O18話:イフェイオン会議
第二部の始まり、それはすべての終わりを示す前章。
勇者たちよ、銀河を駆け抜けろ!
ビーコン一員はあらゆる次元領域の宇宙を観測できる研究所がある惑星:ズァーリ上空にある銀河連邦総本部ステーション『イフェイオン』に拘束、連行された。イフェイオンには地上拘留所へと続くエレベーターが続いており、連行される際はそちらに強制連行だが、アエナとワタルそしてアッシュだけはイフェイオン内部の指令室へと通された。
連れてきた連邦兵が指令室の中央にいるヒトに敬礼をして報告をした。
「総督、海賊の首謀及び重要参考人2名連行してまいりました。」
総督と呼ばれたヒトはこちらを振り向いた。その容姿は肌の色がグレーだということ以外はなんらワタルたちとは変わらない見た目をしていた。そのヒトはワタルたちに整然と近づき、死んだようなまなざしで語りかけてきた。
「ようこそ、イフェイオンへ。私は銀河連邦総督 イレーナ・アルマ。アエナ・マクスウェル、久しぶりですね。」
「はい、総督。」
アエナとイレーナ総督の会話は短くも、緊張感の増す空気感を漂わせていた。アッシュはイレーナを見慣れているのか舐めた口調で切りかかった。
「イレーナ、鼻つまみもんに今更何の用だ? まさか、アエナを連れ戻すためだけに読んだんじゃないだろうな?」
「キャプテンアッシュ、あなたには今用はありませんので。それに3人に来てもらったのはリングの事です。」
そう言うと総督は続けて語りだした。
「というのも、あなたたち海賊の持つリングをこちらに渡してほしいのです。メビウスリングは本来我々が回収するべきです。」
ワタルは口をはさもうと恐る恐るしゃべりだした。
「どういうことですか、というか今更弱体化したあなた達に何が守れるんですか。」
「関係のないことです。というより佐江内渉、あなたこそここにいてはいけない。地球人は銀河系の不祥事には手を出さないという規約を我々と交わしているはずですが?」
「そんなもの、知りませんよ! ここまで来たんだ。引き下がるわけにはいかない。」
アッシュも加勢し、
「そうだな。…昔、俺はあんたに拾われた。それからお前たちの犬になって銀河の平和を守っていた。アエナもな。だが、アエナの惑星を守れなかった、、あの美しい星を守れなかった俺は、宝は、自分が欲しいって思ったものは自分でつかみ取って守るもんだって思えた。だから俺は、俺たちだけでこのくそったれな世界に蹴りをつける。」
「アッシュ・ゴ・ルドー、銀河連邦の面汚し。おまえだけは…!」
突如としてワタルは腕を振るわせながら銃口をイレーナに向けて脅迫した
「言い合いしてても埒が明かない。あなた達もメビウスリングを持ってるんでしょう?こちらに渡してもらいたい。決してバラッカスのように悪いようにしないですから。バラッカスを止めるためにもあの力が必要なんだ。」
「そうですか…。まあ、元よりあなた方に託すつもりでしたがね。」
イレーナにかけられた言葉は意外な言葉だった。だがその声色はどこか悲しげだった。
「確かに、君たちの言う通り、我々はもはや風前の灯火です。不服ではありますが、今では我々の支持率よりもはるかにあなた方の方がよく、自由な活動だからこそ救われている星もある。だからこそ、あなた達に託すためにも回りくどいことを言いました。これはもう、あなた方個人間の復讐だけの問題ではありません。銀河中の威信をかけた戦争なのです。それでも、あなたの心は変わりませんか?佐江内渉。」
ワタルはここまで来た記憶を思い出した。アエナは自分を頼ってくれたからこそ、ここまで来た。そして自身ができる“役割”があるからにはそれをやっていくしかない。ワタルは拳をぎゅっと握りしめ、決意に満ちた表情でイレーナを見つめた。
「やります! 僕にはやるべきことがある。アエナも、御堂くんもその妹さんもみんなが帰れる場所を取り戻すために、僕はもう一度勇者でもなんにでもなります!」
「わかった。だが、一つ忠告することがある。それは、、」
さえぎるようにサイレン音と連邦兵のあわただしい報告がなされた。
「失礼します! 総督、ガイードが墜ちました! 」
「何!? 無限監獄かが? くそ、ジェノサイドめ、我々も落ちたようだ。ズァーク施設に投獄した残りのメンバーを招集させろ。」
「それが、すでに脱獄されています! エレベーターホールですでに戦闘しているということです。」
それを聞いてアッシュは驚き、
「戦闘だって? 俺はおとなしく待ってろって言ったはずなんだが…」
また、もう一人の連邦兵がイレーナに悪報を伝えに来た。
「総督、ジェノサイドの戦艦グン・グニールと思わしき反応がこちらに近づいてきています!」
「何! 連邦本部は一部の者しか知らない最重要機密だぞ! まさか、アッシュ、本当に裏切ったのではないだろうな!?」
アッシュは呆れ笑いを浮かべて
「バラッカスに一番恨みを持っているのはあんたが一番知ってるだろ!? あいつと組むなら死んだほうがいいね! だとすればあんたらの誰かにスパイがいるんじゃないか?」
そういうと指令室に見慣れたメンバーが駆けつけていた。ただ一人を除いて彼らの身体はボロボロだった。
「そうだ、キャプテン。スパイは俺だ。」
その声はゼントだった。ゼントは今までかけたことないような色眼鏡をつけてナーレを蹴り飛ばした。
ナーレはアッシュのところに必死になって駆け寄り、振り絞るような声で
「すまねえ、キャプテン。見破れなかった…。」
キャプテンはナーレ、そしてザギャを自分の後方に追いやり、アエナに介抱させた。ゼントはミアを人質にしてバラッカスの到着を盛り上げていた。
バラッカス率いるグン・グニールはイフェイオンにすでに到着しており、ジークを先遣隊として合流させていた。バラッカスは艦内で笑みを浮かべ
「ようやく、銀河連邦本部を見つけた。 お前ら、喜べ! 俺たちはラッキーだ。あそこにメビウスリングのほぼすべてがあるんだからなぁ!! これも、ゼントとお前のおかげだよ、ミズキ。」
ミズキは曇った眼で覇気がないような返事をしていたのだった。
時間は少しさかのぼり、ジェノサイドはガイードへと向かっていた。
そこは、無限監獄といわれる極悪人を収容するための要塞都市。難攻不落といわれるこの惑星に最恐のヤツらが挑む。
次回「ノア」




