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百鬼夜行と踊る神  作者: 蠣崎 湊太
倭国大乱・越後編
200/235

造花の心臓

ついに200話突破!

皆さんのブクマと星が日々のモチベになってます!

ぜひ、これからも拙作をお楽しみください!

 

 無機質な少女の瞳が二つの影を捉え、自らへと凄まじい速度で迫りくる優晏に対して、後方に飛びながら距離を取る。


「貴女は油断できる相手じゃなさそう。だから、最初から本気で行く。『造花一式(ぞうかいちしき)向日葵(ひまわり)』。」


 機械少女の背後に備えられていた翼が背中に格納され、今度は彼女が羽織っていた黄色のカーディガンが変形。


 腕部分などその他機械的なフォルムが露出し、ユキナの手には向日葵の意匠がデザインされたガトリング砲が形成される。


 そうして適切な距離を優晏から取りつつ、ユキナはガトリング砲を作動させて、弾丸となっている向日葵の種を凄まじい速度で優晏へと叩き込む。


(受け切れる....?いや、逆に押し切られるわね。)


「ハスミっ!」


「はいはい!もちろん分かってるっすよ!」


 後方に控えていたハスミが術式を発動させ、優晏の足元にワープゲートを生成して出口をユキナの頭上に設定。弾丸の雨を回避しながら、一転攻勢反撃に移る。


 そうして優晏はユキナの頭上にて体勢を捻り、かかと落としを繰り出した。しかし、相手とてそれなりの手練。


 重量のあるガトリング砲を難なく振り上げ、その重厚な銃身で優晏の脚撃をガード。その上力に任せ、そのまま銃口を優晏への追随へと差し向けた。


 とは言ったものの、やはり近距離戦では取り回しの悪い武器。優晏は銃口の照準が自分に合わないよう素早く動き狙いを定めさせず、息着く暇も与えぬままにユキナの背後へ回り込む。


 それから確実に相手を戦闘不能まで追い詰めるために、優晏は術式を発動。ユキナの背中に指を触れさせ、熱を奪って凍結状態へと持ち込もうとした。


 だが、その瞬間にユキナは格納していた翼を再度勢い良く解放。優晏の不意を突き、狙いを自身から逸らす。


 それでもやはり、優晏は最低限ガトリング砲の銃身を完全に凍結させて機能を停止させた。その後、体勢を崩して屋根上から落下する優晏をハスミが術式で回収。


 盤面を振り出しに戻した上で、確実に相手の手札を一つ潰した。その結果を受けて、ユキナは彼我の戦力差を残酷なまでに痛感。


 彼女はたった数度の打ち合いだけで、もはや自分に勝利の目が一つも無いことを悟る。凍りついたガトリング砲を元のカーディガンに戻し、そこらに放り捨ててから、機械少女は体勢を低く構えた。


(勝利は無い。ただ、敗北も無い。私は、マスターの意思を遂行するだけだ。)


 どこまでも機械的な眼光は、その奥に自身の破滅を見た。狙うは相打ち、自爆覚悟の巻き添え特攻。自分の命一つで主人の意に沿えるならと、少女は冷ややかに受けた生を投げ捨てる覚悟を決める。


「ただその前に、弱そうな方から叩く。『造花二式(ぞうかにしき)鈴蘭(すずらん)』。」


 彼女を形作るシルエットがみるみるうちに変形し、スカートとして鈴蘭のような形をした鋼鉄の防護服が編み出された。


 それ以外にも鉄壁を誇る白亜の銀が体全体に張り巡らされ、それらを纏めあげるハーネスのベルトまでもが黒鉄(くろがね)製。


 最後は頭に鈴蘭のカチューシャを作れば完成。あっという間に、彼女の全身をメイド服が包み込む。


 硬度を維持し防御面をガチガチに固めつつ、それでいて一見服の様相は普通のメイド服と何ら変わらずヒラヒラと靡く。


 柔らかそうでいてその実、何者の攻撃も受け付けない二律背反。ユキナはその鋼鉄のスカートを風に揺らしながら、優晏の横をするりと抜けてハスミへと駆ける。


「所詮は術式頼りのサポート役、まずは一人目。」


 ユキナの振り上げられた拳が一直線にハスミの顔面へと向かい、彼女の頭蓋骨までもを砕かんと機械仕掛けの指が握られた。


 それに対し、ハスミは悪魔的なまでにニヤリと口角を上げる。それから自身へ向かってくる拳をガシッと掴み、力任せに相手の腕を引きちぎる。


「私、弱そうに見えたっすか?残念!ハズレっす!」


「なっ?!」


 ここで初めて、ユキナの鉄面皮が驚愕の色に彩られた。ブチブチと音を立てて引きちぎられた腕は、内部の電線や部品が露出したままハスミの手によって握り潰される。


 右腕を持っていかれて焦ったユキナは、とにかく距離を離そうと後方へ避難した。しかし、後方より迫るのは凍てつくような白銀。


 後ろへ回避しようと飛び退いた途端、ユキナは優晏からの強襲を受け、背中に全力の蹴りをお見舞される。


「っ.....!」


 片腕を失い体勢を立て直すのにも困難な状況に陥った上で、完全なる背後からの奇襲。ただし、防御を固めていたお陰で優晏の奇襲はそこまでのダメージにはならず、ユキナは強引に翼を展開して滞空。


 屋根上にて合流した二人とは距離を取り、自分の認識が甘かったという事を強制的に理解させられた。


「確かに、私は優晏みたいに術式の精密さもテクニックも無いし、花丸みたいにスピードも持続力も無いっす。ついでに言えば、かぐやみたいな殲滅力も無いっすね。でも、パワーだけなら一番なんすよ?」


 嗜虐的な笑みを全面に貼り付け、ニタニタとハスミは空に浮かぶユキナを見つめた。ユキナはその自分を見つめる瞳に、寸分の恐怖を覚える。


(甘かった....!私が真に警戒するべきは...銀髪の方じゃなかった....!!)


 術式を用いない素の攻撃では、優晏は現時点のユキナにダメージを与えることは出来ない。しかし、ハスミであればユキナの防御を貫通し内部を砕くことさえ可能。


 攻撃が当たりにくいという点に目を瞑れば、間違いなくハスミもまた春水一行の中では上澄みの部類。


「...その顔、すっごく悪い人みたいよハスミ。なんて言うか....悪人顔って感じ?」


「まあ確かに、性癖もS寄りではあるっすからね〜。」


 ハスミはペロリと舌なめずりをして、恍惚とした表情を浮かべながら術式を発動。自分の真横にゲートを設置し、その中に手を突っ込んで遠隔からユキナを狙う。


「さっきは油断しただけ。もう、貴女の攻撃は当たらない。」


 ユキナはその発言通り、ハスミが次々と生み出すワープゲートから飛行で距離を取って、彼女の攻撃を避け続ける。


 そんなユキナが回避する隙間を縫って、優晏は宙に氷の板を生成し、それを踏み砕くことで跳躍。擬似的な空中戦を可能とした上でユキナに拳を振り向けた。


 しかし、ユキナはその拳を難なく回避し、自身の装甲をほんの少し薄くしてその分を武器生成に回す。


 生み出したのは鈴蘭の花弁を模した日傘。もちろん鋼鉄と同様の硬さを持っているそれは、優晏の眼前で開かれ視界を遮る。


「貴女の強みは術式。だけど、タネが分かれば簡単。その術式、きちんと対象を目視しなきゃ使えないんでしょ。」


 日傘の中にすっぽりと自分の姿を覆い隠し、そのままユキナは優晏に向かって突進。優晏はその突進を回避しながら、頭の中で情報を整理。


(....いつバレた?翼を出されたせいで武器しか凍らせられなかった...あの時か。)


 最初に術式を発動した際、優晏は武器ではなくユキナ本人を狙ったはずだった。しかし、翼を展開されユキナの姿が覆い隠された事で目的は叶わず、やむ無く優晏はガトリング砲を凍結する羽目となった。


(あの一瞬で気づいた?いいや、多分確証の無い賭けだったんでしょうね。でも、これで確実にバレた。)


 戦闘場所は屋根の上。それも、人々が暮らす喧騒の真っ只中。優晏は人的被害を考慮し、術式のスケールを最小限に抑えながら戦っている。


 血界も壊錠も、あまつさえ熱量を解放し炎を使うことさえ危ぶまれる状況。優晏は固唾を呑んで、自身の置かれている立場を悟った。


(使えるのは炎以外で最低限の出力...。今までで一番、やりにくい....!)

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