第O12話 エルフの星:ヨントゥム
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
2020年初投稿します。
明かされるリングの実態。
ワタル、そして御堂の想いは・・・。
アッシュ達は次なるメビウスリングを集める前に一度、彼らを支援する「パトロン」がいるヨントゥムという惑星へと着陸していた。
街から遠く離れた森に近い湖に停船して、生い茂った森の中をアッシュに引き連れられて行くと、そこには洞窟を活かしたコンクリートのような作りの基地とそれを囲うように野営地が広がっており、エルフのような耳の尖った種族が武器を持ち運んでいた。
彼らがアッシュの顔を見るとうれしそうに近づいてきて
「英雄のお帰りだぁ~!!」
「アッシュ様、おかえりなさい!」
等と瞳を輝かせてアッシュ達を囃したてていた。その光景にワタルと御堂は驚きながら
「アッシュさんもやっぱり英雄なんですね。」
「あんたも相当お人よしみたいだな。」
アッシュは苦笑いを浮かべながら
「こいつらが勝手に言ってるだけだよ。」
一行は基地の最深部でパトロンの隠れ家であるロッジに向かった。ロッジに向かう最中、この星の事をアッシュに聞いて見た所、ここ”ヨントゥム”はやはりエルフ族の暮らす惑星で、きらびやかな街並みと剣と魔法と科学で調和のとれた高度な文明社会を築いているという。そんな平和な星にもバラッカスは侵攻してきて、彼らに災いをもたらしてしまった。彼らは今も封建的な王国派と宇宙に進出しようとする革命派で冷戦状態にあると言う。彼らは革命派で宇宙海賊であるアッシュとも同盟関係にあるらしい。
そうこうしているうちにこじんまりとしたロッジがワタル達の目の前に広がっていた。中に入るとそこには3人のエルフ族で年齢に差はなさそうな青年二人と女性一人だった。
青年の一人が
「キャプテン、帰って来たという事はあまり良くない知らせかな?」
アッシュは笑いながら
「違えよ、エルドラ。むしろリング一つ回収できたぜ。 ほら。」
「おぉ、なんと美しい。アイリス神の写し鏡は粗悪品とは格が違うなぁ。」
背の低めで小太りなもう一人の青年が
「アイリスタルの加護は健在だね、エルドラ、パドラン。」
パドランと呼ばれた美しい女性は
「エルドラもファルネも変な若者よね。今時アイリスタルの神話を信じるなんて。」
ワタルがぽかんとした表情で、
「あのぉ、全く意味が分からんのですけど僕達の分かるように説明してもらえます?そのアイリスタルってのとメビウスリングとはどう関係するんです?」
ワタルに気付き、青年が
「おぉ、お客人か、、これは失礼。私はエルドラ、そこの二人はファルネとパドランといい、この革命軍の司令塔なのです。そして、このメビウスリングですが、元々我々、ヨントゥム人の手で制作されたものでありまして・・・昔、ヨントゥム人の一人が虹色に輝く水晶を見つけたのです。それは神様を写す鏡として神器として扱われていました。しかし、水晶に目を付けた多くの悪商人が採掘と乱獲を始めたのです。それが神の怒りにふれたのか、天災や戦争がたえまなくなってしまいました。その力はどんどんつよくなり、やがては我々でも手に負えなくなったので、水晶を12個に割り、別次元の宇宙に力を分け与える事でバランスが保たれていました。それをよく思わず、全ての力を手に入れようとしているのがバラッカスだったのです・・・。」
アッシュが割って入り
「ま、今や人工的にもアイリスタルは製造できる。ササラに置いてきたのも模造品だ。だが、天然鉱物はメビウスリングとしての存在しかないってわけだから神の代物っていうのもわかるけどな。」
ワタルはさらに疑問を呈した。
「君たちにとって神聖なものかもしれないけど、そんな物騒なの壊せばいいじゃないか。」
そこに女のほうのパドランが真顔で
「いや、だめだ。各惑星の要となった今、壊してしまえば力のバランス、そして宇宙全体のバランス、エネルギーの流れが乱れて崩壊の危機にさらされるだけだ。ここや、アエナさん、そしてあなたがいた地球という星も」
ファルネが重い空気を払しょくするようににこやかな笑顔で
「まぁまぁ、今日はせっかく来られたんですし、少しお休みになってください。質素かもしれませんが、バラッカスの襲来を追い払った我らの英雄をおもてなし致しましょう。」
ファルネは床にある隠し扉をあけると提灯を持って僕達を案内してくれた。トンネルをつたい、進んでいくとそこには多くの革命軍の志願兵たちが食事を囲んで団欒していた。アッシュの久しぶりの帰還と言う事もあってか士気も上がっているようにもみえた。ワタルはこの風景に圧倒されつつアッシュへの信頼が高まっていっていた。御堂はめぐるめく異星人との出会いに戸惑い、笑み一つ見せず眺める一方だった。
席に座ると御堂はアッシュに向かって
「なあ、キャプテンさんよぉ 美月はとんがり耳が言ってた水晶を感じとれるって事なのか?あんなの見た事も聞いたこともねえ。ましてや俺たちゃ普通の人間だ。この間の説明にも若干納得も言ってねえんだよ。」
「時の巫女ってのはたった一人、あの水晶に導かれて宇宙に平和をもたらす役割を担うためのいけにえになるんだ。最も、伝承レベルの話だから確証はないけどな。リングに力があることは確かだ。あのウガルという獣人が力を手に入れられたんだからな。」
見たこともなかったが味はとてもよい食事がたくさん並んで腹を満たしていたが、彼の話を聞いているとだんだんワタル達は喉が通らなくなっていった。ウガルが死の危険を顧みても使用した悪魔の力。そして御堂の妹が宇宙の平和のためのいけにえになりかねないと言う話に二人の眼にはそれぞれの決意が見え、二人とも、飲み物で食事を流し込み、栄養にした。
その後、アエナもワタル達も少し疲れていたのか、急に睡魔に襲われたのでファルネの厚意で彼らのアジトのベットに寝させてもらった。
次に目が覚めたのはナーレの乱暴な蹴りだった。
「おい、勇者くん、あんたの姫様がいないがみてないか?」
どうやらアエナがどこにも見えないらしい。アッシュとエルドラが玄関から戻ってきた。
ワタルがびっくりしながら
「一体何があったんですか?」
「あー、アエナがさらわれたみたいだ。」
続けてエルドラが
「ファルネは向こう側のスパイだったらしい。私は半信半疑だったが、今日のあなたの帰還で我々を宇宙渡航法違反で一斉検挙するつもりです! ここは危ない。とりあえず、出立の準備を・・・」
御堂は険しい表情をして
「おい、もうちょっとわかりやすく話してくれ。何を言ってるかさっぱりだ。」
エルドラが忙しそうにしながら
「簡単に言うと別の惑星の種族間での交流、惑星の渡航を禁止する法律で、全ての種族と宇宙に適応する。つまり、アッシュさんも、我々も君たちも極刑に値します。ここは逃げましょう。」
そう言うとワタルが首を振って
「だ、ダメだよ。アエナがまだ捕まってるじゃないか!」
御堂は声を荒げて
「聞いてたのか? エセ勇者!お前が何しようと勝手だが、ここで全員捕まるわけには行かないくらいわかるだろ。割りきれよ。」
ワタルは街の方へ向かって
「みんなには悪いけど先に準備してて。僕一人で行くから。」
と言い残し本当に一人で向かって行ったワタルは不安もあったが、ひたすらに歩いた。その道は険しくもなければ阻むものもいなかったが彼にとってはとても寂しく、困難な道のりだった。だが、アエナを助けたいと言う一心で自分を奮い立たせていた。
王都につくと待ち構えていたように王都の軍勢が武器を構えて立ちならんでいた。
ワタルは自分の中の悪魔に問いかけた
『ゲイザー、もう一度僕に力を貸せ。』
【彼】は姿形を変え、以前とは少し様相の違う《彼》となっていたのだった。
その姿はある者には悪魔に、ある者には愚直なおろか者に見えたと言う。
次回「決意の朝、そして」
時間が欲しい。




