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第十三話 ロンドから見たコルネ

 初めて彼の魔法剣を見たとき、天才だと思った。剣に揺らめく炎、そして太刀筋。


 剣に纏わせて維持することは難しい。通常、魔法を使うときは変換した魔力を体外に排出してからは制御をおこなわない。打ち出した魔法は慣性のままに飛んで行くだけだ。


 体内の魔力の流れでさえ制御するのは難しい。魔力の制御は魔法使いの永遠の課題だ。


 いわんや打ち出した魔法をや、だ。体から出てしまった魔法を制御するのは至難の業だ。


 出来るとしてもよほど慣れていないと集中力をとても使うし、特に制御する必要もなかった。仲間に足止めしてもらえばいいのだ。


 こうして、魔法は効率的に行う形態へと進化していったのだ。


 しかも、だ。僕はいろんな場所を巡ったが、どの場所も一度しか訪れていない。つまり、コルネくんは僕の剣を一度見ただけで理解し、習得したわけだ。


 見た直後に一度で出来てしまったパターンなのか、鮮明に記憶に焼き付けて何度も何度も挑戦して出来るようになったのかは分からないが、どちらにしてもすごいことだ。


 だからこそ炎以外の魔法が使えないと聞いたときは落胆した。それを隠す余裕すらないほどに。


 一つの系統のみでも強力な魔法を使え、魔法師団に所属している魔法使いはいるにはいる──というより一人だけだが、魔法剣はそうはいかない。


 魔法の切り替えは魔法剣の醍醐味の一つだからだ。


 魔法剣は様々な状況に対応できる。固い皮膚を持つモンスターには魔法が、魔法に耐性のあるモンスターには剣が効果的だ。


 そして、知恵のあるモンスターや人間には切り替えを。纏わせる魔法を次々に変えることで戦いを優位に進めることができる。


 だから系統が一つでは魔法剣は不完全なものになる。ああ、せめて二つ系統があれば……そう思った。


 だが違った。彼は魔法剣としては使えないが、魔法自体は他の系統も使えるようだった。


「俺はあの輝きが忘れられなくて……」


 彼の言葉を思い出す。やはりどうやら昔僕が行った孤児院の一つにコルネくんがいたらしい。


 僕は子どもたちに見せる魔法剣はいつも炎にしていた。それも見せるのは決まって夜。


 理由は簡単だ。一番分かりやすく、綺麗だからだ。


 切り替えを見せてもよかったが、一番大事なのは印象に残すことだったから、炎だけを見せた。


 だからきっと彼も炎の魔法剣しか見ていない。そう聞いて、言われてみれば見てもいないものが出来るわけはないかとも思った。


 一度僕の手本を見てからは早かった。その日のうちに、僕が普段使う六つの系統は不安定ながらも使えるようにはなっていたから驚きだ。


 その後も彼は日ごとに上達していった。音を上げるだろうと思われたメニューも難なくこなしていた。


 会議から戻ったときにちらりと見えた魔法はとても安定していて、彼がきちんと鍛錬を行っていたことが分かって嬉しかった。


 光の魔法や毒の魔法も習得できそうになっているのを見て、率直に彼は天才だと思った。光の魔法は魔力のコントロールがよほどうまくないと発動できないし、毒の魔法は使い手が貴重だ。


 使い手が貴重な魔法はそれだけで武器になる。たとえ弱くても意表を突くことができるからだ。毒の魔法は気軽には使えないが、使い方によってはとても強力な武器になるだろう。


 コルネくんの今後の成長が楽しみで仕方がない。師匠というのはこんな気持ちなのか。僕は今最高に「師匠」をしている……うぅ……まだ出会って一月も経っていないのに、ずっと前からここで彼と一緒に暮らしている──そんな気がする。


 こんな日がいつまでも続けばいいのに。


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