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第八話 冒険者会議

 冒険者会議──それは冒険者全体の方針を決めたり、国からのクエストを冒険者に伝えたりする定期的に開かれる重要な会議である。


 王国騎士団や王国魔法師団、各ギルドのトップや大臣たち、そして冒険者の代表としてSランク冒険者の三名が出席する。


「本日はお集まりいただきありがとうございます。今回も進行は私、レナードが務めさせていただきます。では何か議題のある方は──騎士団長ラルフ様どうぞ」


 大臣であるレナードが会議開始から手を挙げつづけていた騎士団長を指名する。


「どうも最近モンスターの数が多い。現在は騎士団と魔法師団で討伐しているがギリギリで、正直他の仕事に手が回っていない。冒険者ギルドの方でも討伐を手伝って欲しい」

「うちは構わんのだが……どうですかな、財務大臣殿?」


 独特な佇まいの小柄な老人──冒険者ギルド本部長が、常に笑みを浮かべている財務大臣をちらりと見る。


「ええ、国防費からいくらか出しましょう。決まり次第連絡致します」

「だそうだ」

「他に何かある方は──パウル様どうぞ」

「先程話題に上がったモンスターの討伐でポーション類が不足している。おかげで市場にはほとんど流れておらん。錬金術ギルドでつくる数を増やしてほしい」


 壮年の少しお腹のたるんだ男性──商業ギルド本部長パウルが発言する。


「ただ増やしてほしいと言われましても──どのくらいですかな?」


 錬金術ギルドの本部長は黒い帽子を目深に被ったまま答える。


「いつもの二倍ほど商業ギルドに卸してほしい」

「そのくらいならば出来ますが……代わりに他の商品が少々少なくなると思いますがよろしいですか?」

「構わん」


「他に何かございませんか? そうでしたらこれにて会議は終了とさせていただきます。皆様、改めまして本日はお集まりいただきありがとうございました」




「はぁ~、肩がこっちまうねぇ……何も言わないのになんで出なきゃいけないんだか」


 肩を軽く回しながらサラが愚痴を漏らす。歳の割に肩がよく上がるなあとロンドは少し感心した。


「老い先短いジジィの時間を浪費しおってからに、そうは思わんかロンド」

「ははは、そうですね」


 Sランク冒険者のレオン、サラ、ロンドは会議が終わった後にこうして集まるのがお決まりとなっている。元々は古い知り合いである剣士のレオンと魔法使いのサラが集まっていたのが、ロンドがSランク冒険者になってからはロンドも交えて集まるようになった。


「そういえばロンド、今日はやけに機嫌がいいじゃないか」

「ふふ、そう見えますか? 見えちゃいますか?」

「見えるとも。会議中もずっとニヤニヤしていて正直気味が悪かったぞい。隣にいた商人ギルドのも少し引いておったわ」


 レオンがジト目でロンドを見るが、ロンドは意に介さずといった調子だ。


「え……そんなにですか? まあそんなの構いやしませんよ。それよりもほら、何があったか聞いてくださいよ」

「しょうがないねぇ。で、何があったんだい?」

「実は……弟子が出来ました!」

「「弟子!?」」


 レオンは口をあんぐり開けたまま固まり、サラは思わず立ち上がってしまった。


「弟子というのはあの弟子かの……師匠と対になるあの弟子で合っとるか?」

「もちろん、その弟子ですよ」

「はぁ……ついに幻が見えるようになっちまったんだねぇ、かわいそうに」

「わしの家の近くにいいお医者様がおるから紹介するわい」

「やだなぁ……本物ですって」


 コホン、とサラが咳払いをする。


「剣の才能がある子は剣を、魔法の才能がある子は魔法を。得意な方を鍛えるのが鉄則ってもんさね。そして鍛えなかった方は戦闘では使えなくなる。そうさね──もしも()()()()()()()()()()()()()がいれば可能性はあるかもしれないねぇ」


 少し考えてからため息を一つ吐く。


「ま、そんな子いるわけないね。だって魔法剣は十数年前には存在しなかったんだから。結局、魔法剣を使いこなせるやつなんてあんたくらいさね」

「それがいたんですよ。ふふ、いろんな土地を回った甲斐がありましたよ」

「本当か?」

「はい。各地に赴き、子どもたちに魔法剣を見せ、他にも魔法剣士はたくさんいると吹き込む。それをコツコツやってきてやっと……やっと実を結んだんですよ……うぅ……」

「ほら、泣くんじゃないよ」

「ロンドは感動するとすぐ泣くんじゃから。でもよかったのぉ……わしも最近涙もろくて……サラだって泣いとるじゃないか」

「ロンドは私の子どもみたいなものだからロンドの弟子となれば孫みたいなものさね──今夜はパーティーだよ!」




「ふぅ……食った食った……」


 店から出てきたロンドは酔いが回っていた。


「そういえばそのコルネくんはどうなんだい? あんたから見て」

「わしも気になっておった」

「魔法の発動は速いですし、僕と同じ六系統は使えそうなのでかなりすごいです」

「間違いなく天才じゃ」

「天才だね」


 即座に二人が呟く。


「あ、そういえば暇なときに魔法を見せに来てほしいんです。コルネくんに何か新しい魔法を覚えてほしくって──でも秘伝の魔法は人には見せられないんでした」

「大丈夫さね」

「え?」

「可愛いロンドの弟子のためだからね、全部見せるしかないさね。明日にでも行こうかねぇ」

「ずるい! わしも! わしも一緒に行く! コルネくんに会いたい! わしも明日は暇──ひま──あ、明日は騎士団との稽古があるんじゃった……じゃあ明後日! 明後日──も駄目なんじゃった……」

「分かりましたぁ……コルネくんも……きっと喜びますよぉ……むにゃ……」

「近くに宿を取るしかないようじゃな──全く……よぼよぼのじじぃにはきついんじゃがのう」

「昼間はもっと重いものを運んでた気がするけどねぇ」

「気のせいじゃ」

二人はロンドのことを子どものように思っています。


読んでいただきありがとうございます。


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