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第零話 パーティ追放(?)

「コルネがもっと強かったら、こんなことにはならなかったんだ。コルネのせいだ! パーティを抜けろ!」


 どうしてこんなことになってしまったんだろう。時は半月前に遡る。




 元々、俺たちは幼馴染四人で結成された冒険者パーティだった。盾使いのエミル、魔法使いのアドレアとマリー、そして魔法剣士の俺、コルネ。


 魔法剣士というのは魔法を剣に纏わせて戦う剣士のことだ。非常に珍しい戦闘スタイルではあるが、有名冒険者の一人も魔法剣士であり、弱いわけではないはずだ。


 エミルが盾で守りつつ俺が魔法剣で攻撃、その後ろでアドレアが大魔法を放ち、マリーがメンバー全員を回復する。剣が魔法剣になっていること除けば、四人パーティでは一般的な戦法だ。


 結成したのは俺が九歳のとき。俺とアドレアが育った孤児院の経営が回らなくなり、これ以上は負担をかけられないと二人で冒険者になることを決めた。


 それなら僕も私も、とよく遊んでいたエミルとマリーも一緒に冒険者になりパーティを組むことになった。二人の両親は心配したが、条件付きで冒険者になることを許した。


 こうして結成してから五年間、この四人で大した揉め事もなくやってきた。しかし半月ほど前に新しいメンバーが入ってきた。領主の三男であるジャンだ。


「俺はジャン・オランド。最強の俺様がこんな寄せ集めのパーティに入ってあげるんだ、感謝しろよ」


 オランド家はこのあたり一帯を治める領主の家柄だ。王国内での地位は高くはないと風の噂で聞くが、少なくともこのミャクー村ではオランド家に逆らえる者はいない。


 そうでなくともオランド家の領地は税率が低く、領民からの支持も厚い。理想的な領主に逆らう理由も特にないのだ。


 ジャンはエミルの紹介でこのパーティに入ることになったのだが、俺はなぜ今新しくメンバーを加えたのか不思議でたまらなかった。四人でこのパーティは上手く回っていたし、パーティのランクもつい最近上がったばかりだ。


 エミルに聞いたところ、なんとジャンとは遠い親戚関係にあるらしい。


 何代か前のオランド家の男性が平民の女性と駆け落ちをした。最終的には彼は家との関係を修復し、領地で暮らした。その男性がエミルの祖父にあたると。


 今まではエミルの家族とオランド家は互いに不干渉を貫いてきたが、数日前にオランド家からジャンをエミルのパーティに入れろと言われたらしい。


 ちょうどそのとき父親が怪我をしていて、エミルの家は貯金を切り崩して生活していた。オランド家が経済的な支援をするという条件で、エミルはあまり乗り気ではなかったが要求を呑んだ。


 領主のアラン様曰く、

「三男のジャンが『俺様は最強だ!』などとほざきながら他の子どもたちをいじめるので、一度現実を見せたい。一度怖い目に遭えば、大人しくなるだろう」

とのことだった。


 アラン様の言い方から、さほど長い期間ではないのだろうと思ったのもエミルが承諾した一因だった。


 それならば、と他のメンバーも納得しジャンを連れて討伐クエストに行くことにした。冒険者パーティとクエストには、それぞれFからAまでのランクがあり、パーティのランクより下のクエストは受けられないようになっている。


 ランクがDに上がったばかりでいつもはEランクのクエストを受けていたが、ジャンがいるので万が一のことを考慮してFランクのものにした。


 しかしこれがいけなかった。領主様の騎士団に教えてもらったらしく、不幸なことにジャンはそれなりに剣が扱えた。


 討伐クエストのランクの低さも相まってジャンの目にはモンスターというものがさほど脅威に映らなかった。むしろ討伐を終えてさらに自信をつけたかのように見えた。


 ならば次にDかEランクのクエスト受けようか、とも思った。しかしジャンを守りながらの戦闘を強いられることと、領主の息子に怪我をさせでもしたら大変だということで、高ランクのクエストは受けられない。


 俺たちは完全なデッドロック状態に陥った。


 ジャンはそのままパーティに居座りつづけ、毎日Fランクの討伐依頼ばかりを受けるように言ってきた。俺たちは勝手に倒されていくモンスターを見ていればよかったので、それは別に構わなかった。


 ただ、戦闘以外でのパーティの雰囲気は最悪だった。食事中や移動のときにやたら元気に自慢をするのだ──昨日倒したモンスターのことだったり、彼の家族のことだったりと。


 最初は微笑ましい気持ちで適当に流していたが、同じ内容を何度も話されてうんざりしていた。


 そしてジャンが入ってから三日目の朝。アドレアがパーティを抜ける。


 領主様の目的は最終的にパーティを抜けさせ、冒険者を諦めさせること。では危険な目に遭わせずにパーティを抜けさせるにはどうすればいいか。


 それはパーティを抜けることだとアドレアは言った。俺たちがパーティを抜けていけばジャンは自分のせいなんじゃないかと思い、パーティを抜けるんじゃないかと。


「そういうわけで抜けるよ。落ち着いたら戻ってくるからさ」


 ほとぼりが冷めるまで宿屋にこもって魔法の勉強をじっくりするつもりらしい。戻る気でいるからなのか、五年間もいたパーティなのに、思ったよりあっさり抜けてびっくりした。


 ジャンも話を聞いたときは驚いていたが、なんとその後に今日はEランクのクエストをやりたいと言い出した。メンバーが一人減ったのに、今までより上のランクに挑戦するなど無謀もいいところだ。


 俺たちは止めようとしたが、ジャンはやると言って聞かなかった。パーティのDランクよりは下ではあるし、以前はEランクでも余裕を持って倒せていたので大丈夫だろうという話になった。


 結局、俺たちはウルフの討伐を受けた。攻撃する魔法使いがおらず、剣士が二人になってしまったので、魔法も使える俺がアドレアの代わりに攻撃魔法を打つことになった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 魔法剣、実は私の小説の主人公も魔法剣を使うので、少し気になり共通点や相違点を参考にしたいと思い、読ませていただくことになりました。 ブックマークさせて頂きました。
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