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百鬼夜行と踊る神  作者: 蠣崎 湊太
倭国大乱・蝦夷編
179/235

石版に刻まれた十の言葉

聖女ユダの能力解説回です!

これにて蝦夷編も終了!次回からは越後編を投稿致します!

 

 ・『祈髑髏(いのりどくろ)


 聖女ユダが狐の呪いによって変貌し、莫大なエネルギー源となる遺体を取り込んだ故に通常の呪いの影響よりも色濃く強化された姿。


 背後には神々しい舵輪を浮かべ、黒衣の裾からは右五本、左五本の計十本の腕を持つ。それらの腕一つ一つには独立した能力が備えられており、特定のキーワードを発することで発動が可能。


 ・שִׁחְרוּר(シフルール)

 この腕が司る戒めは、『解放』。偉大なる父の威光を拝領し、その一部を借り受けたもの。


 光の筋を空から無数に降らせることができ、これに触れたものは何人であろうと塩の柱と化す。


 この光はあらゆる防御を貫通し、掠っただけでも全てを塩にせんとして伝播する。ただし、この影響は術者本人にも例外なく作用する。


 ・エムーナー

 この腕が司る戒めは、『信仰』。あらゆる神を否定し、偉大なる父の唯一性を示すもの。


 肉包丁を出現させることが可能。そうしてこの肉包丁が出現している間、神の概念、または神の名前を帯びているものの術式を封じ込める。


 出現していた肉包丁が消失した時点でこの封印は解除され、元通りに術式が使用可能となる。


 ・תִּרְצָח(ローティル) לֹא(ツァフ)

 この腕が司る戒めは、『不殺』。いかなる殺しであろうとも罰し、決して血に濡れた手のひらを許さない父の怒り。


 今まで殺人を犯した相手に対して、罪悪感の分だけ重みを追加することが出来る。効果対象の殺害人数が多ければ多いほど効果は倍増し、掛かる負荷も乗算されていく。


 ただ、この負荷というのは物理的な影響をもたらすわけでは無く、あくまで精神的に相手へと重く感じさせるだけに過ぎない。そのため、心の持ちようによっては突破され得る。


 ・ תִּגְנֹב(ヌゴ) לֹא(ヴァン)

 この腕が司る戒めは、『不奪』。盗人を生み出さぬため、どんなことがあろうと自らのものを奪われないようにする完全な光。


 この効果が発動している間、術者本人は他者からのあらゆる攻撃を無効化し、何であろうと奪われることは無い。


 されど、自らの攻撃であれば容易にダメージを受ける。加えて効果時間がそれほど長くないため、あまり無敵時間を生み出すことはできない。


 ・ רְצוֹן(エイン) אַיִן(レツォン)

 この腕が司る戒めは、『無欲』。どれだけ煌びやかな宝石であったとしても、決して目を眩ませてはならないという父の教え。


 天使を象ったダイヤモンドの塊を召喚できる。全身がダイヤモンドで構成されているため、斬撃に対して強い耐性を持つが、その代わり打撃には脆い。


 更に、このダイヤモンドに一瞬でも目が眩めば、天使は形を変えてあらゆる攻撃に対し耐性を持つ大天使へと変成する。


 ・טָהֳרָה(ツァハラ)

 この腕が司る戒めは、『純潔』。いつ何時であろうと、清らかに在らんとする偉大なる父のお言葉。


 鉄の処女として名高い拷問器具である、アイアン・メイデンを生成可能。この内部に取り込まれ、微かにでも針に触れた瞬間、強制的に死に至る。


 鉄の処女自身が不浄と見なしたものを吸引する性質があり、例えば影であったり、非処女であったりなど、その幅は限りなく広い。


 ・פַּחַד(パハド)

 この腕が司る戒めは、『畏敬』。実の親を慕い敬うように、天上の父に畏敬の念を抱けという戒律。


 巨大な十字架を生成することが出来る。この十字架は相手がこの十字架に対して敬意を持たぬものであればあるほど威力が上がる。


 その効果は最大で即死効果を孕み、仮に相手が敬虔な敵対教徒であったとすれば、少し触れただけで即死する程の威力を持つ。


 ・שתיקה(シュティカ)

 この腕が司る戒めは、『沈黙』。それは不条理であり、慈悲に満ちているはずの父の傍観。ともすれば神の不在証明と取られかねない、神の沈黙。


 この能力の発動中、あらゆる奇跡は否定され、あらゆる癒しは無為と化す。罰は罰のまま、罪は罪のまま放り出される。


 極めて呪いに近い効力を持つものの、解呪は不可能。この効果は腕が存在している間絶えず続き、発動したが最後、術者本人でさえ解除は不可能。


 ・אֱמֶת(エメト)

 この腕が司る戒めは、『真実』。偽らず、謀らず、ただ正直であれという父の祈り。人間には、あまりに重すぎる願い。


 この能力を発動した瞬間、術者本人を含め周囲五百メートル範囲内の相手は嘘が付けなくなる。


 それどころか、自分を偽ることさえ不可能となり、思うがままの行動以外取れなくなってしまう。故に、殆ど使用することができない能力。


 ・מְנוֹחָה(メノーハ)

 この腕が司る戒めは、『安息』。たとえ天の父であろうと、休息は必要であるという嘆息。神でさえ休みが必要であるという事実に、人々は神の不完全さを見た。


 術者本人の術式の影響を受けず、血界の生成が可能。血界の内部では術者が最も安息できる風景が生み出され、本人は休息以外の行動を取れない。


 つまり、この血界が発動した瞬間に相手への加害行為が禁止され、一方的な虐殺以外を認めない空間が生み出される。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 祈りなんて、初めからなかった。ただの恋の言い訳、貴方の傍に居れるなら何だって良かったの。神様なんて信じたこと無かったし、信じられもしなかった。


 でも、貴方があんなにも熱心に神様のことを語るものですから。私、本当に神様っているんじゃないかって思えたの。


 でも、神様がいるとしたら。私はなんで、三千年も彷徨ったのでしょう。苦しいだけの時間を、罪を重ねるだけの時間を。


 天上の父は、どうして私に与えたのでしょうか。そこに、神様の愛は本当にあったのでしょうか。


 足音が聞こえる。死の足音、あたたかい光の靴音。コツン、コツン。ゆっくり近づいてくるその音は、なんだかとても物悲しくて。


 私はその懐かしさに、泣きそうになってしまいました。陽だまりの最中、猫がゴロゴロと鳴くような、春の日差しに包まれて。


 私は、どうしようもない乙女です。神様も、救済も、全部全部言い訳にして、ただ貴方に恋をした。


 だから、そう。こんな結末、きっと誰も許してくれないでしょう。神様だって、きっと私を罰するでしょう。


 なのに、どうして。


「ユダ、君を許すよ。」


 一言だけ残して、光は消える。罪人は、暗い地獄へ行かねばならない。貴方は光る水面の、淡い輝きの如く失せ、痛みを伴う離別は終わった。


 ただ一言の救済。私を救ったのは、神様でも何でもないただの貴方。三千年の旅路の終わりに、好きな人からの一言の労い。


 それだけで、私は報われたのです。これからは、地獄を行きます。沢山の償いをしましょう。


 それこそ、三千年なんて遠くに見えるほどの時間を。私は、業火の中で過ごすのです。


 そうして思い出したのは、本当に何でもない記憶。遠い昔の春のこと、エクエスを連れてピクニックに行ったことがあったっけ。


 草の匂いが鼻を抜ける。まだ少しだけ冷たい空気と、ほんの少し近くなったような気がした青い空。


 エクエスが作ってくれた不揃いのサンドイッチを持って、私は苦手なピクルスを抜き取って彼に食べてもらった。


 もうずっと忘れてしまった、砂粒のような思い出たち。そんな小さな欠片だけを頼りに、私は炎を進んでいく。


 いつか、神様がいたのなら。私に一度だけ、奇跡をくれませんか。彼と同じ時に生まれ、何でもない時間を過ごす。


 そんな、淡い奇跡を。どうか、お願いします。祈り。私は心の底から、神様へお祈りした。その祈りが通じていても、いなくても。


 私は進み続ける。地獄の中を、痛みと苦しみを噛み締めて。

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