修道会
ザンクト・エリーザベト修道会――
正式名称アガぺ(神の愛)修道会。
修道会の礼拝堂ではシュヴェスターたちが創造主なる神に祈りを捧げていた。
「天と地の創造主よ、世に光をお与えください。闇あるところに光を、苦しみのあるところに喜びを生じさせてください。我々主のしもべに、世の人々の心に光をもたらしてください。あなたは天地万物の創造者、この宇宙の主、我らの父、唯一の神。我らはあなたに祈りを捧げます」
エスカローネとアンネリーゼが礼拝堂を訪れたのはシュヴェスターたちが祈りを捧げている最中だった。
シュヴェスターたちは床にひざまずき、祈っていた。
「さあ、いっしょに祈りましょう?」
「え?」
エスカローネは戸惑った。
自分がむしろこの場にふさわしくない存在だと思ったからだ。
「創造主に祈りを捧げるのよ。そんなに難しく考えないで。あなたも私たちの仲間よ。簡単に祈ればいいわ」
そう言うとアンネリーゼはひざまずき、神に祈りを捧げた。
エスカローネは戸惑いながらも、ひざまずき、両手を合わせて神への祈りを捧げた。
(天地万物の創造主よ、私の命がこんにちもあることに対して、感謝の祈りを捧げます。神よ、平和と平安がありますように)
しばらくエスカローネは目を閉じて祈っていた。
「平安あれ、新しい姉妹」
「あ、はい。平安あれ」
エスカローネの前に祈りの中心となっていた人物がいた。
白い襟もとに、黄色い修道服を着た中年の女性だった。
この女性はメガネをかけていた。
「私はテレージア(Teresia)。ザンクト・エリーザベト修道会の長です。みんなからはムッター(Mutter、母)と呼ばれています」
ムッター・テレージアが自己紹介した。
それにエスカローネは答えた。
「私はエスカローネ。エスカローネ・エルフェンクランツです。職業は軍人です」
「あなたの上に神の祝福があらんことを。あなたが悪魔に命を狙われていることは報告され、聞き及んでおります。ですが、安心してください。私たち修道会の者は全力であなたを守ります。ことが解決されるまで、当修道会に滞在なさるといいでしょう」
「ありがとうございます。ムッター・テレージア」
エスカローネは頭を下げた。
「いい機会ですから、修道会の主だったメンバーを紹介しておきましょう。さあ」
ムッター・テレージアの合図に隣にいた若い女性が答えた。
「私はベアーテ・アレクサンドラ(Beate-Alexandra)見ての通り剣士です」
ベアーテはストレートの茶色いロングヘアに半袖の上着、ズボンにマントを着用していた。
エスカローネはベアーテから大人の魅力を感じた。
「マリア=ソフィア(Maria-Sophia)です。扱う武器は槍です。
マリアはベージュの色をしたウェーブヘアをしていた。
服は白い襟もとに黄色の修道服である。
マリアは年齢が低いのか背が低く、小柄だった。
「私はシャルロッテ(Charlotte)だよ。武器は弓」
シャルロッテは金色の髪をお団子にして頭の後ろで丸めていた。
服は黄色い修道服である。
「さあ、次はあなたが」
ムッター・テレージアが促した。
「はい」
彼女はマリアと同じくらい小柄だった。
ムッターの促しで前に出る。
髪は銀色のロングヘアだった。
「私はアウラ・コンコルディア(Aura Concordia)と申します。扱う武器は杖です」
エスカローネはこの少女から何とも言えない神秘を感じ取った。
どこか普通と違う何かがある。
「? 何か私についていますか?」
「い、いえ! 別になんでもないです!」
エスカローネは動揺した。一瞬アウラの瞳が、自分の心を読み取ったように感じた。アウラも黄色い修道服を着ていた。
「私も改めて自己紹介するわね。私はアンネリーゼ。武器は曲刀よ」
アンネリーゼが右手を腰に当てて話した。
「主だったシュヴェスター(Schwestern)たちについてはこのくらいでいいでしょう。礼拝は終わりました。次は食事です。まいりましょう」
そう言うとムッター・テレージアは歩き出した。
「じゃ、私たちも行きましょうか。食堂には案内するわ、エスカローネ」
アンネリーゼは手をエスカローネの肩に乗せた。
エスカローネは修道会の食堂に案内された。
食堂には白いテーブルクロスがかかった長い机があった。
エスカローネはアンネリーゼの隣の席に座った。
食事はすでに人数分、机の上に用意されていた。
食事はパン(クロワッサン)一つと、スープだった。
ムッター・テレージアが言う。
「親愛なる姉妹の皆さん、おいしく召し上がれ」
シュヴェスターたち全員が。
「いただきます!」
と答えた。
エスカローネもやや遅れながら同じ言葉を口にした。
「さあ、エスカローネ、食事をいただきましょうか」
隣でアンネリーゼが答えた。
「ええ」
エスカローネはパンとスープをおいしく食べた。