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33:最後の旅路 ~逢魔決戦~

ワタルよ、今こそ君が輝く時だ。

ワタル、アエナ、ミアそしてハズキの目の前に立ちはだかる巨神ノアは魔王さえも取り込み、その体からは毒々しい体液が放出されていた。そのせいか、ワタルたちの太刀筋は効いているようには見えなかった。アッシュとザギャもアークライン防衛に必死になって雑兵を倒していくが彼らも体力の限界が来ていた。


 逆にノアの力が衰えることはなく、ワタルの持つメビウスリングを奪い取ろうと必死になっていた。ミアやアエナはワタルに彼を近づけないように前線で剣や魔法を使用して牽制する。ハズキはノアの大きく破壊的な攻撃をかわすときの防御に徹していた。


「ミア、回復魔法とかはあったりしない?」


アエナはミアに少し苛立ちながら催促する。


「ごめんなさい。 私にそういうのは持ち合わせていないわ。 ワタル、何か秘策は?」


「ないよ、そんなの...。正面突破するしかない! 彼の弱点さえ分かればいいんだけど」


「弱点ねえ、多分明らかにあの胸についている大きな目だろ。まずあそこに強力な技を仕掛けるか?」


「そうだね。アエナ!」


ワタルはアエナに呼びかけるとアエナは意図をくみ取り、共に走り出した。ワタルは銃でノアの攻撃を回避しつつ、アエナと合流した。ともに剣を抜き、二人の剣が重なりクロスさせるように大きく振りかぶった。



「「闇には光を! リヒト・ゴッドラッヘ!!」」


剣劇を放つとノアは大きく怯みだした。やはりあの目が弱点なのだろう。それに加えてマ・ゾールが取り込まれているから光に弱い。ノアは怒り、苦しみ、そして狂った。悪魔のような巨神はしっぽを生やし、彼らを薙ぎ払った。ハズキがリングの力を利用しシールドの展開を柔らかくしてワタルとアエナを包み込んだ。


「ハズキ、ありがとう。でもあまり使いすぎたら人に戻れなくなる可能性も...」


「大丈夫だ。俺たち兄妹の絆を信じろ。きっと何とかなる。」


「何とかなるじゃないんだよ!! 君の体のことだ。ちゃんとした体で家に帰ってほしいんだ」


「あ? それはお前も」

「とにかく、今は、僕たちが次に仕掛ける間に二人は時間を稼いでほしい」


ワタルは土壇場になっても何とか四人の意志が崩れないように指示を忘れなかった。内心、焦りや悩みもあったがそう言ってるわけにも行かない。次々と敵は仕掛けてくる。自分たちの未来を掴むためにもここで死ぬわけにはいかない。その意思が伝わったのか、ミアとハズキは彼の言う通り時間を稼いでいた。ワタルは少し、横になった。


「ワタル、これが終わったらどうするつもりなの? ちゃんと地球に帰るのよね?」


「……」


ワタルは空を見上げた後、アエナにそっと笑いかけた。


「なんとなく、分かるんだよね。新たな選択をするときには犠牲がいるって…御堂君に一緒に帰るって言っちゃったのになぁ」


から笑いするワタルに言葉も出ないアエナ。そっと手を重ね、口づけをした。


「約束して…。絶対帰ってきて! みんなでお祝いする約束してるんだから」


ワタルはびっくりしすぎて気絶しかけたがそれどころではなかった。気絶で空を見上げた時に空には大艦隊が押し寄せてきた。ワタルの中に暗雲が立ち込めた。だが、それは希望に変わった。


『銀河連邦軍の名において、未来を託された勇者一行に加担せよ! 楽園に希望を!』


アッシュ達もそれに気づいた。連邦軍兵たちはイレーナ長官の命を受け一斉降下。そして、その中には見たことのある仲間もいた。彼女はアッシュに近づいた。


「アッシュ・ゴ・ルドー!! 死にさらせワレェ!」


「ゲッ!? ナーレ? 」


ナーレ・ザーラはイレーナの看病によって完全回復し、連邦軍艦に乗り、このエデムへと戻ってきたのである。斧も新調されており、彼に対して怒りの感情はあるもののどこか安ど感があるようだ。


「アッシュてめえ 生きてやがったのか。 迷惑かけやがって」


「お前の方こそ、無事でよかった。」


アッシュは膝から崩れ落ちた。それにすかさずデスクローチが攻撃を仕掛けるがナーレが新調した斧で圧倒した。アッシュは我に返り、いつもの調子に戻った。


「どうやら...感は鈍ってねえみたいだな。」


「こんなとこでへこたれんなよ? キャプテンさんよぉ?」


ナーレがアッシュとザギャの二人を回復させて二人と共に行動しようとするがアッシュは彼女にワタルたちのいる方向を指さした。


「俺らよりあいつらを支援してやってくれ。 ここは俺たちがなんとかする。連中もいるからな」


ナーレは少し名残惜しい顔をしつつもアッシュの言う通り、ワタルたちの元へ向かった。ワタルたちも彼女に気づき、温かく迎えた。


「やってんねぇ。ワタル、アエナ」


「ど、どういう意味だよ!!」


「べっつにぃ~? ま、回復させたらまたあいつんとこもどるわ。」


「ありがとう、ナーレ。生きててくれて」


「ヨントゥムの狂戦士をなめんじゃないわよ」


そういうと立ち去るとアエナとワタルはミアたちと合流しナーレからもらった回復薬を二人に渡した。


「だいぶ時間稼いだが、もういいか?」


「もう十分よ。回復もさせてもらえたし。ワタル、行くわよ!」



二人は再び巨神に立ち向かい、強大な技『リヒト・ゴッドラッヘ』を食らわせた。ノアはさらに怯んでついに倒れた。言葉はなくただ獣の唸り声だけが響いていた。


「ようやく、終わりか? リングは取り返させてもらうぞ。」



ハズキがリングに手を出そうとしたその時、ノアの最後の力で拳を強く握りしめていた。ハズキは無理やり外そうとしても全く外れなかった。アエナは非情にもその腕ごと切り落とした。ノアは弱弱しい断末魔をあげた後、ガクッと頭を落とした。拳は開かれ、ようやくすべてのメビウスリングがそろったのである。デスクローチ軍も威勢よく戦っていたがもはや主人もいなくなり、抵抗せずに自死を選んだ。


「勇者、ワタル。 よく、ここまでたどり着き、指輪を手に入れましたね。本当にお疲れ様です。ですが、ここからが私の役目です。私と共に来ていただけますか? 」


ミアが手を出すとワタルは覚悟を決めて彼女の手を取った。アエナは少し不安そうに見つめているがワタルは終始安心させる笑顔を絶やさない。ミアの一声で12個のリングは宙を舞い、円状を描くとそこにゲートが生まれて二人はゲートの中へ入った。

冴えないワタルの大きな成長。それを目撃せよ。



次回「最後の旅路 ~決断~」

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