第九十四話 レオンの剣術道場 其の五
「どうじゃ、わしはもう歳じゃが、それなりにはやるじゃろう」
木刀を置き、少し得意げに笑って見せるレオンさん。歳だとかそういう次元ではない気がするが。
俺は夢でも見ていたような気分だ。こんな俺よりも背の低い老人──と呼ぶにはまだ若いが──おじいさんから今まで味わったことのないほどの重い攻撃が繰り出されるとは思ってもいなかった。
大して筋肉もあるとは思えないこの体の一体どこからあんな化け物じみたパワーが湧いてくるのだろうか。俺はレオンさんの笑みが少し怖くなった。
「あそこで立て直してくるのはさすがじゃが、手加減をしておったのではないかのう。ロンドからは魔法も使うと聞いておるし──よし、今度は魔法も使って全力でかかってくるのじゃ」
髭をなでながら話していたレオンさんが再び木刀を手に取る。
あのレオンさんに褒められた! 魔力操作と魔法は魔法剣士だから使えたものだから、俺がもし純粋な剣士だったら立ち直れなかっただろう。魔法剣士ならではのところを褒められるのって嬉しいな。
やはりというか、最初に魔法をあえて全く使わなかったのを見抜かれていた。あれは完全に俺の驕りだったし、勝つためには絶対に使うべきだったのだろうが──
「土系統の魔法は使っても大丈夫ですか?」
「それは……ちと困るのう」
視線を泳がせ、レオンさんが答える。
土系統の魔法は基本的に地面を操作するため、地面が凸凹になる。ここはよく手入れがされているようで、稽古の邪魔にならないように、土が均されている。
それを崩してしまうのは忍びないと思い、訊いてみたが駄目だった。土壁なんて出された日には、土を均すのが大変だからな。
魔法学校のときは、均すのが少々雑でも他の人は動かずに魔法を撃っていたから問題なかった。そもそも魔法の撃ちあいで距離を開けるための空間だったので、そんなに気にすることはなかった。
しかし、ここでそれをしてしまうと、稽古のときにちょっとした凹みで足を挫いたり、土が柔らかくて踏ん張れなくなったりと、稽古に支障をきたしそうだ。
事前に訊いて正解だったようだ。
「では炎の魔法は──」
「それも…………ちと困るのじゃ」
しばしの沈黙が訪れ、レオンさんが口を開く。
「……戻るかのう」
悩みましたが、長くなりそうだったので一度ここで切りました。




