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僕は途方にくれる

作者: フランク太宰

僕は途方にくれる


アラームがけたたましく、鳴る。

朝日がカーテンの隙間、越しに僕の瞼を照らす。僕にとって朝日は大地への恵でなく13階段を照らす、暗闇の証明のように思える。

上半身を起こすと目の前の床に椎ノ木の絵とポスカルが数本転がっている。

彼女が残していった物は、この絵と僕の心だ。僕は何故、彼女が椎ノ木の絵を描いたのかは分からない。正直、彼女の事を僕は最後までなにも理解できなかった。

虚ろで、よく涙を流す女。そんな彼女に何故、僕は惚れたのか、今となってはそれすらも思い出せない。

とりあえずベットの上に座ったまま、僕は枕元に置いてある、メンソールのタバコを吸った。彼女の置いていった、タバコだ。普段はメンソールなんて吸わない。

メンソールのタバコというのは、何というか、僕のなかでは、"森で孤独に生きる老人の吸う空気"を思わせる。

少し気取りすぎか?

しかたない、僕は小説家なのだから,いちよ。そう、そして彼女はいちよ画家だった。

お互い金を稼げない人間だ。でも悪くはないだろ。お互い正直には生きてきたんだ。

あぁ頭がいたい、僕は台所まで行き、棚から鎮痛剤を出そうとした。その横には彼女の安定剤が置いてあった。

結局、薬は彼女を救えなかった、僕と同じように。

僕は彼女の安定剤を貪り飲んだ。

別になにも変わらない、相変わらず日の光は僕を攻め立て、殺しにかかってくる。

しかし、 僕の体は汗ばんできた。薬のせいか?

悪夢を見たせいか?

どんな悪夢?

夢の中の出来事は上手く説明できない。

簡単に言えば僕の目の前で水爆が爆発する夢、僕の全ては爆風で吹き飛んだ、今まで出会った全てのものが吹き飛んだ、

彼女の顔も焼け爛れ、骸骨になった。

抑えきれない汗が僕から流れ落ちる。

僕は咄嗟に無意識に千鳥足で風呂場の扉を開けた。

風呂場では浴槽に裸の女が手首から血を流し、死んでいる。


昨日の夜、これを見たときは、僕の心は"惨劇"を受け入れられなかった。

勿論、脈のあるなしは確認したさ、でも、血はかよっていず、体はすでに冷たかった。

警察を呼ぶきも起きない。僕はその場にへ垂れ込み、涙を流す、昨日は涙も出なかった。


今、 僕は涙を流しながら怒りに震える。

この世界に、太陽に、大勢の人々に耐え難い怨みを抱いている。そして僕自信に大きな失望を感じる。

目の前に落ちている、彼女を殺した、血のついた包丁を首元にあてる。しかし、生への渇望が手を動かさない。


所詮、僕は意気地無しだ。

僕は彼女の死体を見ながら"途方にくれる"




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― 新着の感想 ―
[良い点] 映画のワンシーンのような小説だと感じました。上手く言い表せませんが、文章表現が安定しているせいか、ある意味で安心して読める作品でした。 [気になる点] フランク太宰さんの他の作品についても…
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