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だから、私は夢をみない!  作者: 砂洲螺樹
第一章 日常と出会い
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軽音同好会3

週明けの軽音同好会の活動日、他のメンバーと初顔合わせとなった。悠香が連れてきたのは、ロングウェーブの髪をアッシュグレーに染め上げた褐色肌のギャルとサラサラショートでスカートの下にスパッツを履いたボーイッシュな少女だ。


何この対極的なルックスは、アッシュグレーの髪色に褐色肌の女子高生って実在するんだ…AVの企画モノだけで存在すると思ってた。


あと、隣のボーイッシュも狙ったかのようなシュヴァルツシルト領域…こんなの萌え系のコンテンツでしか出会えないと思ってた。


呆然と見つめていると、悠香が口を開く。


「それじゃ、自己紹介から始めようか。私が声かけたからみんな知っているだろうけど、普通科2-2の北部悠香、ベース担当で一応この同好会の部長をやらせてもらってます。じゃあ、時計回りで自己紹介いってみよう」


時計回りだと、ギャル、ボーイッシュ、私の順番か。


「アタシは国際科2-Dの東條麗華(とうじょうれいか)…一応、ボーカルを担当することになってるんで。よろしく」


「僕は国際科1-Aの南野(みなみの)なぎさ、ドラムを担当させてもらうことになってます。よろしくお願いします」


僕っ子…現実にいるんだ。初めて見た。ていうか名前…東西南北揃っちゃったよ。しかも、私の名前…方位って狙っただろう。


「私は音楽科1-IIの方位(ほうい)(ひかり)です。キーボードを担当させていただきます。足を引っ張らないように頑張りますので、よろしくお願いします」


「へぇ、音楽科なのに普通科の同好会に参加するなんて物好きだね。音楽科なら、文化祭は演奏会をやるもんだろ?」


ギャルがそんなことを言ってくる。


「いえ、あれは二年と三年の先輩方が中心にやるので、一年生はよっぽど上手くない限りは裏方だけで参加しないんですよ。それに、去年の文化祭でライブを見させていただいて、ぜひ参加させていただきたいと思いまして」


また聞きの音楽科ネタで、角が立たないように誤魔化す。


「ふーん、音楽科って言うから、もっとお高く止まった奴を想像してたんだけど、思ったより話やすくていい奴そうじゃん。気に入ったよ。ピカちゃんて呼んでいい?」


「え?…はい、どうぞ。東條先輩は面白い方ですね」


「きゃはは、よく言われる。ウケる」


ギャル東條は見た目通り、明け透けな物言いをする。分かりやすくていいけどね。


ギャルは、黙っていても勝手に喋りそうなので、先程から黙ってこっちを見ているボーイッシュ南野に話しかける。


「南野さんはドラムをやられてたんですか?」


「え!…ああ、うん、お父さんがアマチュアだけどバンドやってて…そ、その影響で中学くらいからね。あと、バンドに所属したこともあったから…」


なんか、見た目から、溌剌(はつらつ)とした詩織の親戚みたいな性格を想像してたけど、目を合わせないし、少しどもるし全然似てないな。


「それじゃあ、ドラムをやられて長いのですね。私は専門がヴァイオリンで、キーボードは不慣れなので…ドラムでフォローして下さると助かります」


「いや…僕は下手だから、音楽科なら方位さんのほうが詳しそうだし、色々教えてくれると…嬉しいかな」


顔を赤らめながらそんなことを言うボーイッシュ南野…見た目はボーイッシュなのに、なにこのギャップ…可愛い…もう連れて帰りたいんだけど。


「じゃあ、早速練習を始めますか。光が謙遜してるけど、この子だいたいどの楽器も弾けるからなんか質問があったら光にしてね。私はベースしかわかんないからよろしく」


いきなり一年生(設定)に丸投げする同好会部長ってどうなのよ。まぁ、いいけどね。


ーー練習後、ヴァイオリンを弾いていると、部活を終えた詩織と悠香が一緒に入ってきた。


「で?どうだった?」


「うん、去年より全然いいな。ドラムはどっかのベースみたいにリズム外さないし、音も綺麗に出てたし、抑揚のつけ方もセンスがいい。特に教えることないな」


「なんで、いちいち私をディスるの…シクシク」


いや、事実を言っただけで凹まれても困る。ドラムのボーイッシュ南野は、一言で言えば上手かった。迫力は弱いが抑揚がしっかりついていて、綺麗な音が出ていた。このバンドでやるなら十分合格点だ。


麗華(れいか)の方はどうだ?」


「うーん、声はいいな。ハスキーで重厚感がある。ただ、声を生かすなら、選曲をやり直したほうがいいかもな」


「げ…それじゃ、一から練習しなきゃじゃん」


「次回まで何曲かピックアップしとくから、決まったら家でも練習しとけよ」


「うーん、そうしたいのもやまやまなんだけどね…電子ベースって言っても音が出るじゃん。ウチの壁…煇の部屋と違って薄いから、お父さんが近所迷惑だって…」


「そうか、ほら」


悠香に向かって鍵を投げてやる。


「何これ?」


「俺の部屋の鍵だ。ラインで連絡くれれば、不在の時でも使っていい」


「え!いいな私には?」


「詩織のウチは一軒家だろ。それに、来たきゃ悠香と一緒に来ればいいだけだ」


いつもセットでいるんだから、何の問題もないだろ。


「ぐっ…」


なにを悔しがってるんだ?


「まぁ、どちらにせよ。これでようやくスタートできそうだな。」


「ああ、そうそうバンド名も決めたんだよ」


「え?いつ決めたんだ。聞いてないぞ」


詩織にも秘密だったのか。まぁ、だいたい想像つくけどな。


「言ってないもん。メンバーの名前を見て決めたんだよ」


「なんだよ、もったいぶらずに言えよ」


「へへ…ガールズバンド『ポルトラーノ』!」


「へぇ、羅針儀海図か…悠香にしてはセンスがいいな」


「ん?らしんぎ…?なにそれ?」


「簡単に言えば、方位磁石を効率よく使うために作られた船のための地図だな」


「ふーん、私達の名前て言うのは?」


「東條、西宮、南野、北部の4人ともに方位が入ってるだろ。加えて、これは狙ったんだろうが、私の偽名が方位だ」


「へへへ…実は南野さんは名前とルックスで選んだんだよね。ドラム弾けるのは偶然なんだ」


逆にすごいな…ソレ。あと、悠香が私に負担をかけることに何の躊躇もないことも分かった。もし、ドラム未経験者だったらどうするつもりだったんだ?


しかし、濃いメンツを集めたな。キャラとルックスだけならこのまま芸能活動出来そうだ。意外と悠香は人材を見極める才能があるのかもしれないな。


まぁ、とりあえず軽音同好会は順調にいきそうだな。期間もたっぷりあるし、早めに選曲して練習すればかなりの仕上がりになるはずだ。なんか楽しみになってきたな。

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