表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/76

32:サエナイワタルは勇者らしい

総力戦が始まる!

 ノアに押しつぶされそうになっているワタルを助け出したのはミアから力を受け取ったハズキだった。彼の盾はビームがいつもよりも指のある方向に鋭利に長く伸びていた。


「助けが必要か? 勇者さんよぉ」


「うん、ちょっとだけ」


「何人来ても同じだ。お前を殺し、器としての使命を果たしてもらうよ」


ノアは胸にできた目から破滅の光を彼らに浴びせた。二人は一直線に飛んでくる光をよけてその弱点となりそうな大きな目に攻撃した。ノアは怯み、立てひざをついた。


「僕はきみの道具じゃない。未来をつかみ取る、勇者だ!!」


ノアは立ち上がり、その鋭い爪で二人をかく乱して暴れまわった。ワタルとハズキも落ち着いて応戦した。ワタルは右から銃を使って攻撃し、ハズキは指輪の力を少し使って手裏剣状のエネルギーを放った。だが、ノアの皮膚は固く、ぶ厚く、どの攻撃をも跳ね返した。


「ちょこまかとうるさい矮小な生物が、神に等しい私に刃を突き立てられると思うな!!」


「お前が何者だろうと俺は知らねえ。だが、これ以上好きにさせられてたまるか」


ワタルは10個のリングを眺め、ハズキと同じようなことができるのだろうかと考えていると、ノアはワタルに近づき、左腕を掴んだ。ノアはワタルの持つリングの一つを奪い、ワタルの体内に腕を入れ込んだ。痛みはなかったものの、体内をまさぐられている感覚はあり、驚きと気持ち悪さで叫んだ。


「うわぁ!? ああ...おうぇええええああああ!?」


「いるんだろ? 君の中に眠る魔王の魂が!!」


「あのトンデモ野郎をまた呼び起こすつもりか!?」



すると、ノアは目当てのものを掴んだのか、それをぐっとつかみ取り、思いっきり引き抜いた。ワタルは気を失って人形のように倒れた。ハズキはワタルの元に駆けつけると少しして息を吹き返した。


「ゲホッ、ゴgッゲ...」


「お前、ゴキブリ並みにしぶといな。とりあえずしゃべらずないで休んどけ! というか、あいつら何に手こずってたんだ。」



ノアの横にはリングと共に、大きな闇の渦が“彼”の形をかたどり始めていた。

 一方、アエナ達は叩いても湧いて出てくるゼブ達とデスクローチに苦戦していた。すべてのカギとなるミアを守るために必死でいた。だが、ミアはワタルの元へと向かいたがっていた。


「早く、ワタルの元へ行きましょう!」


「行きたいが、お前だけじゃねえ! 帰るための船も守らなきゃいけねえだろうが!」


「そうよ、ここで船を守らないと、ワタルたちも、当然私たちも帰れないじゃない」


そういうとザギャは覚悟を決めてミアとアエナの背中を押した。


「行け。 ワタルを救えるの、お前たち二人...だと思う。」


「いまだに軍勢は沸き散らしてんだぞ! 正気か!? 船長命令だ、全員で拠点を絶対死守だ」


「断固、拒否する。 俺は、船絶対守る! 大丈夫、当てはある。キャプテンも俺の舵を信じてるだろ?」


「本当だな? ザギャ」


「キャプテンに嘘つかない! ついたことがない。」



「わかった。 計画変更、お二人さん、先にワタルの元へ行け! ここは俺たちで時間を稼ぐ! 欲しいもんは自分で手に入れろ! 」



ミアとアエナはうなずき、背中合わせになるザギャとアッシュを見送り、走り出した。


「はぁ...」


「どうした? 役者はもう終わりか?」


「ゆっくり話すのは身が持たん」


「ほんとは饒舌で、毒舌で、女癖の悪いからな」


「お前が変な連中連れてきたから収集つかんくなったんだろうが! だいたい、ビーコンは俺の船だ。この戦いのせいでいたく傷ついたんだ、後でまとめてしっかり請求してやるからな!」


「今までついてきてくれてありがとな」


「キモい、キザい、ナルシスト! お礼はいらない。現金で示せ」


二人は文句を言いあいながらも湧いて出てくる雑兵を蹴散らしていった。

それを心配しそうに見ながらもアエナとミアはワタルたちが戦っているところまで向かった。そこにはアエナにとっては見慣れたあの姿が見えた。


「ま、マ・ゾール!?」


ミアが首をかしげてアエナの顔を覗き込むとアエナは真剣なまなざしで説明しだした。


「私たちの世界を闇で支配しようとした大魔王よ。 ワタルと倒したのに...やっぱり彼の目の中に残骸が残っていたのね。」


ワタルとハズキはマ・ゾールの形をしたものとノアを前に内心焦燥していた。特にワタルは恐れていたことが起きてしまったと思い悩んでいた。マ・ゾールの分身体は形を取り戻し、目を開いた。


「おお、魔王よ。 君はいつぞやの...私に力を貸せ。君だけの力が...」


そういうと、リングを置き去りにして闇の渦がノアを巻き込み、口の中へと取り込まれていった。するとまたノアの形状が変化し、今度は禍々しい羽が生えてきた。以前の高潔で細身の彼は無く、ただ歪な神が在った。リングをワタルが取り返そうとするとノアは大きな羽で跳ね返した。言葉はなく、ただ、言葉にならない鳴き声だった。


「ggrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrlOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」



「完全に力に飲み込まれています! ワタル、私と共に戦いなさい」


「君と? 最近であったばかりじゃないか」


「そうよ! ワタル、私と一緒に戦って! まずはあのリングを奪うために羽をもぎ取るわよ」


「いいえ! ワタルは私と絆を深めるべきです。世界を救うならその方法しかありません」


二人が言い合いをしているとノアはリングを左腕に隠し持ち、またも胸にある大きな目から光を放った。ハズキは二人をどかせ、先頭に立ちシールドを展開させた」


「ここでハーレムコントしてる場合か! どっちと戦っても一緒だろうが! つーか立ちらか二人じゃなくて全員でいかねえとやべえだろ! 佐江内! お前が大将だろ、ボーっとしてんな!」


「ご、ごめん。 二人とも、ハズキの言う通りここは全員で戦おう。」


「あなたがそういうなら...」


「ワタルが、ワタルらしくあるために、あなたの平和を取り戻す! それが私の願い!」


「僕が、僕らしく...。なら今は! 勇者らしくあるために戦う! それが今の僕だから!」


ワタル、ハズキ、アエナ、ミアの四人がそれぞれの思いを胸に、未来への最終決戦が幕を開けた!

冴えないワタルは自分らしくあるため、未来のために戦う!

次回「最後の旅路 ~逢魔決戦~」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ