第O15話:ギガノトの三すくみ 対峙
気づけば一か月更新止まってたんですね。
私生活がちょっとバタバタしだすので更新とかできなくなってしまうかもですけど
お許しくだされ。
修行するワタルたちを後にしたアエナ達はギガノトの街へと繰り出すのだった。
アエナ、アッシュ、ナーレの三人はワタルたちを後にしてギガノトの街へと進んでいった。ギガノトはすべてにおいて一般的スケーリングとは逸脱した大きさの生物が生息しており、ヒト型で文明を持ったギガノト星人は平均体長約10mほどの生命体で、町全体も彼らに合わせてすべてがビックサイズになっている。
アエナは原始的ながらも発展した巨大都市を見上げて
「ほんと大きな町ね。」
アッシュが平然とした態度で後ろで興味津々に見とれ歩いているアエナを諭しながら
「ま、これがあいつらの普通なんだろ。別に大したこたぁないぜ。それよりもここでのリングの情報を集めないとな。」
ナーレ・ザーラが露店の女性店主にすぐに聞きに行った。
「なぁ、姉ちゃん。ちょいと聞きたいんだけど私たちの指の大きさくらいの指輪見たことないか?」
露店の店主は首をかしげて
「さぁ、マニミムのアクセサリーなどは取り扱いないのでわかりませんね。」
「まぁそうだよね。ありがと!」
露店から離れ、歩き出すとアエナは不思議そうな顔でナーレに詰め寄った。
「ねえ、ナーレ。あの人や、ギガノト人がひそひそと言ってる“マニミム”って何?」
「た、多分、自分たちとは違う小さい種族を指す言葉じゃないのかな?」
アッシュが割って入って
「普通に使われているが、元は差別用語だぞ。」
三人がウロチョロと街を散策し、リングの話を聞くが、誰も知らず、相手にもされないこともあった。だが、バラッカスに先に取られることを考えると、行動するほかなかった。
すると高貴そうな衣服を着こなす、すらっとした巨人が話しかけてきた。
「おやおや、観光にしては物騒な装備とお顔ですね。」
アッシュは大きな図体を見上げてにらみつけながら
「なんだよ、俺たちがハッピーな客人に見えるか? 」
「そう、言わないでくださいよ。 あなたの悪名高い噂は銀河中に知られていますよ…。キャプテン・アッシュ。リングについてお調べしているのでしょう?」
「なぜ、それを!?」
「私はキュレトー。どうぞ、あのお方がお待ちです。」
キュレトーと名乗った男は三人を連れて行くと、そこには今までとは雰囲気の違う奇抜な建物が大きくそびえたっていた。
アエナはあっけにとられ
「すごい、、、こんなの見たことない。」
キュレトーは笑い
「ただの歴史博物館ですよ。狂帝:オル・ゴウルの負の遺産ですがね…。さあ中へ、あの方にお会いする前に教養をつけてもらわないとね。」
博物館の中に入ると石板や銅像が整然と並べられている。キュレトーはあちらこちらにある展示物を見せながらおおむねのギガノトの歴史を語っていった。
「現在、ギガノトは神話やおとぎ話を語らず、事実で語るのです。国の礎を築いたオル・フェルゴはさらなる繁栄と交流を望み、宇宙進出への希望を募らせていました。だが、息子であるオル・ゴウルは宇宙計画を廃止し、異訪人を拒否し、マニミムと蔑むようになりました。」
「そうか、そのご教養はいつ役に立ちそうなんだ?」
「重要かと、特にお連れのお嬢さんにも、リングにも関わる伝承をフェルゴの時代に残っているのです。」
「私とメビウスリング…。」
アエナは胸にざわつきを覚え、彼の言葉を聞き入った。
「フェルゴの時代に初めて宇宙へ行ったものが先王に送った日記には“いずれギガノトだけではなく、すべての星々と生命の危機が訪れるでしょう。その時は指輪を光の女神□□□に。女神が光を照らし、すべてをただす。”と書いております。」
「女神の名前は?」
「判読不能です。今のところ、我々は”アイーダ”と呼んでいます。今や、この日記の著者の通り、銀河がバラッカスによってバランスが崩壊しつつある。そこにあなたがやってきた、アエナ・マクスウェル。
あなたこそが、我々の求めるアイーダなのです。さあ、準備はよろしいですか?」
博物館の地下へと降りていくと、倉庫になっていて、展示物以外の常用そうな歴史物が布にまかれていた。キュレトーが指さした先にはアエナ達と同じ大きさのドアと建物が建っていた。
「建物の中に建物があるってのは不思議な感覚だな。」
「どうぞ、お入りください。」
キュレトーは細目をより細くしてにっこりと笑った。
三人が中に入るとそこには机に脚を乗せて椅子に座っている男と、その付き人二名が立っていた。異様な光景に気味悪がるも彼らの圧力に負け、椅子に腰かけた。
「ここにおられる方は…」
付き人が話し始めるとアッシュが納得して、割って入ってきた。
「ギャング・T。出生不明の宇宙一の切れ者。まさか、お前があのギガノトの創生王の末裔とか言わねえだろうな?」
横柄な男は足を机の下に戻し、太いシガールをふかして
「いかにも。俺の名は、オル・ターナー。ゴウルの孫にあたる。そして、お前たちと、バラッカスのジェノサイドが欲しがっているメビウスリングはここにある。」
「無料奉仕してくれそうな雰囲気じゃないよな? 要件はなんだ?」
「俺がお前ら野良犬どもに差し出すとでも思うか? お前らがリングとその女をよこせ。そうしたらお前のカジノ金強奪の件は帳消しにしてもいいぞ。」
アッシュは腕を組み、先ほどのオル・ターナーと同じように机に脚を乗せて
「俺はいわくつきの宝石はニガテなんだ。女もくれてやるよ。お前らの希望なんだろ? こちとら使い道がなくて困ってたんだ。」
アエナがアッシュの言葉にムッとしていると、アッシュは続けざまに
「アエナはどうしたい? こいつらと組むか?」
アエナは悩んで、オル・ターナーに目を向けて
「一つだけ聞くけど、リングと私で何をするつもりなの?」
「答えは簡単さ。この星を、国をでかく、強くするのさ。俺が支配する楽園。そのためにも女神様には俺のお妃になってもらおうかな? 誰もが俺の容姿で差別しない! 完璧な国に!」
「そう、しょうもない野望ね。そもそも私はあなたみたいな人はタイプじゃないの。それに宇宙全体のパワーはなんでも願いをかなえてくれる万能アイテムじゃないの。力にはリスクが伴うし、扱える器じゃない。」
「だからと言ってそんな野良犬についていくのか?」
「そうね。ただでさせどうしようもなくて手癖の悪い男だけど、これだけは信じてる。彼が、いや、彼とワタルという人が手を取り合ってこの宇宙を救ってくれると! だから、この野良犬を飼いならして見せるわ。」
「後悔するぞ。」
アエナの額に銃が突き付けられた。アエナは動揺しなかった。アッシュがコートを翻し小銃を構えると
「それ以上はご遠慮願いたいね。ギャングの頭取とはいえこちらも、あんたのそのきれいなお顔に穴開けてもいいんだぜ。」
「やってみろよ、こっちにはリングを持ってるんだぞ! 俺は今、それをはめている。どういうことかわかるよな?」
「リングなんて使ってんじゃねえよ、腰抜けが! 」
アッシュとオル・ターナーが向かい合ってにらみ合っていると突然地鳴りとともに地面が揺れ始めた。
なんだ、なんだと慌てふためいていると、建物が引きはがされていた。建物を軽々しく持つキュレトーは慌てた様子で
「ターナー様、突然申し訳ありません。奥の森の方で何やら戦闘が起きているようです。おそらくバラッカス軍の侵攻かと…。」
ターナーは顔を引きつらせて
「ふ、ふざけんな。バラッカスは相手にしたくねえ。あいつはほんとにやべえ。」
アッシュは呆れてターナーの胸倉を掴み銃を突きつけながら
「死にたくなかったら、俺たちにリングを渡すんだな、ヘタレ。バラッカスにバラバラにされるか、俺に殺されるか、あるいはおとなしくリングを渡して逃げるかだな。」
「わ、分かった。こんな物騒なもんいらねえよ。国もいらねえ。」
ターナーは一人怯え腰になりながら消え去った。
アッシュはリングをしまい、キュレトーに視線を向けて
「あんたの心配するつもりはないが、いいのか?」
「いいのです、どうせ偽物だと知っていましたから。我らギガノトに伝わるリングを持っていたのがあの人だっただけです。」
「そうか! それより、森の方で戦闘ってのは本当か?」
「ええ。確か、そこには誰も近づかないはずなのですが…。」
アッシュはアエナとナーレの方に向き直り
「聞いてた通り、森でバラッカスが暴れてるってなったらもしかしたら俺たちの船がやばいんじゃないか?」
ナーレはアエナが羅針盤を見ているのを覗き
「ああ、そうっぽい…。」
アエナは二人より一足はやく走り出し
「急がなくちゃ! ワタル、無事でいて!」
届かなくとも届いてほしい吐露が荒い息遣いとともに流れていた。
オル・ターナーはアエナ達とは全く逆方向で走っていった。どこでもいい。ただここから抜けられるならどこでもいいと思っていた。
「残念だよ、ターナー。俺の配下になってギガノトを更地にして大型カジノリゾートにするとか言ってなかったか?」
「ひっ、バラッカス!! お前たちとはもう関わりたくねえよ。お前は狂ってる!!」
「知ってる。だから楽しいんだよ。お前のその恐怖にゆがむ顔、とてもいい。だが、俺の楽園には不要だ。」
バラッカスはターナーの頭をつかみ取り、リンゴのように握りつぶした。
「デスモフのやつめ、いないと思ったら海賊団と遊んでやがんのか? 腹立たしい! バラッカス様、少し、彼らをいたぶりましょう。」
「そうだな。バッカーノ、ローチを連れて先に行け。」
ワタルのもとへやってきたのはジェノサイド参謀デスモフだった。
三人は協力して立ち向かうことができるのか!?
次回「ギガノトの三すくみ ~意地と意思~」
 




