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耀紀、焔、瀬最波海の三人は夕食をとるためにとある行きつけの店に向かっていた。


「僕、役に立てると思う?」


「お前の努力次第だろそれは。」


「私、ウタちゃんの超術の仕組みまだイマイチわかってないんだけど。どんな感じのやつなの?」


「僕も正直わかってない。」


「でもお前の『異神』ってのは三分類されてる超術の中でもマジでレアなんだから、

それを活かせないのって宝の持ち腐れだぞ。」


海は目にかかりかけた前髪を整えながらそう言った。


「どれくらいの割合だっけ?」


「割合はわかんねぇけど、世界に5人くらいだったような気がする。

でも、今のところ戦争で一番活躍してんのが俺や焔みたいな『攻掌』系なんだよな。」


そのような会話をしているうちに三人は目的の店の前まで来た。


ドアを開けて入店すると中年の男性がいらっしゃいと出迎えてくれた。


「今日は訓練帰りか?」


三人分のお冷をお盆にのせて中年男性は問いかけてきた。


「うん、僕は進捗なしだけどね。」


耀紀は少し不機嫌そうな顔でメニュー表を読んでいた。


「俺、600gステーキでお願いします。」


「私はエビピラフで」


海と焔は淡々と自分の注文を終えた。


「ウタ、お前は決まったか?」


耀紀の頭を優しくポンポンとなでながら店主は聞いた。


「チーズインハンバーグ」


「あいよ、くつろいでいきな」


店主はそう言って厨房に消えていった。


「またガキくせぇもん頼みやがって、ステーキとか食えよ。」


「今日はハンバーグな気分なんだよ。」


耀紀と海が話している最中、焔は夕方の地方ニュースをテレビで見始めた。


暫くテレビを見ていると赤文字で書かれたテロップが表示された。


『速報です。現在第4区で鬼天使(きてんし)が出現しました。

周辺にお住まいの方は直ちに避難し、三等兵士以上の者は応援に向かってください。

繰り返します..』


「うわぁ、今月何回目だよ。ウタお前行くの..」


海が声をかける前に耀紀はすでに店を出て行ってしまっていた。


「クソが、おじちゃんすぐ帰ってくるから料理作っててくれ!」


「あいよ、行ってきな」


海も耀紀に続いて店を後にした。


「アイリちゃんは行かないのかい?」


「テレビで中継されてるし、私四等兵だから。」


少し不貞腐れた様子で焔は水を飲みほした。




誰よりも早く鬼天使と遭遇したい。


耀紀はそう思いながら全力で走っていた。


「ウタ!」


後ろから既に超術を使用した状態の海が近づいてきた。


「負ぶってやる!その方が速いだろ?」


耀紀は海の背中に飛び乗った。


海は大きく飛躍し家々の屋根を足場代わりにして現場に向かった。


超術を使用している海の外見は一見通常と何も変わっていないように見えるが、

腰に三本の刀を帯刀している。

そして、それらにはそれぞれ『3』、『6』、『9』という数字が刻まれている。


「おい、見えたぞ」


海がそう言って前を指さした。


指をさした先には体長が三メートルほどの頭に天使の輪のようなものが浮かび、

後背部から何十もの手が生えている生き物が見えた。


「お前から行くか?」


「いや、後に回るからカイがやって。」


海は分かったとだけ言って、帯刀していた『9』の刀を抜いた。


その刀身は赤黒く紫色の光粒子のようなものを纏っていた。


「『玖琴壊(きゅうきんかい)』」


海は鬼天使の頭部から足元にかけて螺旋を描くように斬り付けた。

勢いのあまり背中にいた耀紀は歩道に投げ出された。


そして鬼天使の身体は斬りつけられた部分からドロドロの肉塊へと変化していった。


「ウタ、仕事だぞ。せっかくだから試してみろよ。」


海が刀を鞘に戻して超術を解いたと同時に隠れていた人々が姿をあらわした。


「訓練兵の方が倒してくれたぞ!」


「見事な刀裁きだったな!」


人が集まってきたが海は冷静沈着だった。


「まだ、事件は収束していませんのでこの場から直ちに離れてください。危険です。」


海は真剣な顔で対応した。


「ほら、やるならさっさとやれよ。」


再度、耀紀の顔を見て言った。


耀紀は大きく深呼吸をして超術を解禁した。


耀紀の周りにはまともに目視できないほどの量の光粒子が出現しそれらは

瞬く間に耀紀の身体全身を包み込んだ。


やっと直視できるほどのレベルに光量に落ち着くと、そこには両腕が白く輝き背後に

13個のまばゆい光を放った球を持った耀紀がいた。


耀紀は何も言わず、目の前にある鬼天使の肉塊に近づいた。


「『零独(れいどく)』」


耀紀が唱えると灰色の空間が出現し目の前にあった肉塊はその空間に飲み込まれていった。


それを黙ってみていた海の後ろの方からある一人の女性が泣きながら声をかけてきた。


「訓練兵さん、あの鬼天使は私の知人だったんです。

彼女はとてもやさしい人でした。彼女は..彼女は天国に行けたのでしょうか?」


喋るのがやっとなくらい泣きじゃくって話しかけてきた女性に海は正直に答えた。


「お気持ち察します。しかし、あなたのご友人は天国へは行きません。

今、天国へ行ってしまうと敵対勢力の思うがままです。」


「では..どうなるんですか?!私の友達は!」


「あなたのお友達は魂が存在できる空間にいますよ。」


超術を解いた耀紀がそう言いながら歩み寄ってきた。


「お友達の肉体は消滅してしまいましたが、彼女の魂だけは僕が命を懸けて守ります。

なので安心してください。」


「ありがとうございます。」


女性は涙をぬぐいながらお礼を言った。


「あなたたちのお名前を聞いてもいいですか?」


「僕は耀紀詩三等訓練兵です。」


「瀬最波海準一等訓練兵です。」


そう言って現場を後にし、焔のいる店へと帰っていった。


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