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30:失意

ワタルはどうにもならない運命を背負わされ、それを全うすべきだと世界樹の守り人に言われる。

誰もが彼に注目する。

火を持たされたワタル。だが、彼は真に受けずに地面に捨てた。


「こんなことやったって意味ないじゃないか。僕は君たちの言う神官様じゃない、ただの人間なんだ。もう、終わりにしよう。」


「あなたは神権を放棄するのですか? すべての旅を無駄にするのですか? 我々の未来を救ってはもらえないのですか?」


「それは君たちの妄信だろ! 僕を過信しすぎなんだよ...。みんな揃ってバカばかりだ! 僕だけが救える?なにを!? 何ができる? 救わなければ地球やほかの世界も危ないそんなの今までの旅を見ていればわかるよ! でも、みんなが必死に生きているのを知った分、死んだ人も多い。…何も思わないわけがない。もう疲れた。勝手にしてくれ」



世界樹の守り人たちは全員暗い表情になり、世界の終わりを嘆いた。そして案内人は失意のふちにいるワタルの首を絞めた。


「そうですか、そうですか!! なんてお前は無責任なんだ。本当の神官のくせに何もしてくれない。世界がどうなっても知らんぷり。あれだけ、必死にもがいた旅さえもお前のその言葉のせいで無意味になった。これは、浄化せねばなるまい。浄化せねばなるまい!! 時渡りの儀はやはり我々で行うしかない。やはり、許された我々のみが新世界にふさわしい。」


ワタルは無気力に首を絞められたまま新たに建てられた十字架に張り付けられようとしていた。アエナ達は当然案内人に刃を向けるが、彼を守るように世界樹の守り人たちが何十、何百の壁となって現れた。彼らは手に持っていた虫のような見た目の仮面を被ると白い様相のデスクローチとしてアエナ達を苦しめた。


「こいつら、バラッカスとグルだったってことなの?」


「違うな、バラッカスがこいつらを洗脳して戦闘兵として使役していたに違いない。」


守り人の壁を乗り越えてでも彼らが炎に焼かれるのを阻止しなければならない。それを一番、いや、そもそもワタルの言葉に苛立ち感じていたのは他でもない葉月だった。彼はアエナや、アッシュを置いて盾で仮面によって強化された世界樹の守り人をいとも簡単に弾き飛ばしていきワタルを連れていく案内役だった守り人を殴り飛ばした。


「追い、、ついた!!」


「御堂、くん。」


「おまえ、ふざけてんのか!! 俺にかけた言葉は嘘だったのか!? あ?」


「お前だけが頑張ってんじゃねえ。俺だって必死にあがいて、あがいて、あがきまくってんだよ。恥ずかしいくらいにな。おまえだけ被害者面してんじゃねえよ! だったらお前だってあがける力くらいあんだろ! それが“勇者”なんだろうが!!」


「...っさいんだよ」


「あ?」


「うるさいんだよ! 」


そういうと、ワタルはハズキと息を合わせたように立ち上がり、襲い掛かろうとしていた世界樹の守り人をまた殴りかかった。


「な...なんだ?」


「引っ掛かったね。」


「ああ。おまえに芝居を打ってやった。妹たちは返してもらうぜ。」


そういうと、後続のアエナ達がミズキとミアを十字架からほどいてやっていた。

アエナ達はハズキに少し文句を垂れながらもミズキを抱き寄せている姿を見てホッとしていた。


「ミズキ、迎えに来るの遅くなってごめんな」


「バカ兄っ! 力強いし、抱き着くとかキモい...」


「それでこそ、俺の妹だ...」


「まったく、二人とも俺より無茶な作戦たてやがるぜ。いつ思いついたんだよ」


「まあ、二人で話す機会があったから、なんとなくの筋道だけだけどね。」


「なんにせよ、これで形勢逆転ね。」


ミアとミズキの二人の巫女を迎え、ワタルたちは新たに狂信者である世界樹の守り人たちに立ち向かう形で前を見据えていた。案内役を担っていた守り人は顔を赤らめワタルたちに喚き散らした。


「神官自ら、我ら樹教徒の教えに背くつもりかーーーー!!」


「背くも何も...。僕は、いや、僕たちは運命さだめも未来もすべてつかみ取るためにここに来たんだ! 君たちにとやかく言われる覚えはない!! ここで! すべてを断ち切らせてもらう!」


ミアはワタルの言葉を聞いて微笑みながらリングを渡してきた。


「ワタル、前に私を守ってくれたよね? ありがとう。  これからはあなたが、いいえ、あなた達が未来を決める番。巫女として最後のメビウスリングを神官としてではなく、未来を勝ち取らんとする勇者に捧げます。未来を、託します...」


「ゼブ達! 反逆者を皆浄火させよ! 一人残らず、輪廻の輪からも敷かれた運命からも逃がすなぁぁ!!そして、リングを奪い取れ!!」


「「「「「「「 はい! 偉大なるゼブ様 」」」」」」」



守り人であるゼブ達は長いたいまつを構え、ワタルたちを囲んだ。アッシュは全員に戦闘への掛け声をかけた。


「てめえら、勇者様の言う通り、未来を奪い取れんのか?」



「ああ」


「はい!」


「もちろんよ」


「で、できる!」


「そこは! “アイアイキャプテン”でしょうがぁ!!」


少し、彼らの中で笑みがこぼれる。だが、掛け声をしていると無視してゼブ達は襲い掛かってくる。だが、アッシュ、ワタルの銃撃、アエナの剣撃、ハズキの盾裁き、ザギャの腰の抜けた三叉檄。それぞれが息の合った行動で少しゼブ達を黙らせた。


「ちょっとお静かにお願いします! で、お前ら。本当に目の前のお宝奪い取れんだろうなぁ!?」


「「「「「アイアイキャプテン!!」」」」」


「場は温めといたぜワタル、合図出せ。お前が殿しんがりだ。」


「出撃ーーーーーーーっ!?」


若干締まらなかったものの、彼らは多くのゼブを相手に善戦していく。ビーコン海賊団の団結は前より少し良くなっていた。前へ、前へ、そして託された未来を確実のものにするために、今は闘うしかないのだ。


「戦いでしか、分かり合えない野蛮な種族め! 罪を償うのだ!!」


「合わねえもんは合わねえでぶつかり合うしかねえんだよ!」


「僕と御堂君がそうだったように、お互いの価値をぶつけあったから分かり合えたんだ。君たちのように押し付ける人たちには一生分からない!」


「ワタルがいたから今の私がいる。これからの未来を私自身の手で作り上げるために、ワタルに負けないくらいの未来を、王国を復活させてみせる!」


「俺は、過去の清算ってところかな。お前たちと出会ったから前へ進めた、かもしれない。ジークフロイド...いや父親のような自由な男に、俺はなってみせる!」


それぞれの思いが楽園に響き渡る。ゼブ達はどんどんと倒されていく。だが、ワタルたちに暗雲が立ち込める。水平線の奥から二つの人影が写り始めていた。一つは異様なほど大きく、二つ目はワタルたちと同じくらいだった。


「ゼブ、、この状況はなんだ?」


「ノア? 君は、禁忌の儀でオラクルとなったのか?」


「どうなっていると、聞いているんだ」


「神官が我々に背きました。 浄火を試みております。」


そうかというと、話を聞いていたゼブを羽虫のように握りつぶした。ワタルたちは一瞬にして彼の姿に恐怖した。


「ノア...」


「アッシュ・ゴ・ルドーーーーーー! ワタルゥーーーーーーーーーーーーー!」



もはや、獣の咆哮のようであった。そして、アルマデスでやってのけた破滅の光線を浴びせた。ハズキが盾を出し、全員が守られるように光の壁を作っていた。


「ザギャ! 船に二人を!」


「もう やってる! 」


「船は絶対守れよ! ハズキ!」


「ミズキの前で倒れるわけがねえ! 死ぬわけにもいかねえ!!」


ゼブの大半を失いつつもノアがグン・グニールでひっそりと運んできた少な目のデスクローチ軍を総動員して戦いに挑んでいった。これくらいなら脅威ではないとワタルが剣と銃をうまく使い分けて掃討していった。アエナ達も残党狩りをしていた。そしてワタルはノアと対峙した。


「ワタル、考え直してはくれないかい? 僕たちの平和は君たちの平和でもあるんだ。それは分かっているよね?」


「君たちと僕たちの思い描く未来は少し違うと思う。君たちは君たちの想う通りに、それこそ敷かれた運命の輪に縛り付けたままにするんだろうけど、これからは僕たちが自分自身の人生という旅の舵を握る。そうあり続けたい。」


「そうか、どうしても僕のいうことは聞いてくれないんだね。」


「ノア、僕は君に絶対殺されない! 死んでたまるか!」


「そう、だね。殺すのは僕じゃない...」


そして光線に近い銃声が鳴った。ノアの後ろに立つ異様なほど筋肉の発達したデスクローチがワタルの胸部を撃ったのだった。ワタルは少し吹き飛ばされた後、地面にたたきつけられた。楽園の空気は一気に凍り付いた。そしてノアはワタルを踏みつけて顔を近づけてささやいた。


「殺すのは、僕の父さん。だからね」




ワタルが死んだ...!?

最期の旅を彼はどうしていくのか...

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