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百鬼夜行と踊る神  作者: 蠣崎 湊太
倭国大乱・蝦夷編
149/235

融和都市、札幌

 

「痛ったたた....。それで、牡丹はどうなったの?」


「...花丸ちゃんと相打ちって感じかなぁ。片目のダメージが思ったよりあったのか、すぐに帰ってまったんよぉ。」


 全身を酷く打った優晏と、遠くまで吹き飛ばされた衝撃でダメージを負った花丸に刑部が治癒をかけ続ける。


 しばらく治癒をかけ続けてようやく歩けるようになったところで、刑部たち三人はかぐやたちが逃げた方向へと歩を進めた。


「強かった....。途轍もなく、牡丹様は強かった。」


 花丸は痛む腕を抱えながら、先刻の戦いを思い浮かべる。自分を含め、この三人は春水と行動を共にしているメンバーの中でも最上位の実力を持っていると、花丸自身も自負している。


(それでも相打ち...いや、逃がしてもらったと言うべきか....。実質的に、こちらの敗北だ....。)


 俯きながら暗い表情を浮かべる花丸に、刑部がペシっと額目掛けてデコピンを繰り出す。そうして急な襲撃に花丸は顔を上げて、鳩が豆鉄砲喰らったような顔で刑部を見た。


「そないな顔せんといてよぉ。頑張った花丸ちゃんが沈んでたら、サポートのうちの立場無くなってまうからなぁ。ようやったよ、お疲れさん。」


 刑部は花丸を抱きしめて、頭をポンポンと撫でた。それを見た優晏は、若干むくれてぷいっと明後日の方向を眺める。


「もう〜甘えんぼさんは卒業したんや無かったん?また一緒のお布団で寝てあげなダメ?」


「ちょ?!五年前の話でしょ!!それと刑部っ!!!それ言わないでって言ったじゃん!!」


 顔を真っ赤にして刑部に向かいなおった優晏が、凄まじい早口で刑部を糾弾する。それを刑部はのらりくらりと躱して、スタスタと先を歩いていった。


 そんな風にしばらく歩いていると、やや遠くで何やら騒がしいことが起きているようだと花丸が気づく。


「戦闘の音ではありませんが、何やら騒がしい様子です。警戒はしておいた方がいいかと。」


「最悪、また連戦ね…。牡丹クラスの相手が来たら、もうしんどいなんてもんじゃないわよ...!」


 そう言いつつ、優晏は氷の刀を出現させてまっさきに声の騒がしい方へと駆け出して行った。そこで優晏は、とんでもないものを目にする。


「ゆ、優晏さん〜!!!!待ってたんですよ〜!!!無事で...無事でよかった.....。」


 かぐやは優晏を見るなり、涙目で優晏の側へ走る。優晏は駆け寄ってきたかぐやを抱きとめて落ち着かせつつ、現状についての問いを投げかけた。


「そっちも、大丈夫そうで良かったわ。ところでなんだけど....あの.....ペンギンたちは何なの?」


 優晏の視線の先には、浅葱色の羽織を羽織ったペンギンが五羽、刀を携えて織や絹たちと仲良く談笑をしている。


「あの方たちは...えーっと....。蝦夷の皇帝さん?って方にお仕えしている武士らしくって...。」


 ペンギンたちは優晏たちの接近に気づくなり、早速てちてちとゆっくり歩いて軽くお辞儀をした。


「聞いてたぜ。アンタが優晏ってヤツか!あの『象』相手に三人で立ち回るたァ、スカッとするヤツじゃねえかよ!!」


「こら歳三(としぞう)、いきなりレディーに向かってそんな失礼な口を聞くもんでない!バカタレがっ!!」


 わちゃわちゃとペンギンたちがもみくちゃになりながら喧嘩を始め、一気に優晏たちは蚊帳の外へと追いやられる。


 そんな折り、ようやく刑部と花丸もかぐや一行と合流して、今の訳が分からない状況を目にした。


「「......なにこれ......。」」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 瞳を開けて辺りを見回すと、そこには鎌倉に負けるとも劣らない、立派な大都市がそびえ立っていた。


 大都市と言っても、そこまで煌びやかなものではない。ただ単純に、規模が大きい村と表現した方が適切だろうか。


 ただ、一番僕が驚いたのは都市の大きさではなく多様性。考えてもみなかった、もののけと人が共存する町が、そこにはあった。


 往来にはアイヌの人が市場を開いていたり、もののけが商品を物々交換で買ったりしている。


 はっきり言って、今の倭国からしたら考えられない状況だ。もののけは言葉を喋れるか喋れないかの可否に関わらず、害獣として駆除されるもの。


 倭国大乱でさらもののけの危険性が示唆された以上、もはや対立の道以外有り得ないものだと思っていた。


 だが、ここに例外が存在したのだ。人ともののけが慈しみ合い、共に生活を送る世界が。


「....すごいね。こんなに人ともののけが、仲良く暮らせるなんて....。」


「...?何言ってるんすか?別に、当たり前のことっすよね?」


 僕は感動で泣きたくなった。本当に胸から熱い何かがせり上がって、何とか泣くのをこらえることに必死だった。


 ここでなら、みんなも幸せに暮らせる。誰にも差別されない、誰にも迫害されない。そんな生活が、夢に描いた生活が送れる。


「は〜っ!!よし!ハスミ!!早く行こう!!魔術師を探しに!!」


 僕は顔をパチンと叩いて気合を入れ、にっこり笑って駆け出した。ハスミの手を取って人混みを掻き分け、どんどん進んでいく。


「ちょっ?!急にどうしたんすか?!魔術師の居場所がそっちかも分かんないのに〜!!」


 ハスミの一言で僕ははっと我に返って、ピタッと足を止めた。確かに、言われた通り札幌に来たはいいけど、魔術師の居場所も特徴も僕らは全然知らない。


 強いて言うなら、お爺さんであるらしいということぐらいだろうか。とにかく、全く情報がないのだ。


 気持ちが昂って走り出してしまったことに僕は少しの恥ずかしさを覚えながら、耳を多少赤くして近くの市場に寄る。


「ちょっと兄ちゃん!いいべっぴんさん連れてんねぇ!ラッコ肉だったら安くしとくよ!!」


「ラッコの肉....?食べれるのそれ...?」


 ハスミはなんだか頬を赤くしながら、モジモジとして急に黙りこくった。なんだかよく分からないが、僕はひとまず適当に魚を買うことにする。


 それから魚屋のおばちゃんに手持ちの毛皮なり銀なりを魚と交換して、この街にいるであろう魔術師について聞いてみた。


「魔術師....あ〜!あのお爺さんね、はいはい。向こうの町外れに骨董屋さんがあるのよ、そこの店主さんやってるわ。失せ物探しが得意で、私もよくお世話になっているのよねぇ〜。」


 僕の想定とは打って変わって、まさかの一発目で情報を手に入れることが出来た。ただ一発目で情報を得られたということは、結構有名な人なのかもしれない。


「骨董屋...骨董屋....。十分ぐらい歩けば着きそうっすね、意外と呆気なかったっす。」


「僕的には、サクサク進めてラッキーって感じかな〜。って言うか、ハスミは探したい人とか居ないの?ここまで着いてきて貰ったし、ついでにさ。」


 ハスミは一瞬だけ悩んだような顔をして、パッとまたニヤニヤ顔を浮かび上がらせる。それからくるりと僕の目の前に両手を広げて、イタズラっぽく笑った。


「いないっすよ!それに、全然春水が気にすることないっす〜!でもお礼がしたいって言うんなら、やっぱり体で....。冗談っす!もうこのくだり二回目じゃないっすか!!いい加減乗って欲しいっすよ〜!!」


 ハイハイと僕はハスミの冗談を軽く流して、街の外れへとようやく到着した。大都市だった先程の町並みとは打って変わって、閑散とした畑や山が続いている。


 都会だったところから少し外れれば、もうそこは田舎。なんて、どこも変わらない法則だとくだらないことを考えながら、僕は骨董屋の前まで歩いた。

ラッコの肉って発情効果があるらしいですね。厳密には煮る臭いだとか何とか...。ゴー●デンカムイでもそういう話ありましたよね。

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