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第五十二話 ケルベロス

 真っ黒な肢体に凶暴な顔つき。そして見上げなければいけないほどの大きさ。俺の身長の七、八倍はあるだろうか。


 四つ足で尻尾が生えていて頭が三つ付いている──ここまでは俺の知っているケルベロスと一致するのだが、俺の知識の範囲では明らかに違う点が二つある。


 一つは気性だ。ケルベロスの気性はある程度の個体差はあれど、基本的におとなしいはずだ。人懐っこいため、愛玩モンスターとして飼っている人もそれなりにいて、街でもたまに見かけることがある。


 もう一つは大きさ。ケルベロスは成長しても大人の膝ほどの体高しかないはずだ。その十倍もありそうなこのモンスターは、もはやケルベロスとは呼べないかもしれない。


 しかし、大きさ以外はケルベロスとそれなりに似通っているし、そもそも頭が三つあるモンスターなんてケルベロス以外に俺は知らない。


「あれは……ケルベロスですかね?」

「僕に聞かれても……」


 無意味な質問をしてしまい、師匠に困った顔で返される。


 暴れるケルベロスらしきものに薙ぎ倒された木がどんどん降ってくる。少し離れた場所で見ているため、危急の事態というわけではないが、十分に気を付けなければ。


 結構なペースで木々が倒れているはずなのに、ケルベロスの周りにはまだたくさん木が残っていることに気付く。倒れた木に注目していると、なんと倒れた木が独りでに元に戻っていくのだ。


 師匠が他人の魔力を操るように、何者かが木を操って無理矢理立たせているのだろうか。だとしたら誰が……?


 草や葉に紛れていて分かりづらいが、目を凝らすとケルベロスの脚の隙間から緑の髪の少女が見えた。


 少女のような体型に不釣り合いなほど体のサイズが小さい。離れていて正確な大きさは分からないが、赤ん坊よりも小さいのではないだろうか。そんな少女が手を組み、目を閉じ佇んでいる──まるで祈るように。


(もしかして精霊……?)


 精霊はおとぎ話に出てくるような小人の姿をしており、自在に浮いたり飛んだりできるらしい。見るのは初めてだが、聞いた話と合致する。


「師匠! あれって──」

「ああ、あれはドライアドだね。滅多に人前に出てくることはないんだけど、森を護っている精霊だと言われているよ。ドリュファスの国名の語源にもなっているほど、向こうの王国では大切にされているんだ」


 森を護る精霊──なら本当に倒れた木々を復活させているのかもしれない。森を護る精霊と言われているのなら、もしかすると森を再生するような力があるという可能性もある。


「ドライアドが出てくるということは、ケルベロスは森に害をなしているということ──やはりあのケルベロスが暴れているせいで、他のモンスターが逃げ出している? それが異常発生の原因?」


 何やら師匠が難しい顔でぶつぶつと呟いている。あのケルベロスもどきが何なのか考えっているのだろうか。


「だとすると、このモンスターを討伐すれば異常発生は収まる? いや、そう決めつけるのは早計か。だとしても、これは本来ここにいるべきではないはず。なら討伐をすること自体は変わらない、か」


 師匠が軽くため息を吐き、俺に告げる。


「僕一人であのモンスターを倒してくる。コルネくんはそこを動かないで」


読んでいただきありがとうございます。

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