表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
同棲同盟  作者: つくし
2/4

私は午後さんが好き

 私は姉のホペと近所のカフェに来ている。

 家事を代わりにやってくれた人だ。私をあんな目に合わせといてね(怒)

 私はココア、ホペちゃんはコーヒー。生粋の甘党なので、ココアにホイップをトッピングしてもらった。ホペちゃんはガムシロップとミルクを一杯ずつ。

 コーヒー飲む人ってよくわかんない。絶対苦いより甘い方がおいしいじゃん。大人ぶりやがって。

「コーヒーおいしいの?」

「だから飲んでるんじゃない」

「ココアより?」

「どうだろう、ココアは甘すぎるのよ」

 はいはい、でたでた。"甘すぎる"というお言葉。甘すぎたら誰も飲みませーん。ちょうどいいから飲むんですー。

「飲んでみる?」

「やだやだ、せっかくおいしい口なのに、汚さないで!」

「それはお店に失礼でしょ」

 その一言で少しはしゃぎすぎたかと気づき、体を小さく丸める。

「これだからがきは」

「がきじゃないですー中学生はもう大人ですー」

「私から見たら子供よ」

「でた!ザ主観!これだから大人は…」

「あんたはどっちなのよ」

「子どもにもなれるし、大人にもなれる、オールラウンダー!」

「じゃあ、これから料理当番もよろしく頼むわ」

「今は子どもだもん!」

「がきが」

「子どもじゃない!」

 私はココアを口いっぱいにすすると、ホペの"料理"という言葉で思い出した様子を見せる。

「あ、そうそう…」

 昨日あった事をホペに話した。寝坊したことから、ロヴェのことまで。

「という、話がありまして…」

「なるほどね、私もそんなこと聞いたことがあるわよ」

「そうなの?」

「ヘルから聞いた話なんだけどね」

「どんなことがあったの?」

 ホペは、はっとした表情の後、眉間にしわを寄せた。

「ちょっと待って、私、思い出したんだけど、あんた、感謝のかの字すらなくない?」

「そ、その節はどうも…それで…」

「今日だって昼前に起きてきたじゃん。モーニングに行くって約束してたのに。何時に寝たのさ」

「昨日は11時過ぎ」

「午前消し去ってんじゃん、私じゃなくて午前さんに謝ったら?」

「なに午前さんって」

「ユーモアを知れ」

「私は午後さんが好きだもん!」

「あんたって変わってるわよね」

「どの口が言うか」

 ホペを睨み、歯ぎしりするウィズ。徐々に膨らみを増す頬。

「そういうのいいから、昨日のことについて教えてよ。簡単にでいいから」

「ほんと簡単にでいい?」

 私は大きく頷いた。少しでもロヴェちゃんのことを知ることができるのなら。気になりすぎて夜も眠れな…何よ、何見てんのよ!心配して気になるのは本当なんだから!

「ロヴェちゃんは…」

 私は息を呑む。コーヒーが入ったグラスの氷が音を立てる。

「暴力恐怖症なの」

「なにそれ」

「そのままの意味よ。自分が振るうのも、誰かが誰かに振るうのも、見ることができないの。見てしまったら…」

 再びコーヒーが入ったグラスの氷が音を立てる。

「そこからは私も知らないんだけどね」

「なんじゃい!緊張が飲み物にもうつって氷溶けちゃったじゃん!」

「仕方ないじゃん。私だってあんたから聞いて驚いてるのよ」

「責任感じちゃうんじゃない?自分に置き換えちゃったりして」

「だから何度も謝るってこと?」

「違うかなー」

 私の家庭でそんな暴力的なことは起こるわけないけど、些細な小突き合いでも影響するのかな。

「変に意識せずにいつも通り過ごそ」

「そうだね」

 ココアが入ったグラスの氷が音を立てる。

「姉ちゃーん、帰ろー」

 幼い女の子の声が店の入り口から聞こえてきた。私はスマホの時間を確認すると、勢いよく席を立った。そして、残っているココアを勢いよくすする。

「あんた、もしかして寝るのが好きでもなく、起きられないでもなく、時間を守れないだけなんじゃ…?」

 ウィズはストローをくわえたまま、目をぱちくりさせる。

「姉ちゃん、それ、まじ?」

「いや、わからん、だって、ね」

 確かに思い返せば時間を守れていないような…私、ダメ人間…?

「気づけただけいいかもね、これから気をつければいいし」

「でも、どうやって気をつければいいか」

「姉ちゃーん、まだー?」

「こういうところかもね」

「なるほど、目先のことしか考えられないところか」

「あんたにしては物分かりがいいわね」

 ホペを残し、フォーの元へ足早に駆けていくウィズ。ややご立腹のフォーをウィズがなだめながら店を出ていく。

「それ以上は言わないようにね」

 存在感を消していた、ホペの背後の女性が話しかけてきた。

「わかってるわよ。私はあんたらのためじゃなくて、家族のために協力してやってるだけ」

 私は氷が溶け、薄まったコーヒーで喉を潤す。

「仮に、私が口走ったらどうなるの?私たちを消すことはできないんでしょ?」

「大切なものはなんだ」

 空のグラスを凝視するホペ。

「守りたいものはなんだ」

 ホペは唾液と混ざった息を呑む。当然むせる。

「消すことはできないけど、消す一歩手前までならできる。わかったら言う通りに動くことね。計画通り進んでいるのだから」

 ホペの背後から椅子を引く音がする。

「あ、そうそう、あの子、フォーのことだけど」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ