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【完結済】冴えないワタルは異世界勇者より勇者らしい。  作者: 小鳥 遊
第二章:やはり冴えないワタルは勇者らしい。第一部;終わらない旅
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第08話:それぞれの旅立ち②

久方の投稿ですね。

私生活も大変なので中々折り合いがつかない更新頻度ですが

お付き合い頂けるとありがたいどす。


宇宙の旅編はいよいよ次なる惑星へ

異形の姿となったワタルはデスクローチを圧倒、蹂躙した。

その乱暴で、衝動的な力を見たアエナ達は若干恐怖を覚えた。こちらにも牙をむいてきそうな危なげな脅威は雑兵を一騎当千していった。

剣の一太刀が地を這い、食い荒らす白蛇のような斬撃を呼び、無造作にその毒牙をむけた。毒牙の猛威はアエナ達をも襲った。デスローチ軍はなす術もなく、無惨な残骸となった。アエナ達は何とか回避することは出来たが、狂戦士となった“それ”は牙を納めることを知らず、アエナ達が退避するビーコンの方へと向かって行った。


アエナ達は必死に抵抗はしようとしたが、元はワタルだと知っているが故に手が出しずらくなっていた。それをよそに意識を取り戻した御堂は必死に抵抗、いや嫌悪を向けながら戦っていた。


「ふざけんな! 何が勇者だ、ただの邪魔な化け物じゃねえか!」


抵抗空しく押されていく御堂だったが、この騒動に駆け付けた一人の戦士がいた。そして颯爽と現れた“彼”は雄々しく叫びながら激しい蹴りでワタルを御堂から引き離した。


「おおおおおお! 愛のジャスティスキック!! からの正拳突きー! チェストォォ!」


力負けするワタル、膝を折るも立ち上がった。物言わぬ戦士とは相まって彼は叫び続けた。


「ワタちゃんのバカァァァァ! こうなれば秘伝奥義ね。『究極奥義 無限エターナルハグ』」


両手を白鳥のようにしなやかに広げるとワタルを文字通りハグした。その威力が凄まじいことは謎の異音が単純にしていた。ワタルは彼の中で苦しみもだえ、意識を失った事で元の姿に戻っていた。


気を失ったワタルを一度寝かせて現れた男が口を開いた。


「すごい騒ぎになってると思ったら、アエナちゃんは帰ってきてるし、それにワタちゃんまで・・・。」


「エル姐さん、いきなり帰ってきてごめんなさい。緊急だったから。・・・ワタルはリングの情報集めで地球に降りたバラッカスと対峙した時に会えたの。」


「誰だ、このおっさん。」


空気も読まずに入ってきた御堂はデリケートな質問を悪びれもせずにした。


「おっさんじゃないわよ! アタシはオネエさん❤のエル・シドって言うの。口は悪いけど顔は悪くないわね、ぼ・う・や。」


アッシュは煙たがりながら


「エル・シド、用がないならさっさと国に帰れ。」


「イケメンキャプテンじゃない。相変わらずそっけないわね。でも、こんな大変な時に、しかもウルフちゃんまでやられちゃって...旧友の弔いくらいやらせなさいよ。」


しばらく無言の鎮魂の時間に浸っていると治療していたナーレの驚きの声と共にワタルが痛みを訴えながら起き出した。


「うがっ・・・!! いててて、、、」


「うわっ、暴れんなよ急に!」


「ワタちゃん、大丈夫? アタシの声、分かる?」


「え、エル・シドさん?」


意識を取り戻したワタルに一安心していたアエナ達だったが、一人不満を抱く人間がいた。それはやはり御堂葉月だった。


「おい、こんな奴の何が勇者なんだ。お前、何者なんだ? だが、力は力か。お前を殺せばその能力は手に入るのか?」


「やめなさいってば。お姐さん怒るわよ。ワタちゃんも何か言いなさいよ。」


ワタルは静かに下を見つめていた。そして御堂をみんなを見つめながら立ち上がった。


「今回は、本当にごめんなさい。僕のせいでウガルさんを助けられなかった、、余計な被害も出てしまった。だけど、だからこそこれ以上何も出来ないままではいたくない! 改めてお願いします。僕をビーコンのメンバーに入れてください。」


「ふざけんな、悪魔め!」


「お前はすっこんでろ、新人。お前はザギャの所へ行って甲板でも磨いてろ。メンバーに選ぶかどうかは船長キャプテンの仕事だ。」


ワタルの元へ歩み寄るキャプテンアッシュはマントをなびかせ堂々としていた。仁王立ちした彼はワタルに質問した。


「ワタル、改めて問うぞ。お前は我が海賊団に入って何をする。くだらない恩返しか?」


「くだらなくはありません。だけど、アエナだけじゃない。地球にいる家族、そして知り合ったばかりの御堂くんと、その妹さん、、みんな大変な思いをして頑張ってるんだ。それを知った今、僕だけ安全な場所に帰るわけにも行かない。この力をものにして、出来る事をやってみるだけです!」


「フン、大きく出たな。俺としては二度とごめんだが、頑張れよ。入団を許可する!」


「エル・シドさんも一緒なんですよね?」


ワタルはキラキラした目をエル・シドに向けた。エル・シドはそっぽを向き


「アタシは残るわ。」


アエナはワタルの肩に手を置き


「エル姐さんにはこの国を私の代わりに守ってくれてるの。だから一緒に行けないの。私達だけで残りのメビウスリングを集めるの。さ、行きましょう。ザギャさんが次のリングの座標を割り出せたそうよ。」


そう言ってビーコンに乗りこんでいった。


「ワタちゃん、もう一度あなたに会えてよかったわ。こんな形でだけど。アエナちゃんに会えたのもあなたのおかげだし、一緒に戦って、こうしてお友達になれた。大丈夫、あなたなら、あの行け好かないイケメンくんとも仲良くなれるわ。行ってきなさい、勇者ワタルよ。」


ワタルはエル・シドの温かい言葉、そして自身の心のうちを見透かされたような言葉に安心と安らぎ、そして決意が固くなったのを感じた。ワタルは「行ってきます。」と一言言い放ち、ビーコンに乗りこんでいった。ビーコンの乗りこみ口には御堂がおり


「俺はお前をまだ疑っているからな。あいつらみたいにバカじゃない。俺の邪魔をするなら容赦なくお前を敵として倒す。」


「分かっているよ。僕も君の妹さんを思う気持ちは戦いを通じて分かる。だからこそ、僕を、みんなを信じてほしい。」


ワタルは何となく晴れ晴れとした気持ちでビーコンへと乗り込んだ。反対にやりきれなくイライラしながら乗る御堂だった。


アエナ達を乗せ、ビーコンは浮上し次なる星へとアエナの故郷、ミュートを旅立つのであった。

次回「砂の惑星 ササラ」


次回もぜってえ見てくれよな。

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