第09話:砂の惑星 ササラ
時間がかかって申し訳ない!
今回から惑星探索編突入!
ビーコンはワタル、アエナ、そして葉月を乗せて大宇宙へと航海していた。目的地はすぐそこまで来ており、ワタルが外を映像で見るとそこには黄味がかった惑星が映し出されていた。ザーラが小さな体で大きな荷物を抱えて調整室に入ってきた。
「おい、お前ら、次の惑星は砂漠地帯だから死にたくなかったらこのローブでも着とけよな。」
ワタルは会釈をしてお礼をいい、葉月は特になにも言わず、ローブをかっさらうようにして持っていった。誰も取るわけでもないのに、、と横目で見ながらふとワタルが声をかける。
「どうして僕を毛嫌いするんだい?」
「学校にいたころから気に食わねえんだよ、その被害者面が。しかも、その本性は化け物と来た。心の中で思ってたんだろ。『ボクが本気を出せばこんな奴一ひねりだ。』って。」
「そ、そんな事一度だって...っ!!」
船が急にガタガタと揺れ始めた。アナウンスからの指示によると惑星の重力による急速な大気圏突入進路に到達してる、、、要はヤバい状態ってことだ。指示に従い、管制室のシートに座りベルトを着用して万事に備えた。ビーコンは何とか無事砂漠の大地へと着陸した。
キャプテン・アッシュは支給のローブを被り初めに降り立った。
「ここが、初めの目的地、砂の惑星:ササラという辺境の星らしい。ホントにあんのか?」
ナーレが日差しのまぶしさに手で目の周りを覆いながら
「知らねえよ、お嬢に聞けよ。」
するとアエナが気品よく降り立ち
「そのはずよ、そのための彼が届けてくれた羅針盤でしょ。」
少し、みんな表情が暗くなったが
「とにかく、歩こう。話はそれから、ですよねキャプテン。」
ワタルが明るく、先に進むよう催促するとみんながばらばらと、しかし、離れないように間隔を空けて歩き始めた。
歩けど、歩けど、行く道は砂漠の黄色い大地。とときたま顔を出してくるのは巨大なワーム型の生物だった。同じ景色、寝ても覚めても地獄のような気候と広がる地平、、誰もが嫌気がさし、休んでも気分は晴れなかった。しかしそれも終わりを告げた。彼らの目の前に広がったのはオアシス。文明の栄えた『街』と言える場所だった。一番奥に見える神殿のような巨大な建築物の前には男を模した彫像が雄々しく佇んでいた。街中を進むと原住民から異星人らしきものまで様々に街を自由に歩きまわっていた。
キャプテンは
「ここは確かササラで唯一栄えた王国“ハカランダ”だったかな。ここにあるのか?」
「羅針盤の反応が強くなってる。あの神殿みたいな建物の方よ。」
一行は吸い寄せられるように神殿の方へ向かって行くのであったがキャプテンは近づくにつれて何かを思い出して勝手に青ざめていた。ザギャが顔色を見て
「船長、顔色、悪い。」
とつぶやくとドゥージャ・ゼントが
「大丈夫か、お前、もしかして昔ここで何かやらかしたのか?」
するとバツが悪そうに切り出した。
「・・・なあ、お前ら。ここは最後にしねえか?ずっとずっと最後にだ。」
葉月がケンカ腰に
「ふざけんな! くだらねえ指輪集めのために一緒に観光してるんじゃねえんだよ、こっちは!」
逆にアエナは冷静に
「といっても、もう目の前まで来ちゃったわよ。」
と指をさすと入口は確かに目の前だった。入口に立つ衛兵はアッシュの顔を見ると顔を合わせて
「アッシュ・ゴ・ルドーだな! 国王がお前に逢いたがっている。お仲間も一緒にご同行願おうか。」
一瞬にしてワタル達は周りを衛兵に囲まれていた。葉月は暴れようとしたがナーレが食い止めて
「どーせ、この建物に用があるんだし、ここはお誘いに乗ろうぜ。ハズキちゃん。」
衛兵に囲まれて入った神殿は王の居城であった。
憂いげな表情で玉座に座る人型は原住民の特徴である、地球人と変わらない基本的な見た目で小麦色の肌、そして黒くギョロっとした大きな瞳だった。
王の見た目は成人男性のような感じで周りには多くの使用人がずらりと並んでいた。
王は艶やかな声で
「アッシュ、なぜ私から目をそらす。恥ずかしがるな。」
嫌そうな顔をしながらアッシュが
「イゼル陛下、俺を覚えてましたか、、」
イゼル国王はアッシュを見た後、葉月に目がいき彼の事を聞き始めた。
「そこの楯を持った男よ。そなた、名は?」
葉月はいらいらしながら
「あ? なんだよ人の顔ジロジロ見て。」
アッシュは焦って
「おい、ハズキ! てめえいい加減“郷に行っては郷に従え”的な精神を学んだらどうだ?」
「ほう、ハズキというのか。ならハズキよ、我のハーレムとなれ。アッシュもその約束忘れておらんだろうな。」
王の言葉にワタルは不思議に思い
「え? 普通は女性じゃないの? 男同士でハーレムなの?」
国王は玉座から立つと
「我が王国に古くから伝わる創世神話によると二人の男によって国がつくられ、そして女を生み、女は女と文明を作り、栄えさせたと、、ならば我々も男同士、女同士で契りを交わし、栄える事が出来るとここまでやってきたのだ。すばらしい世界と思えないのであれば、君たちには用はない。“共食い”の牢にでも入れておけ。」
葉月、アッシュだけを王の客間へと連れて行き、ワタル、アエナ、ザーラ、ザギャ、ゼントは衛兵に一連の鎖手錠を付けられて地下へと無理やり運び込まれるのであった。
ワタル、アエナ、ザーラ、ザギャ、ゼントの前には薄汚い牢屋が立ち並び、その中には“共食い”と呼ばれている罪人たちが陰鬱そうに彼らを眺めていた。




