公開処刑
帰りのホームルーム。
日直女子はクラスの前に出て、皆に向かって話し中。
目の前、一番前の席の男子との会話。
女「学園祭の役員会に出席する人は第二理科室集合でお願いします。日直からは以上です。他に連絡ある人いますか?」
男「はい」
女「どうぞ」
男「では失礼。……君のことが、好きだぁーーーーーーーー!」←(大声)
女「は?」
男「君のことが、好きだぁーーーーーーーー!」←(大声)
女「二度言う?」
男「何度でも言おう。君のことがっ」
女「もういい。ストップ。何? 公開処刑?」
男「告白だよ。愛の告白」
女「誰に?」
男「君に」
女「目の前に居るよね」
男「間近で見る君の瞳は実に美しい。黒光りする昆虫のような輝きだ」
女「確実に貶してるよね。その昆虫、ゴから始まる四文字だよね。あと、距離近いから鼓膜破れる」
男「大丈夫。問題なく会話出来ている。僕の声は君にちゃんと届いているよ」
女「何故に大声? よそのクラスにも丸聞こえ」
男「君の耳に入る音を全て僕の声で満たしたくて」
女「キモい」
男「そして、今僕は君の目の前に立っている。更に一歩近付けば、君の視界も全て僕に染まる」
女「怖いよ? かなり怖いよ?」
男「僕が守ろう」
女「……拒否します」
男「何故? 僕は君のナイトだ。トゥナイト、今夜は僕が君を守ろう」
女「駄洒落がウザイ」
男「嫌よ嫌よも好きのうち。ひとよひとよにひとみごろ」
女「勝手に解釈するのやめて。数学汚さないで」
男「さぁ、クラスの生徒諸君。彼女の心の底に眠る本音を多数決で決めようじゃないか。彼女が僕を愛しているか否か」
女「私に問おう? 目の前に本人居るよね」
男「では君に問おう。永遠の愛を誓いますか?」
女「質問かっ飛ばしたよね。 誓う以前の問題では? 貴方はちゃんと人の話を聞くべきだよね」
男「あなた……既に新婚気分とは、気が早いな」
女「勝手な解釈すな。ただの二人称。第三者に対しての二人称。夫婦じゃないから」
男「照れることは無い。僕達は夫婦じゃないか」
女「夫婦じゃないって言ったよ? 話聞いて?」
男「結婚を急ぎ過ぎたか。ならば恋人から始めよう」
女「始めない。始まらないから」
男「白無垢とウエディングドレスはどちらを着たいかな?」
女「式場選び? 恋人期間はどうした」
男「おっと、その気になったかな? では、ここにいるクラスメイト諸君に協力願って、模擬結婚式を始めよう」
女「ホームルーム中だよね? もうホームルーム終了でいい人は挙手願います。……え、何で? 誰か手上げてよ!」
男「パッ、パーカパーン、パッ、パーカパーン、パッ、パーカパーカー、パッ、パーカパーン」←(結婚式入場曲)
女「始まらないから。勝手に始めないで」
男「新郎は新婦に愛の口付けを」
女「飛んだよ。かなり飛んだ。何も誓い合ってないから」
男「そうだな。指輪が必要だよな。バイト代三ヶ月分、貯めれるかな?」
女「バイト禁止。校則守ろう」
男「分かった。君の為に校則を変えよう」
女「美化委員の分際で?」
男「生徒会長に、僕はなる!」
女「美化委員長ですらないのに?」
男「美化委員長に、僕はなる!」
女「はい、美化委員の会議の中で話し合って下さいね。そろそろホームルーム終わりたいのですが、いいですか?」
男「プロポーズの答えは?」
女「ただの告白だったよね。愛の告白」
男「して、答えは?」
女「だから、何で公開処刑?」
男「またの名を羞恥プレイ」
女「キモい。怖い。ウザイ。ホームルーム終わります」
男「答えは?」
女「…………………………好き」←(小声)
男「両想い、来たぁーーーーーーーー!」←(大声)
女「だから何で公開処刑……。もーえーわ」