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turn my road IV

さえゆう外伝最終回です。

今更と思うかもしれませんが、今だからこそ書けたような気がします。

カイとアエナの邂逅は本編第1章、2章での行動に繋がっているのかもしれません。

 旅には終わりがある。マ・ゴンテとの戦いで俺たちにはベ・リット、もとい、オーガスという人間がいびつにも仲間に入った。俺は彼の行動が気になりつつもマ・ゾール城へと向かっていった。


「勇者よ、この世界を救うために魔王を討伐するつもりか…?」


「いがみ合う必要のない2国が魔王の手下のせいで何十年も疲弊しながらも戦っていったのよ。許すわけにはいかないわ。」


「我々は人間の悪意を糧にして生きているのだ。人間が生きている限り、我々は存在し続けるのだ。闇と光は同一なのだ。」


アエナは歩みを止めた。


「それなら共存する道を探していくしかないわね。あなたとだって、きっと一緒になれる。」


「お嬢ちゃんは甘すぎるぜ。悪と共存できるわけがない。彼らはきっと俺たちの領土を、尊厳を奪いに来るぞ。」


「やってみないとわからないでしょ。彼らの居場所を守ってあげていれば道はあるはず」


彼女のまっすぐな目を見ていると本当にやりかねないから怒る気をなくしてしまう。マ・ゾールという大魔王の城はもうすぐらしい。俺たちは本当の勇者ご一行のように魔王の城へと足を運んでいく。なんておとぎ話のような冒険なんだ。そう考えているとオーガスが口を開いた。


「着いたぞ。後はお前次第だ。やはり、お前には生きていてほしい。私を信じてくれた。だから、、」


「だからこそ、魔王に会いに行くの。彼らを信じるために」


魔王の城の重い扉は開かれていった。なぜか俺たちを迎え入れているようだった。中に入ると深い暗黒の色調があしらわれた少し古めの建築様式だった。ろうそくが勝手について行き、階段の上からは黒いローブを羽織って顔の見えないが角が異常に長く生えた異界のものが佇んでいた。


「お前か、勇者というのは」


声から察するに手厚くもてなすつもりはなさそうだ。


「そうよ! 私はアエナ・マクスウェル! 竜神から加護を受けたもの。魔王マ・ゾール!あなたと話がしたい!」


「話などない。ただ、殲滅あるのみ」


マ・ゾールの足元からは黒い水のようなものがこちらに押し寄せてきた。それがこちらに向かってくると目の前に、いや頭の中に何千、何万との霊のようなものが渦巻き、気味の悪い光景が広がっていた。体はしびれて動かなくなり、体全体が恐怖を覚えた。アエナは特に体を震わせて嘆き声をあげていた。するとオーガスは何か呪文を唱えていた。すると黒い物体は引いていき、元に戻っていった。


「闇の魔術を跳ね返すとは、、お前、何者だ。」


「誰でもない。ただ、勇者の使命を助ける眷属なり」


オーガスはアエナの手を取り、心配しながら二人はマ・ゾールに挑んでいった。俺もあんな嬢ちゃんに後れを取られては騎士の名が廃る。そうやって剣を取り出し、自分より数倍大きい魔王に挑んでいった。だが、その時またあの時と同じ事象が起きた。体が動かなくなっていた。さっきのような足元をすくわれるような感覚じゃなく時間で求められたような、、これは時間操作の魔法なのか? そんなことを考えていると目の前のエネルギーの塊が襲ってきた。痺れる。雷属性!? くそ、何でもありかよ。


「勇者、魔王は無属性だが、特定の属性の魔法を無作為で放ってくる。時間操作魔法である暗刻魔法詠唱後に若干の隙が生まれる。そこを狙え! ここは一度倒さなければ話にならん!」


「戦わなければならないのね。分かった。」


そういうとアエナは少し隙ができているマ・ゾールを切りつけた。マ・ゾールは怯んでいた。今だと言わんばかりに俺は剣で何度も切り裂いた。ローブは敗れて中のおぞましい姿が見え始めると傷が増えていき、一方的ながらもマ・ゾールを瀕死までに追い込んだ。


「これで話を聞いてくれるだろ。おい、マ・ゾール停戦協定を結ぶんだ。」



「......みがある。」


「あ?」


「光があれば、、闇もまたよみがえる。すべての痛みを刻め。勇者よ! 暗刻魔法 極」


詠唱が始まるとマ・ゾールの傷はすべて治っていき、その傷を治した後のエネルギーがふわふわとアエナの方に向かっていた。アエナによけろというがよけてもあのエネルギー体はどこまでも追いかけていった。そしてアエナを包んだ。すると突然斬撃が飛び交っていき、アエナは重傷を負った。


「アエナ! 」


「来るな! お前のせいでこうなったんだぞ!」


突然アエナの前に立ちふさがるオーガスは俺にとんちんかんなことを言う。


「何言ってんだ。悪いのはあいつだろ」


「君を信じたから、そして君がマ・ゾールを瀕死に追いやったお前が彼女を殺したんだ!」


「いや、まだ生きているだろ!」

そういうとオーガスは自分が持っている短刀でアエナの心臓を突き刺した。


「てめえ! やっぱり裏切りやがったな!」


「彼女は美しいまま死ねばよかったんだ。それなのに、こんなに見にくくなってしまって、これなら私の手で殺した方が美しい。お前は彼女を救えない。世界も救えない。お前はその罪を背負っていくんだ...」


俺があっけに取られて天を見上げていると、七色の光がアエナに降り注いだ。そして彼女の傷はすぐに癒され、彼女は輝きを放ってマ・ゾールとオーガスの前に立ちふさがった。彼らはアエナの姿を見ると母親に怒られたような子供の用に小さくなり、泣いていた。


『この勇者は愚直なまでにもお前たちを信じて戦った。にもかかわらず、お前たちはそれを踏みにじった。彼女の行動に感動した私が同化し、新たな命を与えました。男よ、最後まで彼女の言葉を信じ守りましたね。しばし待っていなさい。』


そう彼女が言うとまず、マ・ゾールの方に向かって歩き出した。そして頭に手をかざすととマ・ゾールの闇は打ち消されて行き、目玉だけになっていった。あれが本体だというのか。それを彼女は壺のようなものに封印すると、次はオーガスに向かって虚無から弓矢を取り出し、それを射抜いた。すると、闇の心が分離して仮面のようなものと、眷属になった時よりも幼くなり、少年のような姿の人間が現れた。


アエナは胸をなでおろすと、胸に手を当てながら話し始めた。

「これで、闇は封印されました。男よ、これを山の頂上にまつりなさい。そうすればこの国に繁栄を訪れる。ですが、残念ながら彼女、私はここにはいることができない。彼女の帰還をもって恒久の平和を約束しよう。」



「ふざけるな!!」


そういったのは少年となったオーガスだった。


「彼女のためにすべてをなげうったのに、せっかくよみがえったのになんでそんなことするのさ!」


『すべてはあなたの自業自得なのです。オーガス。』


「黙れ、アエナと共に過ごせる世界がないなんていらない。お前も、お前も!すべて、僕が認める世界になるまで旅を続ける。君と僕の永遠の旅をしよう」


そういうとオーガスは魔導書を開き、とても長い詠唱を唱えていった。すると、地面から大樹の根のようなものが生えていき、そしてアエナをとらえた。そして、光が俺たちを襲った。


|:------------------------------------:|



こんな話誰が信じるだろうか...そして俺はなんで思い出せたんだろうか。俺の記憶が正しければ、この世界はオーガスによって一巡した、世界...?いや何週目なんだ一体。すると、騎士団員が俺の部屋に押し寄せてきた。どうやら俺の嫌な予感は当たっていた。魔王軍が攻めてきたのだ。見ると、赤い肌の魔王と、やけに白く、人間のような見た目の魔王の手下が現れた。すると、団員に暗示をかけるとともに黒い甲冑が与えられた。赤い肌の方が手を叩いて話した。


「おめでとう、選ばれた人間よ。お前たちは皮肉にもここの住民を、そして竜神の証を持つ勇者を殺すものとなった。すべてを焼き尽くし、殺戮せよ!」


騎士団員は暴れ始めた。俺は必死に止めた。住民を避難させ、自分の手で可愛がっていた部下を殺した。後味の悪い感覚が俺を襲った。俺は叫びながら戦った。だが、悲しみが、怒りが収まることはなかった。俺は失意に追いやられ、戦意を失った。


「おお、悲しき戦士よ。我が名はサ・タール。気に病むことはない。すべては大魔王の意志のまま。ただ、ゆだねれば安息が得られるのだ。」


安息、、ただその一言で俺はその甘言に乗せられた。初めは気持ちがよかった。意のままに破壊を続ける。だが、それは間違いだ。俺の使命はもっと他にあるはずだ。俺は隙を伺いながらも俺たちを監視するサ・タールと話をし続けた。だが、この男、話せば話すほどいいやつなのだ。今までの俺が恥ずかしくなるほど、不思議にも悪意を感じなかった。むしろ辛そうだった。俺は彼と共に過ごすと同時に自分の記憶の事や彼自身のことなどを話していった。彼自身はここではないどこかからやってきたという。なるほどそれで感覚がずれているはずだ。


 そして、彼女がやってきた。龍神の証を持つ少女、そして、その幼馴染という人間が。彼女の顔は澪映えがある。俺は彼女を見て確信した。一縷の望みと共に、サ・タールに彼女との共闘を提案した。彼は渋々受けたが、アエナ・マクスウェルは俺の知ってる彼女とは違う悪を討つ化身となっていた。その後ろ姿は狂人のそれだった。サ・タールは無残にもやられてしまった。俺は何とか生き残ったが、瀕死の状態だった。それでも彼の元へ行かなければならない...気がした。


「おう、友よ...カイ・ドレクスよ。なぜ、泣く。」


「分からない。ただ、友の死を体感しているようだ。優秀な部下を失い、居場所のない俺と友達になってくれたお前がいなくなると寂しい。」


「私が死んで、もし、お前が言っていた循環が起きたとき、その時は」


「ああ。必ず、彼女を説得して新しい未来を作って見せる。」


「私の、、本当の名前は、、佐江内サエナイ ワタル また、会おう。」


そういうと、彼は息を引き取った。


俺の旅は終わらない。アエナ・マクスウェルの想いも、ワタルの想いもすべて俺は背負って生きていく。何度も何度も失敗してもやり直せる限り、俺が覚えている限り。戦いは終わらない。


Turn to my LORD ...


引き続き本編もよろしくお願いします。

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