第O13話:決意の朝 そして、
ワタルの旅はまだ続く。
メビウスリングを巡った壮大なSFファンタジーを見逃すな!
複数の弓兵が弓矢を放つがワタルはそれをものともせず、刀さばきで振り落として進んだ。ただ、ひたすらに歩き続けた。
ワタルの取りだした魔剣は異常に刀身が曲がっているように見えた。弓兵は矢を当然のごとく振り落とす化け物に畏怖し、誰も次を撃とうとしなかった。
兵長が指示するも誰もが戦意喪失して士気は下がる一方だった。
「止める意志がないなら、どいてください。僕にはやるべきことがある。」
淡々と、しかし、重くのしかかるような口調で兵をどかせた。城下町は静かで、城まではすぐに辿りつけた。城内にも誰もいず、人を探していると物騒な小人がそそくさと拷問器具を運んでいた。小人はエルフとはいえない醜悪な顔立ちをしていて、不気味な笑みを浮かべてこちらを見て話してきた。
「オマエ、マジョノ、ナカマ?」
「魔女? どういう事だ?」
「マジョ、ソラワタリ、タイザイノシルシ。イマカラ、イ、イイ、イタブラレル。」
「イタイ、イタイ、オデタチ、タノシイ。」
「アエナの事か、彼女はどこにいる?」
「フフフ、オシエナイ。オマエ、オデタチガイタブル!!」
複数人の小人エルフ達が拷問器具を持って飛びかかってきたが今のワタルの敵ではなかった。彼の戦い方はこれまでの彼とは違い、荒々しく、優しさなどなかった。小人エルフの一人の首を掴み、剣で脅しながら
「彼女は、どこにいる!? 教えロっっ!?』
「まったく、勇者もどきの暴走は面倒事ばかり起こすなあ。」
ワタルに鈍痛が走ったかと思うといつの間にやら、掴んでいた小人エルフはナーレの斧の長い柄の餌食になっていた。ふと我に返り、ポカンとしていると
「さっさと行くぞ。 あんたの姫様は闘技場の闘奴にさせられるぜ。」
とワタルの手を引っ張り闘技場へと向かった。
なぜ彼女がそんなことを知っているのか、いや、考えている暇はない。
今は進むしかない。
闘技場につくと一息つき、ナーレは問いただした。
「あんたの姫様は一番最悪の刑罰、永闘刑つまり、永遠に戦わされ、見世物にされる。自害することも休むことも許されない、ひどい罰だよ。ほんと狂ってる。うちの部族は…。」
「救いに行きましょう。こんな仕打ちがあっていいわけがない。」
「それはアエナだから助けに行くのかい?」
「…アエナじゃなくても助けようと思います。」
ワタルは少し迷ったが、自分の言葉に迷いはなかった。それは紛れもなく本心だった。
「めんどくせえ奴だな。別にアエナのためだけでもいいんじゃないの? 偽善者っぽいのは気に食わないけど、彼女への思いの強さには負けたよ。さ、一狩り行きますか! ベアトリクス。」
「べ、ベアトリクス? 」
「こいつの名前だよ。」
おもむろに斧を指さしたがワタルは若干理解できなかった。だが、強力な助っ人であることには間違いない。
闘技場に進むとアエナがちょうど巨大な怪物と戦っていた。それはライオンのような容姿に羽が生えたような神々しい獣だった。
ナーレが入ると会場はざわつき始めた。彼女はどうやら一度経験がありそうな雰囲気を出していた。会場からは神獣狩りのナーレと騒ぎ立てていた。
すると斧を振りかぶり大きな背中に乗ると
「アタシの才能をなめんじゃねえよ! これで少しおとなしくなりな。」
小袋から取り出した瓶に入った粉を振りまくと、獣は体を硬直させその場で倒れたのだった。
「どおよ! 特性シビレ粉。アエナ、剣でライオンちゃんの羽、切り取っちゃって。あと、ワタ。ゼントからもらった銃で目をやれ! あの魔剣は使うなよ~。」
「わかったよ、今度は絶対にあの力を使わずに救って見せる!」
ワタルは標準を眠れる獅子の瞳に合わせた。慎重に、息を整えながら、両手で白いボディの閃光銃の熱を感じていた。引き金を引いた先は吸い付かれたように瞳へとレーザーが撃ち込まれる。
獅子はのたうち回り、しばらくして失血死した。
「ヨントゥムの荒神獣、シャルベジャが、、見るも無残に…」
エルフの一人があっけにとられその光景を落胆していた。そんな状況にも目もくれずワタルはアエナとナーレのもとへ駆けつけた。
「二人とも、ケガしてなかった?」
ナーレは自慢げに
「あったりまえ!」
アエナはナーレとワタルに微笑み
「ええ、ナーレ、ワタルありがとう。」
「じゃ、とっととずらかりますか。」
ナーレがベアトリクスを背中に収めて帰ろうとすると
「待って、実は天の魔女を見つけたかも、、」
「マジか!! こっちも何とかなりそうだな!」
「ちょ、っちょっと話が見えてこないんですけど!」
アエナについていくと地下牢に薄汚れた服を着た少女が傷だらけでうなだれていた。
「この子、ずっと“魔女”っていわれて拷問されてたの。捕まってたから何もできなくてつらかった。ごめんね。迎えに来るのが遅くなって。もう大丈夫。」
アエナは怯える少女に手をかざした。少女は一度拒絶するが、やさしく微笑みかけるアエナに何かを感じたのか、手をとり
「た、、、す、、、」
「うん、君を助けにきたんだ。彼女は、、、絶対君に危害を加えない。」
ワタルが彼女の言葉をなんとなくくみ取って話した。
ナーレは焦りはじめ
「寄り道はここまでだよ、キャプテンがビーコンを発進させてる。」
「行こう、アエナ彼女を連れて行くんだね。手を貸したいところだけど、君にしかまだ心を開いてなさそうだ。任せるよ。露払いは僕たちが引き受ける。」
「調子こいて前でるなよな、ワタ、隣少し任せるわ。」
少女を背負い、牢から外へ脱出し、衛兵をなぎ倒しながらキャプテンの待つビーコンへ駆け抜けていった。
ビーコンは薄暗い青空を浮遊して綱ばしごを下ろしていた。何とか間に合って僕たちはビーコンへ乗り込んだ。
管制室へ戻るとアッシュが船長席に何も言わず座っていた。
ナーレがアッシュに報告した。
「アッシュ、様子を見てきたよ。」
「、、、ハハハハッ! まさか、全員のご帰還とはな! 野原をかけるお前ら滑稽だったぞ。アエナ、リングを持ち歩くとはつくづく悪い女だよ。」
「そうでもしないと、人質にされたら平気で見捨てるでしょ、あなた。お互い様よ。」
「今回は勇者坊主がバカだったおかげだな。」
談笑していると葉月が青ざめてアエナが抱えていた少女に身を乗り出して見つめた。
「み、美月...!?」
その言葉に誰もが驚いた。
ビーコンが旅立つと同時に彼らの出自を祈るようにヨントゥムでは朝日が昇り始めた。
天の魔女と呼ばれた少女とは一体何者なのか、美月との関係はあるのか??
次回「ギガノトの三すくみ」
君は戦わなければ生き残れないために刻の涙を見る(カオス)




