩壊後にその残滓が引き継がれ、『歌舞伎狂言組十八番(かぶききょうげんくみじゅうはちばん)』のうち本人に適切なもののどれか一つが使用可能となります。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 それは、遠い昔の記憶。下座衛門(しもざえもん)というしがない歌舞伎役者がいた。男は妻を持ち、子供は無いが貧しくとも幸せな日々を送っていた。


 男には夢があった。それは自分の歌舞伎で世界を魅了したいという夢で、男の妻は夢を追う彼を大層応援した。


 しかし、男の歌舞伎は大成しなかった。機械的なまでに完璧に演目を進める彼の演技は、美しくはあるが温かみが感じられないとのことで、大衆は見向きもしなかった。


 男は毎日、必死で演技の修練に励んだ。雨の日も、雪の日も、妻の命日でさえ、彼は修練を欠かすことは無かった。


 今際の際、男の妻は最期まで夫の歌舞伎を信じ抜いた。貧しく、子も成せず、甲斐性なしで傍から見れば決していいとは言えない夫だったが、それでも彼女は幸せだった。


 妻が亡くなり、男は歌舞伎以外に時間を割かなくなった。睡眠、食事、排泄。これら全てを投げ捨て、しまいには人間であることさえ捨てた。


 残ったものは、たった一つの夢と未練。


 全世界を歌舞伎で魅了し、そしてその一等席に亡き妻を座らせてやりたい。


 そんな想いを叶えるために、男は日夜修練に励む。死合いでさえも、彼にとっては修練に過ぎない。武士を切り捨て、侍を切り捨て。強き血を吸う度、彼は己の技が磨かれると信じている。


 そんなことを、もう何年続けただろう。残った想いでさえ、淡く薄れてしまうような時間を過ごした。それでも、彼を立ち上がらせるのは、一体何なのだろうか。


 夢か、それとも未練か。その答えは、死に際にしか分からない。

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