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第七十九話 アクスウィル魔法学校 其の六

 二限目の終了を告げるチャイムが鳴ると、訓練場にいた生徒は各々で校舎へと向かう。その中には、数人で固まって思い思いのことを話す者も多い。


「なあ、さっきのがSランク冒険者ロンドの弟子だっけ? 大したことなかったな」

「確かに炎は小さかったけど、魔法使いとは違うんでしょ? そんなもんじゃない?」


 本人がいるところでは言わなかったが、このクラスのほとんどがそのような話をしていた。Sランク冒険者の弟子はどれほどの実力なのだろう──と、なまじ期待が高かった分、その程度かと思われてしまったのだろう。


 この学校の生徒たちには及ばなかったが、冒険者全体で見れば、コルネよりも小さい「フレア」しか出せない者はたくさんいる。もちろん、「フレア」自体を出せない者も。


 各地から才能が集まる名門、アクスウィル魔法学校──この学校のレベルが異常なのだ。


 しかし、ごく数人の本当に優秀な──魔法に造詣が深い生徒たちは口をつぐんでいた。彼らは気付いていたのだ、彼の魔法の発動がここにいる生徒の誰よりも早かったことに。


 魔法使いとして優れているかの指標は魔法の威力になることが多い。単純に火力が高い魔法使いは実戦で重宝されるし、一見しただけでだいたいの実力が判断できるからだ。これは才能による部分も大きい。


 しかし、魔法の理論を深く理解している彼ら、彼女らは知っている。火力だけではなく、いかにスムーズに詠唱から発動まで持っていくかもまた大事なのだと。


 トップクラスの魔法使いを目指す者たちはみな、最初からそれなりに威力の高い魔法を撃てる。しかし、そこから頭一つ抜きんでるには、いかに滑らかに──効率的に魔力を変換できるかが重要なのだ。


 そしてそれは詠唱から発動までのラグに現れる。変換効率がよいほど、発動するまでの時間が短くなる。つまり、先程の少年はこの「魔力変換」がこの中の誰よりも巧いということになる。


 魔法剣士は魔法と剣の複合職──その複合職に魔法だけをずっとこの学校で学んでいる自分たちが負けたという事実に、プライドがズタズタになる。


 同時に思う、あの少年は──Sランク冒険者の弟子は化け物だと。なぜ剣士としての鍛錬もあるはずなのに、魔法でもあれほど秀でているのか。よほどの修練を積んだに違いない。


 自分も負けていられない、と身の引き締まる思いの生徒たちであった。


 * * *


 四限目を終えて、中央にある食堂に向かう。


 この学校の食堂は中央に集中している。どの校舎からも遠くならないようにという配慮なのだとか。


 学食というものを食べたことがないので、とても楽しみだ。師匠から安くて美味しいものが食べられると聞いたとき、安いのに美味しいものが食べられるとは夢のようだと思ったが、店が潰れないのか心配にもなった。


 たくさん食堂が立ち並んでいたが、どこがいいのか分からないので、一番大きい建物に入る。一番大きいということは一番生徒が来るということ──つまりここなら間違いないだろう。


 中はとても広く、たくさんの生徒で賑わっていた。中央にテーブルと椅子がたくさん置いてあり、食事を提供するスペースは壁際にあるようだ。


 注文の列がいくつもあり、どこに並んでいいのか分からずまごついていると、首からかけている入校証を見て、見ず知らずの生徒が案内してくれた。


 よかった、本当に優しい人もいるんだ、と思いながら注文をし、料理を受け取る。頼んだのは、案内してもらった人におすすめされた肉料理だ。


 適当な席につき、祈りを捧げてから、食事を口に運ぶ。美味しい──そんなにジューシーというわけではないけれど、味が整っている。きっと調理の仕方がいいのだろう。


 美味しいお肉がこの安さで食べられる──これはすごいことだ。ミャクー村にいた頃は食べるお肉はどれも野生のモンスターのものだった。


 他の冒険者が狩ってきたものを分けてもらったり、自分たちで狩ったものを焼いたりしていた。自分たちで狩るのはほとんど小さいモンスターだったから、あまり食べた気がしなかったけど。


 ここで提供されているお肉は、おそらく育てられたものだ。貴重なお肉をこんなに安く食べられるのは、やはり補助があるからだろうか。


 気が付けば、目の前のお皿は空になっていた。どうやらペロっと食べてしまっていたらしい。


お皿を下げてから食堂を出ようとすると、食堂の前に、こちらをじっと見てくる男子生徒がいる。


 あまり友好的ではないというか、戦意があるというか……顔に見覚えはないのだが、知り合いだったろうか。


 そこで、師匠の言葉を思い出す。魔法学校の生徒は大きく二つに分かれ、一つは魔法の研究をするために在学している者。そしてもう一つは──


「おい、Sランク冒険者の弟子、コルネだな! 俺と勝負しろ!」


 ──戦闘技術を磨くためにここにいる者だ。


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