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だから、私は夢をみない!  作者: 砂洲螺樹
第一章 日常と出会い
7/21

いつものメンバー、いつもの夜

あ〜まったく散々な目にあった。駒城との一悶着の後、まっすぐ家に帰る気もせず、意味もなくぶらぶらして時間を潰した。


おかげで、家に着く頃にはすっかり暗くなっていた。近所のスーパーで少し多めに夕食の材料を買って帰る。


家に帰ると、それぞれの楽器を練習している詩織と悠香がいた。まぁ、合鍵を渡したのだからいるかもしれないと思っていたけどね。


悠香が、こちらに気づいて電子楽器のイヤホンを外す。後ろを向いていた詩織もそれを見て気づいたようで、イヤホンを取りこちらを見た。


「こんばんは、お邪魔してるよ」


「煇…また学校をサボっただろ。しょうがない奴だな」


「…夕飯作るけど食べるか?」


「「食べる」」


今日のメニューは『海鮮あんかけ焼きそば』と『豚バラと小松菜の卵炒め』、『春雨スープ』だ。


出来上がったものから、テーブルに並べていく。悠香は調理も、詩織は配膳だけは手伝ってくれた。


食事をしながら詩織と悠香に、今日の出来事を話す。


「うわぁ…噂に違わぬ冷徹ぶりだね」


「どこが冷徹だよ。普通科の拳王様もびっくりの暴の者だったよ」


「なんで私を引き合いに出すんだよ。私は、ちゃんと煇が避けると信じて殴ってるんだぞ。一緒にするな」


「信じて殴るってなんだよ。お前もあいつも私からしたら変わんないね。というか、駒城と詩織の差はおっぱいだけだと思えてきた。ん?そうすると駒城は詩織の上位互換…」


「煇…お前とは一度真剣に話す必要があるようだな」


食事中だから、流石に手を出さないようだ。


「んーでもさ!駒城さんとのことは簡単なんじゃない?」


詩織をからかっていると、悠香がいつものように会話をぶった切ってきた。


「何が簡単なんだ?」


「だって駒城さんから接してくることはないんでしょ?なら、煇くんが関わらなければいいだけだよね?」


「うーん…それは負けたみたいで嫌だな。むしろ、積極的に話しかけて、駒城の嫌がる顔を楽しむぐらいの甲斐性(かいしょう)があってもいいんじゃないか」


「それを甲斐性というかは別として、どうせ煇は駒城が綺麗だからお近づきになりたいだけだろ?このヤリチン野郎」


「…おいちょっと待て、私はまだ清い身体のままだ。ヤリチン野郎は取り消せ!」


「分かった。童貞野郎」


「ぐっ、逆に屈辱的になった」


「じゃあ、童貞くんは駒城さんとどうなりたいの?」


「おい、悠香まで童貞呼ばわりするな…まぁ、出来れば仲良くしたいかな?せっかく同じ学校なんだから」


「ん〜? はっきりしないなぁ…仲がよくない人は他にもたくさんいるよね。なんで駒城さんだけわざわざ仲良くなろうと思ったのかってこと」


なんか圧がすごいんだけど…


「たまたま、顔見知りになったから?」


「…もしかしてワザとごまかしてる?じゃなきゃ、よっぽどの鈍感野郎だね。あ、だから童貞なのか」


「おい、これ以上言うならお前で卒業させてもらうことになるぞ」


「別にいいけど、責任とってもらうよ」


「…さて、夜も遅いしそろそろ解散するか」


「「ヘタレだ」」


「うるさい!声を揃えて言うな…責任なんて言われたら、誠実な男子高校生は尻込みするもんだ。高校生の分際で『安心して責任取るから』とか実現不可能なこと言う奴の方が信用ならない」


「まぁ、どんな屁理屈捏ねようが、煇がヘタレである事実は変わらないな」


「ぐっ…まぁいい、そんなことより選曲は終わったのか?」


これ以上、この話を続けても墓穴を掘るだけなので話題を変える。先週の活動日に、ギャル東條の声に合いそうな曲のリストを渡していた。


「ああ…煇が選んだ中だと、この3曲がいいかな?持ち時間は去年と一緒なら20分くらいだから、ちょうどいいと思うけど」


「…ラブソングばかり選んだな」


「ん〜なんでだろうな?麗華の意見を聞きながら、メンバーが一つずつ選んだらこうなった」


「まぁ…いいけどね。それじゃ、もう弾き始めてるのか?」


「うん、一応…週末ぶっ通しで練習したから、ソロじゃ通して弾けるようにはなったよ。」


「ギターも問題ない」


「なんだ…去年の苦労が噓みたいに順調だな」


「まぁ、二人は経験者だし、私達も2回目だしね。この半年コツコツ練習したのも大きいな」


「そうそう、私達も成長してるってことだね」


「これなら悠香の言う通り、音合わせだけで大した労力はかからないな。ヴァイオリンに集中できそうだ」


「…そんなに練習してるんだから、コンクールにでも出ればいいのに」


「趣味でやってるだけだからな…コンクールに出るとかは考えちゃいないよ。それに…一日数時間の練習だけじゃお話にもならないさ」


「そう?煇のヴァイオリン…私は好きだよ」


「よく言うよ。いつも途中で寝ちゃうくせに」


部活終わりの詩織はほぼ100%寝てるし、悠香も二回に一回は寝てる。最近は気を遣っているのか、レッスン室でヴァイオリンを練習するときは、二人とも席を外してくれることが多い。


「それは…寝ちゃうくらい心地いいってことで」


「はいはい…ありがとよ」


明日の同好会は、悠香のベースの仕上がりを確認して、いる奴らだけでも音合わせするか。


そんな事を考えながら、自由気ままに楽器を弾いて、適当な話しをして夜は更けていった。

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