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だから、私は夢をみない!  作者: 砂洲螺樹
第一章 日常と出会い
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軽音同好会2

抵抗もむなしく、私は悠香に押し切られる形で女装して軽音同好会に参加することになった。私としては、詩織から制服借りればそれで終わりでもよかったのだが…


週末、悠香はノリノリでウィッグ専門店でウイッグを選び、メイクを教えるという名目で、私の部屋に入り浸った。当然のように昼食を食べ、午後に合流した詩織とともに私をメイクして弄び、夕食まで食べて現在に至る。


こいつら…絶対に楽しんでるだけだろ。昼飯も夕飯も私に作らせてやがって…おっぱいでも揉ませてもらわないと割に合わない。あ、詩織は胸じゃなくて尻の方がいいかな。


そんなことを思いながら鏡を見る。学校では男子の指定制服を着ているし、メガネをかけている。そのため、私服で眼鏡を外すだけで、だいぶ雰囲気が変わることは分かってた。


だけど…ウィッグをつけて、軽くメイクをするともはや別人だな。悲しいことに、パンツでも降ろさない限り、男と言っても信じてもらえそうもない。


そして、設定を思い出す。私は音楽科の新入生で方位(ほうい)(ひかり)。ヴァイオリンを専攻しており、楽器はなんでも弾ける。詩織と悠香の中学の後輩で、メンバー合わせの友情出演だ。


「設定雑過ぎないか?絶対にボロがでるぞ…これ」


いくら音楽科と他の科の交流が乏しくて、あんまり情報が入ってこないにしても雑すぎるだろ。それに、来年はどうするつもりなんだろ?


「大丈夫だと思うよ。一人はあまり人付き合いが得意じゃないし、もう一人は人に興味持つ子じゃないから…それに煇の本気出した時の女声は下手な女の子より、女の子してるし、ヴァイオリンの腕は実際に音楽科にいても遜色ないくらいだしね」


「しかし、私服でも十分女の子ぽかったけど、ウィッグ付けて化粧すると文字通り化けるな…付属御三家が四天王になってもおかしくない」


「御三家の一人にそう言われるなんて光栄だね。残念ながら全く嬉しくないけどね」


「…二人で並んでるとアイドルユニットって言われても、信じちゃいそうだよ。」


「さりげなく自分を含めないところが謙虚だな。何度も言うが、悠香は十分に可愛いよ。私から見たら二人がアイドルユニット組んでてもおかしくないとすら思う。それにさ、私や詩織にない武器が悠香にはあるだろう?」


「何度も言うけど、そう言うことは顔を見ながら言おうね。胸を見ながら言われても全然嬉しくないよ。それと、後ろの拳王さまがお怒りになられてるよ」


振り向くと、般若のような顔をした詩織がゆら〜っと立ち上がっていた。


「なぁ、煇…私にないものって何かな?」


「いや…詩織には引き締まった脚とか…形のいいお尻とか色々いいところがあるよ。むしろ小さい方がいいという舌切り雀的な教訓もあるような、ないような…ぶっ」


殴られた。さすが拳王さま…理不尽だぜ。


閑話休題


「まぁ、設定云々はともかく他にも問題はあるな。煇の女装がハマりすぎてる。」


「…私的には問題大ありだけど、私を女性に見せるという目的は達成してるんじゃないか?」


「ああ…そうか」


詩織の意味ありげな言葉に、悠香が何か気付いたように言う。


「ん?なんか問題あるのか?」


「煇が目立ちすぎるってことだね」


「そう…綺麗すぎて逆に悪目立ちしてる。こんなに綺麗なら…音楽科の新入生だったとしても多少は話題になっているはずだ」


「でも、全く話題になってない…たしかに問題かも」


「おい…いつまで続けるんだ。この三文芝居」


途中で気づいたが、ただ単に私を凹ましたいだけだろ。


「なんだ、ノリが悪いな。でも、実際にあり得ることだろ」


「まぁ、どちらかというとこれから話題にならないように気をつけなきゃね。そういう意味じゃ、あの二人はそういう機微に疎いから大丈夫だと思うけど、レッスン室から出ることもあるだろうし、外部の人にも注意しなきゃね」


「あ〜その辺は考えてもキリがないだろ。とりあえず二人にバレないように過ごせばいいんだろ?私はまだ知らないからなんとも言えないけど…悠香の見立てでは大丈夫なんだろ?なら、いいんじゃないか」


なんかあったら、その場その場で解決していくしかない。むしろ、女装云々はまるっきり蛇足で、文化祭でバンドやるのが目的だろうに…どうしてこうなった?

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