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【完結済】冴えないワタルは異世界勇者より勇者らしい。  作者: 小鳥 遊
第一章冴えないワタルは勇者らしい。第1部:はじまり
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第3話:潜入 ルナ王国

さて、いよいよルナ王国編も佳境で次週で王国編終了です。(長過ぎた)


「龍神の剣よ、私に力を貸しなさい! はあぁ!」

「よりによって面倒なオークをよこしやがって! 魔導呪印<紅蓮>!」


アエナとオーガスは魔王の居場所を突き止めるべく一度、村をおそった騎士たちのいるルナ王国へと向かっていた。途中でオークと出会い、必死になぎ倒して行くアエナとオーガスであったがその戦い方は勇者とは言えない野蛮でアエナに対して狂気すらオーガスは感じていた。それでも彼は叱責する様子もなく、あくまでも冷静にアエナを諭した。


「ずいぶんと荒っぽいよアエナ。そんなに急いでも仕方ないよ!敵は腐るほど僕たちを拒み続けるんだから。」

「早くこの惨劇を止めないと!魔王は目の前にいるって言うのよ!私たちのような犠牲者を出さないためにも、早く、早く・・・」


ルナ王国への道は遠く、険しく、彼女たちの精神を徐々にすり減らすように彼らが襲いかかってくる。ナーガ村を出て四日ほど経ち、本来ならばこのぐらいに王国に着くころだが魔物が行く手を阻むのでまだ三分の二にも満たなかった。王国の門が向こうにかすかに見えるのがわずかばかりの希望である。景色はもう暗く、彼女たちの持つ松明の明かりで見える足元の自然豊かではなくなった荒野とそこに映る影が唯一の彼女たちの見えていた景色であった。


「とりあえず、もうここいらで野宿をしよう。とりあえずの簡易テントを作っておくか・・・ってああもう!そのまま寝たら危ないって言ってるでしょアエナ。」

「オーガス、女の子っていうかお母さんみたい。でもいつ襲われてもいいように剣を持って寝るのが習慣になりつつあるからしょうがないわよ。」


オーガスは薄暗く夜空に浮かぶいくばかりの星を見上げて、やさしく昔話を持ちかけた。


「ねえ、アエナ。王国には行ったことある?」

「私がまだお母さんのおなかの中にいた時、両親は王国に出稼ぎに行っていたらしいわ。」

「僕はそんなこと聞いたことないや。当然行ったこともないし。どんなところだろう。」

「少なくとも魔王の支配下で無かった時はとてもいい国だったんじゃない?騎士たちもあんなことしなかったろうし。」


アエナ達はあやしげできれいな星空を見ながらたわいもない話をしていた。そんな時、近くで地響きが鳴った。遠くからこっちに向かってくる。あれは夜の狂犬、ワーウルフだった。といってもならず者の獣人で、人語を解せるのだが、アエナ達に頭の悪そうな会話を繰り広げる。


「貴様らが魔王デ・モール様の言っていた勇者だな!ガルル。人間の騎士は役に立たんだろうからオレ達がお呼ばれされたって訳よ。」

「ガル、お前らには恨みはないが」

「死んでもらうッガルよー!ヒャッハー!!」


話しかけてきた三人に加え中隊規模の人数がアエナ達を囲んでいた。突然の戦闘に驚いたがすぐに二人は背中合わせになって


「オーガス、後ろ頼んだわよ。」

「いわれなくてもやりますよ! 魔導結界<不可侵>!このバリアでふっとべ!」

「龍神の剣よ 私の声にこたえよ!<リヒト・ゴッドラッヘ>!」


オーガスの決壊人によって三匹はまとまって吹っ飛ばされたかと思うとアエナの斬撃が横一閃に放たれると、三匹のワーウルフ達は散り散りに地面に倒れていき、蹴られた犬のようにキャンキャンといったと思うと


「フガル、プガル俺の援護しろ。いつものあれ仕掛けるぞ!」

「御意。遅れるなよ、プガル」

「わかってるよ、いくッガルよー!グガル、フガルの兄貴!」


ワーウルフの義兄弟グガル、フガル、プガルはアエナ達に何かを仕掛けようとしていた!彼らは三人一列になったとおもえば分身のように分かれたりを繰り返し彼女たちを翻弄した。そうすると彼らは必殺技のようなものを出そうとしてきた。


「いくぞ!必殺、ウルフストリーm・・・」


瞬間に彼らの必殺技は何者かの影によって振り払われその影はワーウルフ達を一掃した。よく見るとそれは騎士のような格好をしていた。その甲冑には二人とも見覚えはあったがあまりにも辺りが暗くて顔まではよくわからなかった。その男は颯爽と介入してきた。


「人間様を馬鹿にすんじゃねえ!獣くせえ犬っころ共!」


突如として現れた屈強な戦士のような人が何の脈絡もなしにワーウルフ達を全て倒してしまった光景に唖然としていた二人。ワーウルフたちはそそくさと退散していくと静かな夜が再び舞い戻っていたが、二人の時間は静まり返っていた。目を丸めながら恐る恐るオーガスが話を振り始めた。


「え、誰 ですか?」

「あなた、もしかしてこの前の!?」


振り返った姿を見てアエナはその屈強な戦士が黒い甲冑を着た、特徴的な髭面に見覚えがあり、思い出した。それは村を襲った、しかもアエナを持ちあげて勇者かどうかを見た男だった。彼はひょうひょうとした態度でアエナ達に話しかけた。


「やっぱりお嬢ちゃんが勇者だったか。お元気ですかと言いたいところだが、んまあそんなわけないわな。」


そんな態度を見て、アエナは胸の奥底に秘めていた怒りを抑えきれず、鬼の形相で剣を抜き、詰め寄り剣を男の首筋に控えさせながら言った。


「よくも、のうのうと現れたわね! あなた達のせいで私の村は!」


「待て、俺も死傷者を出したくはなかった。けど、出してしまったことを今では悔やんでいる。悔やんでも悔やみきれない罪だ。だが、こうしてお前が勇者として現れることもなかったろうな」


「私のせいだって言いたいのか!」


アエナは龍神の剣を振りかざし彼に向って振りおろそうとした。しかし、彼はその刀身を片手で受け止めながら


「君たちの村にしたこと本当にすまないと思ってる。だが、君たち以外にも苦しんでいる人たちがいるってことを分かってほしい。そして我々の国も君の村の二の舞にさせないでほしい。頼む!!これは俺の最後の賭けなんだ。頼む、俺の話を聞いてくれ。」


「アエナ、そいつの話を鵜呑みにしちゃダメだ!罠かもしれないぞ!」



アエナは考えた、多くのことを。村の事、この世界のこと、自分の使命のこと、やらなければならないことは沢山ある。かといって彼を許して野放しにしておくのも今この瞬間の爆発的な怒りをどうすればいいかわからなかったが彼女は剣を降ろした。


「あなたのこと、完全に信用してるわけじゃないけど、今は情報が先決だわ。あなたが知ってること全て教えて。それで信用するか決める。」


騎士団長は黙ってうなずき、彼の身の周りに起きていることそして魔族になった渉などの話をした。

「俺はルナ王国の騎士団長、カイ・ドレクスだ。俺が仕える王は突如として現れた魔王によって破滅に陥った。王都の民は恐れ、俺たち騎士団はデ・モールとかいう魔王とサ・タールという魔王の手先となってしまった。だが、俺だけはその魔の手から免れ、サ・タールに従うふりをして情報を集めていた。デ・モールは分からんがサ・タールの方にはなにか因縁めいたものを感じる。あいつはきっと元は魔王じゃない。俺たちみたいに操られてる可能性が高い。」


「その魔王のなりそこないみたいなのから切り崩せばいいのね。」


「ああ。だが殺すな、仲間にするんだ。ここからは俺の見た情報からだが、国王と王妃はまだ生きていて、ただ幽閉されているだけだと思う。サ・タールってやつが何度も地下牢に周りを気にしながら入っていくのを俺は見ているから割と確実性の高い話だと思うがな。だとすればあいつの根は悪い奴ではないはずだ。あいつの呪縛を解くためサ・タールの真名を告げればきっと仲間になってくれる。俺はそう確信している。」


「随分とそのなりそこないにご執心なようね。」


「あいつを見守ってやれって、神様がうるさいんだ。あいつの真名『サエナイ・ワタル』って言うのも教えてくれたしな。俺はそれだけを伝えたかった」


二人はカイ・ドレクス騎士団長の話を真剣に聞いていた。騎士団長は続けて王国侵入について触れた。


「とにかく、今は王国に行って魔王を倒すのがお前らの目的だろう? 俺の作戦に乗ってくれないか。」


アエナは悩んだ後、うなずいて騎士団長を睨みつけながら


「いいわ、信用してあげる。 でも、少しでも変な動きをしたら殺すわよ。」


といい、彼の言われるがままに彼女たちは騎士団長の後をついて行った、というより捕虜にされたように縄に縛られ引きずられていった。王国の門はそのおかげですんなりと入ることができた。

 しかし、事はそううまい方に行くはずは無く、そこに突如として現れたのは黒のローブにそれとは対称に、派手な赤い肌が印象的な悪魔のような出で立ちの人外がやってきた。彼こそがここを支配する魔王の一人デ・モールである。彼は騎士団長たちがここに来ることを予期していたかのようにやって来たのである。


「ご苦労であった騎士団長。どこで油を売っているのかと思えば、先に勇者の居場所を突き止めていたのですね。」 彼の功績を労いながら続けざまに騎士団長の耳元で 「まあこれで単独行動していたことに関してはチャラにしてあげるよ。いなくなったら団員どもを殺そうかとも思ったが、もう少し生かしてやるよ。」とささやいた。


「やっぱり罠だったんじゃないか!アエナ、どうしよう。」

「どうもこうもないでしょ!八方塞がりよ!っく・・・カイ、よくも騙したわね...」


だが、布陣は団長も囲んでおり、カイ騎士団長は何も言えずにただ顔を伏せていた。デ・モールは勝利を確信しているかのように高笑いをして、絶望している彼女たちを煽るかのように


「その絶望!それが我らが主、大魔王マ・ゾール様の活力になり我々の血と肉となるのだ!だがもう、貴様らは必要ない。ここで旅は終わりだ!見習い!やっておしまいってあれ?見習いはどうしたよ。」


・・・


その頃、その見習いサ・タールこと佐江内渉は苦悶の表情を浮かべながらこの状況をまじまじと見つめていた。

(何をためらっているんだろうか、ぼくは。役割はそこにあるのに・・・。彼女は敵のはずなのにぼくはそれを助けたいと思っている。この王国の王族虐殺の時もそうだった。それに賛成できず情報交換のためと言って自分に任せて貰った。今回はそうはいかないだろうな。)


そう考えているうちに事件は起こった。発端は騎士団長だった。彼は自分を抑えていた魔物たちを力で振り払って、刀を取り出して牙をむいた。


「もう悪者ごっこは終わりだ!二人ともここは俺があいつらの気を引いておくから、王国にある『賢者の聖剣』をもってこい!お前の龍神の剣じゃ話にならん。」

「団長、貴様!怪しいと思っていたがやはりか!お前らも何をしている!さっさと二手に分かれて勇者を捕まえるのと見習い探して来い!」


勇者たちは自分達のために行動した騎士団長を信じ、王国の中にあるという聖者の聖剣というものを探すのであった。

次回賢者の聖剣は旅立ちの前章プレリュード

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