O19話:ノア
監獄を創設するためだけに開拓された惑星:ガイード。そこにはバラッカスもたじろぐ魔物が済んでいるという…。
グン・グニール艦内ではイフェイオンに強硬突破する準備がなされていた。バラッカスと共にミズキが彼らの指示を素直に聞き入れ、ゼントの指示のもと侵入を支援していた。彼女は以前とは異なり、生気のない目をしていた。
それを話すためには時間を少し巻き戻す必要がある。
それはギガノトでノヴァが現れ、ビーコンらへの停戦命令を受けていたころ、彼らはいち早く、ギガノトから脱出し、戦艦、グン・グニールは次の惑星を無限監獄であるガイードへ舵を取っていた。ガイードは惑星としては荒れ果てた無人星だった。だが、本部の開拓を経て囚人を収容するためだけの施設を設けたのだった。そこは刑務所と呼ぶにはあまりにも法外で非人道的なゆえ、収容所と呼称されていた。収容所とともに多くの宇宙害獣が野に放たれており、収容所からの脱出はもちろんの事、他の惑星への亡命はほぼ不可能だという。そんな惑星総要塞ガイードをジェノサイド屈指の巨大戦艦、グン・グニールは安々と着陸したのであった。
「バラッカス様、ドゥージャの情報は本当なのか?」
バッカーノは懐疑的になりながら聞いてみるとバラッカスはイライラしながら
「将軍、お前は我の言うことだけ聞いていればいいんだよ。 そもそも、あいつを呼ぶ羽目になったのはお前がデスモフを犬死させたからだろ。」
「そのようなつもりでは、、腹立たしいのは全員同じだ。ジークも前線に出られずいら立っているでしょうし
。」
「新人にはドゥージャと内通させながら巫女の子守をさせている。重要な仕事を投げ出すわけがない。」
バラッカスとバッカーノは収容所の2号棟へと足を運んでいった。2号棟収容所の警護兵の顔は青ざめていくも声を上ずらせながらも立ち向かった。
「ジェノサイド!? 貴様ら、何の用だ!! 止まれ、ここは連邦本部管轄圏内だぞ!」
バラッカスは兵士の肩に手を置き、力強く握りしめながら向かい合い、
「なら、職務怠慢だなぁ。お前は俺たちの侵入を許している。」
バラッカスらは収容所へと侵攻していった。その跡にはさっきまで兵士だったものは溶解し、身元の分からない姿へと変貌していた何かだけだった。兵士を続々と液状化させ進んでいき、収容所の奥へ、そして下層へと向かっていった。囚人たちはバラッカスの顔を見るなり、怯えるもの、崇め、そして救済を求めるものが檻の中で喚いていた。そして、ある檻へとたどり着いた。その中には小柄でやせ細った人がいた。その顔はどことなくバラッカスに似ていた。
「ノア、、迎えに来たぞ。」
「お、お父様…。信じてましたよ。やっぱり僕を愛しているんだね。」
「必要だから来た、それだけだ。 お前に愛情とやらはない。さっさと来い。」
「分かっていますよ。あなたが見ているのが僕の持つ指輪だってことを。」
バラッカスはノアの檻を破壊し、ノアはバラッカスに一歩近づき隠し持っていたメビウスリングを取り出した。バラッカスは受け取らず、そっけなく、監獄を後にした。途中、またもや彼に救済を求めるものがいたが、そんな声は全く耳を貸さず、すぐさまグン・グニールへと乗り込んだ。
そこにはジークがミズキを魔力で縛り付けているところだった。
「ジーク、状況はどうなっている!!」
バッカーノは少し語気を強めたが、ジークは冷静に対応した。
「ギガノトで兄を見かけて以来、この娘が一向に言うことを聞かん。」
ミズキが縛られるも暴れまわり、
「ふざけないでよっ!! 早く兄さんの所に返してよ! あんたたち絶対誘拐の罪で起訴してやるんだから!」
そこに、ノアがミズキに近づき、顎に手を添えて話した。
「お嬢さん、大丈夫です。むしろ、誘拐され、悪事を働くように改造されているのは彼の方です。私たちを信じなさい。さあ、メビウスリングの場所を吐くんだ。そこに君の兄もいるはずだ。」
ノアは話している間中、手をミズキの顔に当て、催眠のような暗示をかけていた。暗示をかけるとミズキはみるみる精気と正気を失い、瞳も濁っているようだった。彼女は少しずつ口を開いた。
「い、ズァーク、、イフェイオン…。」
バラッカスはしたり顔になった。
「イフェイオン、、無能本部のある場所か。そこならドゥージャにも手伝ってもらおう。 ノア、リングを操作盤にある窪みに入れて右に回転させろ。」
ノアはバラッカスの言う通りにメビウスリングをセットし、動力を起動させた。すると、サイレンがけたたましく鳴り響き、モニターを確認すると戦艦の先に魔法陣が現れ、ミズキがバラッカスの指示によって座標を示していた。グン・グニールは魔法陣めがけ、飛び出すとそこはイフェイオンを眼前に控えた位置だった。接近していくと、イフェイオンから漂着信号が出された。
イフェイオンではゼントを筆頭にイフェイオンを攻略していた。ナーレ、ミズキ、ザギャと引き連れられたミアはゼントの用意周到さに驚いた。ザギャの支援もあったものの、まるでこの混乱が分かっていたかのように行動していたのだった。そして彼はミアを人質にしながらシャトル着港の操作盤へと向かっていた。ナーレはそれを遮るようにベアトリクスをかざして訊きただした。
「あんた、それで何するつもりだい?」
「君にはわからないよ。俺は金のためならなんでもする。そうやって生き延びてきた。だから邪魔すんな。ハズキ、妹に会いたいなら手伝え、、! こいつのあられもない姿を見たくないならな。」
ハズキはナーレとザギャを遠ざけた。
「ハズキ、てめえ!!」
「元から俺は、、お前らの仲間じゃない。妹さえ、取り戻せばいいんだ。これがチャンスかもしれない。」
珍しいことにハズキの言葉にザギャが口を開いた。
「おまえ、ミアを、、どう思ってるんだ? 妹と、重ねてるから、俺たちに手出しを、させないんじゃないのか?」
ハズキは、うつむいた。だが、もう遅かった。ジークがデス・クローチを連れてイフェイオンに侵入していた。ジークとゼントが合流するとミアは彼に渡されようとしていた。それは、ハズキたちとの意図と反する行動だった。ハズキはすぐにA・シールドを使ってゼントに攻撃を仕掛けた。ナーレもベアトリクスを使ってデス・クローチをなぎ倒していった。さすがの非戦闘員のザギャも素手で迫りくるクローチを払いのけていくが、ジェノサイドの勢いは増すばかりだった。
ハズキたちは押されていき、いよいよワタルたちのいる指令室へと転がり込んでいったのだった。
「ゼント…おめえ、やりやがったな!」
「傭兵だから注意しておけとあれほど言っておいたのに、、残念な船長だよ。もうすぐバラッカスもこっちに参戦するだろうよ。そうなれば、すぐにでもここは戦場となる!」
「お前は少し、血の気が多すぎるぞ。ドゥージャ。」
バラッカスがミズキを連れて指令室へと堂々とやってきた。指令室は一層静かになった。バラッカスはぞんざいにミズキを突きだし、ドゥージャはミアを突き出した。
「前儀にはもってこいの場所だなぁ。こんなやわなところ、ぶっ飛んでしまうかもしれないが。」
ハズキがミズキに声をかけても応答せず、彼女のもとに向かおうとしてもクローチたちが抑え込んでいた。それはワタルたちも同じだった。
イレーナはバッカーノに首を腕の中にがっしりと抱えられながら
「ここで何をするつもりなのです。バラッカス!! 」
「すでに、ここには10コものリングがそろっている。残りのリングを示すため、また、すべてのリングがそろったときの儀式のためにも必要なことなのだ。こんなにもメビウスリングが集まっていればお前たちも平常ではいられまい?」
ミアとミズキは突然苦しみ、頭を抱えてひざを折った。体が発光しだすとリングが宙に浮かび始め、10個のリングがそれぞれ5つずつ彼女らの身体に吸収されていった。バラッカスはその光景に目を見張り、
「ハハハハハ! 近い、俺の星が創造され、混沌が宇宙を支配する未来が近いぞ!」
すると、ワタルはクローチをすべてはねのけていた。またもや、あの姿となっていたのだ。バッカーノやバラッカスもこれに少し驚き、意表を突かれ、イレーナが脱出できた。だが、ワタルは誰の言葉をも受け入れなかった。ただ、バラッカスめがけてミアとミズキの間をすり抜け、対峙するもバラッカスはリングなしでも強く、意識を失った状態のワタルでさえも片手で払いのけた。ワタルは吹き飛ばされ、ミアにぶつかった。その瞬間、ミアとミズキの周辺から白い光が引き起こされていった。ワタルも、ハズキも、ビーコン海賊団、イフェイオン職員そしてジェノサイドさえも光に飲み込まれていった。すでに誰もいなくなると衝撃波が起こり、爆破の連鎖がイフェイオンを陥落させていった。
白い光は無音の中、仲間を引き裂いた。別々の地で彼らは目を覚ます。
次回「ウンディーネの海に射す茜」
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