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O22:ザギの情報屋①

ワタルがウンディーネにいた頃、同じく、アエナ・マクスウェルやナーレは竜人の住まうザギという惑星に倒れていた。突然のことに驚きつつ、彼女たちは独自に動いていくのであった。

ワタルたちがウンディーネからエデムへと向かおうとしている頃、アエナ達はザギという惑星に飛ばされていた。一番初めに起きたのはナーレだった。彼女が仲間を探し回っていると、彼女の目の前には竜人族の住む街並みが広がっていた。竜人族は名の通り竜でありながら人のような容姿で生活している種族である。すると彼女の眼には竜人に捕まっているアエナの姿があった。


「アエナ嬢! ちょっと待て!!」


アエナを追いかけるため竜人の街へ駆けつけるナーレだったが、それを見つけて薄緑色の肌をした腕がナーレの体を抑えた。


「ドゥージャ! てめえ!!」


「シッ! せめてあのお嬢さんを助けてからでも俺は殺せるだろ?」


ドゥージャ・ゼントはナーレの口をふさぎ、竜人たちがこちらに気づかれないように物陰に隠れた。ナーレは暴れまわるとそれ以上に腕ずくで彼女を抑えた。竜人は物騒な槍を持ちながらあたりをうろうろと警戒していた。それらが去るとゼントの腕が少し緩まった。その隙をついてナーレが彼の腕に噛みついた。ナーレは低姿勢で大斧であるベアトリクスを構えて睨みつけた。


「てめえ、すました顔で裏切りやがって!」


小声で小競り合いを仕掛けるナーレに対してゼント飄々としながらなだめた。彼の顔立ちはいつもよりも鋭く何かを警戒しているようだった。


「裏切ったんじゃない。俺は金でしか動いてないって言っただろ。でもお前たちには手心は加えていたつもりなんだかなぁ。」


「……言わせておけば!!」


ナーレの低い身長をあざ笑うかのように片手でナーレの頭を押さえて、腕を振り回して怒りに任せて殺そうとする彼女を制御していた。


「まあ聞けって言ってんだろ。アエナは俺と契約してわざと情報屋に捕まった。情報屋に会うためには手っ取り早いし、それと材料さえあつまりゃ……。」


「どうする気なんだよ。」


「どうするって、舟をもらって逃げるんだよ。」


「話を聞いていた私がバカだったよ。助けに行く。」


「おい、無茶だ! なにも俺一人で逃げるって話じゃないぜ。」


「どうせ逃げるだろ。そんな性格だって分かってるんだ。私ゃ一人で行くよ。」


「迎えに行ってどうするんだ?」

ナーレは単独で竜人族に向かおうとするがその雄姿を引き留めたのはゼントではなく、突如として現れたバッカーノだった。


「おめえ、ジェノサイドの四つ腕! 」


「バッカーノ将軍と呼べ、小童。」


「誰が小童だ! こちとらナーレ・ザーラ様だぞ!」


「知るか! ……で、あの女を迎えてどうするというのだ。」


「…キャプテンと、ワタルと合流する。」


「一人じゃどうにもならん。」


「じゃあどうすりゃ「俺も一緒に行ってやろう。」


ナーレに対して覆いかぶさるように突然、意外な提案してきた。その提案に若干引き気味なナーレは少し間をおいて呟いた。


「何言ってんだ?」


「あの女には借りがある。武人として恥ずべき大きな借りが!」


 それはナーレが起きるずっと前の事、アエナは単独でこの星を探索していた。その最中、彼女はバッカーノとすでに出会っていたのである。バッカーノは地上に落ちたところが悪く、がれきの下に埋まっていた。それを偶然にもアエナは見つけてしまったのである。そしてバッカーノ自身もアエナの視線に気づいた。


「お前はビーコンの勇者だったな。武人として恥ずかしいことを言うが、俺はもうこんな状態だ、今なら殺すのも容易だぞ。どうする?」


「そう…ね。でも、今あなたを殺しても意味がない。」


そういうとアエナはがれきを取り除いていき、バッカーノを助けた。バッカーノは助けられてもなお、しかめっ面をしていた。


「敵は利用できるだけ利用する。それが私のやり方よ。それにあんな状態のあなたを殺したら勇者としての名が廃るだけ…。」


「他のやつらにもそうやって手心を加えていたのか?」


「ワタルにはそんなこと…!! いえ、そう口走った時点で私は最低よね。確かに、手心よ。でもあなたとワタルとは全然違う。あなたへの手心は同じ闘う者としての誇りからよ。」


「フン、面白い。この借りは戦いにて返そう。今は手心に免じて少し手を貸してやる。俺は、ジェノサイドきっての武人、バッカーノ将軍! 」


「アエナ・マクスウェル、アエナでいいわ。」


 アエナとバッカーノは干渉することなくお互いにこの惑星を探索していた。そして、探索の結果この星が竜人の住まう星、ザギだと判明した。だが竜人は二人を温かく迎え入れてはくれていなかった。竜人の星と分かったとは言え、それ以上の情報はなかった。


「ワタルとも連絡つかないし、一度ズァークに戻った方がいいかしら。アッシュやナーレにも見つからないし…。」


「こちらもバラッカス様が見つからなかった。手掛かりがあればよいのだが…」


手をこまねいているとアエナの目の前に女の子の姿が見えていた。その子は淡白く光を放ち、純白な服を着ていた。


「ミアちゃん…!?」


「サル巫女か…!? 追いかけろ、アエナ・マクスウェル!」


 ミアともミズキとも見分けのつかない少女は二人を案内するように手招きしながらどこかへと連れていく。無心でついて行くと、頭の中で声が響きわたって聞こえてきた。


『竜鋼石…。希望の箱舟…。指輪の神官が鍵になる……。」


とぎれとぎれで訳の分からない言葉を発した後、大きな城を指さした。


「ここからはあなたの運命に従って。 …兄を、よろしくお願いします。」


「分かったわ、ミア…いいえ、ミズキちゃんだったわね。」


ミズキはアエナの言葉を聞いて微笑むとスンといなくなってしまった。彼女がいた先にはアエナがよく知っている人物、ドゥージャ・ゼントがいた。それを先に見つけ、声をかけたのはバッカーノだった。


「同士よ! ここにいるとは中々の奇跡。して、何をしているんだ?」


ゼントは不審な笑みを浮かべひっそりと人差し指を口に当てた。


「喜ばしいのは結構だが、今は少し黙ってろ。俺は今忙しい。」


アエナは彼の飄々とした態度に腹を立て、剣を振りかざし剣先を腹部に突き立てた。


「あんなことしてよくそんな冷静でいられるわね。」


「殺さない方が得策と思うぜ。そっちだって船は欲しいだろ?」


「減らず口を閉じた方がいいわよ、間違って口を割くかもしれないから。」


「情報屋から竜鋼石で作られた船の場所を聞けばいい!」


口元に当てられた剣を見て焦って早口に発した言葉はアエナには初めての言葉ではなかった。竜鋼石りゅうこうせき、そして船。それがミズキの言っていた箱舟なのかもしれないとアエナは思い、ゼントの指示に渋々従い、情報屋のいる城に捕虜として潜入したのである。

「情報屋って?」


「イェンロン…。あいつならきっと俺の名を出せばなんでも話してくれるはずだ。」

「船の話は信用できそうね。」


「ああ、俺はここの星の出だ。俺とお前の仲だからタダで言ってやったんだぜ?」


「どうにせよ、行かなければ始まらないようね。あなたの処遇は情報が嘘だった時でも遅くはないわね。」


バッカーノがアエナのいきさつの話を聞き終えるとナーレはアエナを心配した


「まったく、すぐ一人で首を突っ込んじまうんだよなぁ…。」


ゼントはアエナの行動を鼻で笑うように話した。


「弱いし、すぐ信じて口車に乗せられる。あんなに使いやすいカモは初めてだよ。だが、あいつじゃ犬死もありあえるからなぁ。お前らも行って来いよ。報酬も出してやるよ。どうせ救出しに行くんだろ?」


彼の言葉に二人は真顔で答えた。


「私は彼女が弱いから助けに行くんじゃないよ。助けたいと思ったから、助ける。あの子もあそこで頑張ってんだ。加戦しなきゃ仲間じゃねえ。」


「俺はこの小童のように仲間意識はない。だが、一度貸しを作った身、その恩は戦いでもって返すと言った。俺は俺に殺されるより先に他の奴にやられる事の方が腹立たしい。それだけだ。お前はそういう誇りはないのか!?」


ゼントは大量に金塊は財宝の入った麻袋を見せて皮肉な笑いを見せた。


「誇りや仲間は金にならねえだろ? すべては金だろ? 国も、地位も”っ”……」


「もういい、お前はしゃべるな。俺は7お前のような奴が一番嫌いだ! 全く腹立たしい。」


 ゼントはバッカーノの衝撃的な一撃で白目を向き、泡を吹いて倒れていた。倒れどころが悪く、石に当たって頭から血が流れていた。バッカーノとナーレは彼の亡骸に嫌悪の視線を向け、沈黙のまま情報屋の城へ向かうのであった。



アエナは情報屋であるイェンロンに辱めを受けながらも船のありかを聞き出そうとするのであった。


次回「ザギの情報屋②」

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