巡礼の始まり
花が咲いている。ケラケラ、ケラケラ。笑っている。
花が咲いている。けらけら。けらけら。笑っている。
はながさいている。けらけら。けらけら。わらっている。
はながないている。けろけろ。けろけろ。わらっている?
はなが。はなが。はなが。はなが。はな?はなはなはなはなはなはな?はなはな?はなはなはなはなはなはなはな?
「ふふ。あっっは!!面白い!あぁ、面白い!どいつもこいつも、履き違えてんのよ!薄皮一枚剥いでみれば、俺と何ら変わりゃしない!!何にも出来ないデクノボー!これがお笑いじゃなくってなんだって言うんだい!」
葉蔵の足元にぶわっと、ケシにも似た道化の華が狂い咲く。赤青黄色と派手な色を携えて、面白可笑しく揺れている。
道化の華の栄養は、幸福と統合。術式が発動された時点で葉蔵は、優晏、刑部、花丸の三者が持ち合わせていた幸福感と統合を根こそぎ奪取した。
その結果、この敵艦甲板上にいる葉蔵以外の全員が一時的な鬱病と統合失調症を併発。無防備な戦闘不能状態へと陥ってしまう。
一方、術式の影響でハイになった葉蔵は懐中時計をぐるぐる振り回しながら、倒れ込んで虚ろな目をしている刑部を踏みつける。
「同じ顔がいくつもごろごろと、あぁ気味が悪い。気味が悪い!悪趣味ここに極まれりだな、チクショウ。」
無抵抗な刑部の分体は瞬く間に消え失せ、遂に最後の一体が踏み潰された。そうして残ったのは、花丸と優晏の二人だけ。
「させません....!まだ....私がっ...!!」
かぐやがあらん限りの力を解放し、中型船から遠距離で閃光を葉蔵に向けて放つ。だが、所詮は未熟者の力任せに過ぎない。
葉蔵は向かってくる五本のレーザーを素手で受け止め、一歩もその場から動くことなく霧散させた。
「ふっ、豆鉄砲の方がまだ出来がいいや!さしずめ、肌が日に焼ける程度か?」
粗雑な動きと酩酊したような足運びで、葉蔵は路傍の石ころでも蹴り飛ばすかのように花丸を蹴り上げる。
「ぐっ....!かはっ!」
続いて、優晏にも容赦のない蹴りが向かう。かぐやはそれを見て怒りを顕にし、閃光をとめどなく放ち続けた。
「やめ....て....!やめ....なさい!!!」
「無意味で滑稽。まるでお道化だ!ここでの殺しも、あなたの抵抗も。全ては楽しい無意味。俺....私?どっちでもいい。楽しいさえあれば!どっちでも!アッハッハッハッハッ!!!」
葉蔵の脳内を埋め尽くす、ケシの花畑。それらが脳みそをどろどろ蕩けさせ、より凶暴な化け物へと作り替える。
普段は虫も殺せぬ臆病者が、残忍で冷酷な殺戮者へと成り代わってしまうのだ。道化に堕ちた男の行き着く終着、形容しがたい狂気。
「おい。今甲板に上がるなよ?うちの船長がキマッてらぁ。」
「だ、誰が上がるかっつーの。バカ言うんじゃねぇよ。」
「また顔面ぐちゃぐちゃにされるかもだもんな。お前は!ゲヒャヒャヒャ!」
「笑ってやんなよ。第一、俺らん中で一回でも船長にボコられてないやついるか?あの嬢ちゃんたちも、もう時期お陀仏だろうよ。」
「あーあ。勿体ねぇ、せっかくの上玉なのによ。さっさと堕天?だかなんだかを出さねぇから。」
敵艦内ではガヤが盛り上がる中、甲板上には悲惨な光景が広がっている。無抵抗な二人を、葉蔵が虫けらでも潰すかのように蹂躙した。
ただかぐやの奮闘により、葉蔵の攻撃のどれもが致命的な一撃には至っていない。それでも、閃光を一発放つ度にかぐやの体力は減っていく。
(あと出せて数発....。これじゃあ、あと一分凌ぐことさえ.....!)
心が折れずとも、それ以外の全てがかぐやに敗北を告げていた。心以外の全てが敗北を認め、体内に貯めていた太陽光も底を尽きる。
完全な詰み。現状、刑部一行にはもう敵艦の甲板に攻撃出来る手段は残されていない。
あとはもう、花丸と優晏の二人がゆっくりと嬲り殺されるのを、かぐやは眺め続けることしかできない。そのはずだった。
刹那、ひとつの隕石が筋を描いて敵艦へと着弾。船を貫通して、敵艦船底に大きな穴を開ける。
「隕石....?そうか...!ようやく出てきたか....!堕天!!!!!!」
(今のは春水の?!まさか、自力で上がって....?)
かぐやは背後を確認し、それが自分にとって都合のいいだけの思い込みだと、現実を突きつけられた。
しかしそれでも、かぐやは光を見た。あの隕石が、頑張れと背中を押した。そんな気が、してしまったから。
(なんでもいい!なんだっていい!今このチャンスを!掴める何かが欲しい!!何か、何か、何か、何かっ.....!!)
ガクンと、かぐやに強烈な目眩が襲いかかる。それは潮風に当てられたからでも、船酔いで目が回ったわけでもなく。もっと、別の要因で。
大気中に満ちた第五元素。特にこの海域では、ある遺骸の影響を受けて活性化したそれが、かぐやの体内に侵入。
初めは慣れないそれにより、かぐやの体は不調を起こした。だが、時間経過とともに活性化した第五元素はかぐやの体に馴染み、その体を書き換える。
かぐやの特異体質。その正体とも言うべき存在が、チラリと顔を覗かせた。そうして、突如かぐやの脳内を駆け巡る、膨大な情報。
(import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
from scipy.integrate import odeint
# c
G = 6.67430e-11 # ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
M_earth = 5.972e24 # ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
M_moon = 7.342e22 # ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
R_earth_moon = 3.844e8 # ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
# initial conditions
initial_state = [R_earth_moon, 0, 0, 1000] # [x, xspeed, y, yspeed]
# Equation of motion
def equations(state, t):
x, x_dot, y, y_dot = state
r = np.sqrt(x**2 + y**2)
x_dotdot = -G * (M_earth + M_moon) * x / r**3
y_dotdot = -G * (M_earth + M_moon) * y / r**3
return [x_dot, x_dotdot, y_dot, y_dotdot]
# time range
time = np.arange(0, 2 * np.pi * R_earth_moon / initial_state[3], 100)
# numerical integration
result = odeint(equations, initial_state, time)
# trajectory plot
plt.plot(result[:, 0], result[:, 2])
plt.title('Moon Orbit Simulation')
plt.xlabel('X-coordinate')
plt.ylabel('Y-coordinate')
plt.show()
なにこれっ.....?!脳みそが....割れる......!!)
情報がかぐやの脳みそに流れ終わった途端、たった一言の単語がかぐやの頭を過ぎる。そうしてかぐやは思わず、それをぽつりと呟いてしまった。
「............惑星通信。」
《.....起きたね。おはよう、正統衛星・巡礼者》
今話に書かれているのは、Pythonのコードです。読み解けない部分を省けば、一応は機能するものかと...。




