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告白は場所と勢いが大切

 それじゃあ反撃開始といこうと思った矢先。ロザリアが声を荒げてもがきだす。


「舐めるなよ人間ごとき下等で野蛮なクズがあぁぁ!! こうなれば……傷はつく……火傷はするがやむをえない! こうしてやる!!」


 ロザリアがカズマの腕をツルでがっしりと掴む。

 そんなことをすれば自分も火のまわりが早くなるというのに……なにを考えているのかしら。


「あった……まだ燃え尽きていない……やってやる……妖魔が……こんなカスどもに屈してたまるかああぁ!!」


 花を伸ばして、燃え盛るカーテンや強く燃えているツルをどんどん体に集めていくロザリア。もう火が弱くなっているカズマとは対照的だ。


「ロザリアさんの体が! まるでほんの少し前のカズマさんみたいに燃え始めましたよ!!」


「ヒヒッ、ヒヒヒヒヒ!! 守るものがあるっていうのは楽じゃあないわねええぇカーズマくうぅぅん?」


「お前……なにをしてやがる……?」


「カズマくん……褒めてあげるわ、アンタの意志の強さ。けど、その強さはあのあやことかいう小娘を守るということから来ている! ならばっ! あの小娘を殺してやる! せめてお前の心の支えを奪ってやるぞ!!」


 今やロザリアは大きな火の玉。

 ごうごうと燃え盛る火の玉の中心からロザリアの声がする。


「ああ! 火の玉がツルで持ち上げられて、ロザリアさんの頭の上に!! いったいなにをする気ですか!!」


 花が暖炉にくべられる薪のように、次から次へと火に入っていく。

 ロザリアの頭の上で、火球は二人を飲み込めるほど大きくなった。


「こいつを小娘どもに突っ込ませてやる!! これだけの大きさの火の玉だ! 小娘二人焼き殺すくらいわけないわああぁぁ~ん!! さあどうするのカズマくん!! 手を離して助けに行かなきゃ、大事な大事なあやこちゃんが死んじゃうわよおおおぉぉ~!!」


「ちっ! あやこ! そこから離れろおおおぉぉぉ!!」


「だめよカズマ。ロザリアの手を離さないで」


「あやこ?」


「あやこさん?」


「……なんだってぇ?」


 カズマも、エルミナちゃんも、声しかわからないけれどおそらくロザリアも、わけがわからないといった顔と声だ。


「手を離さないでと言ったのよカズマ。そこがいいの。カズマと私の間にロザリアがいる。この状況が最高にいいわ」


「よくわからねえが……このままでいいんだな?」


「ええそうよ。そこが一番、告白しがいのある位置よ!」


 カズマは完全に私の恋心に火をつけた。今なら最高の告白ができる。


「カズマ、私達を助けに来てくれて……守ると言ってくれて……本当に嬉しかった。カズマはいつだって私のヒーローで。私の心を暖かくしてくれる。私が生きる希望をくれる。だから私は……私は……」


 今の精一杯の告白を……貴方に送るわ、カズマ。


「――――そんなカズマが大好きですっ!!」


 私の告白は、落ちてきたシャンデリアが地面にぶつかる音と。


「ぎゃああああぁぁぁぁ!?」


 なぜか一人だけシャンデリアに押し潰され、身動きが取れなくなったロザリアの悲鳴でかき消された。


「急にシャンデリアが落ちてきやがった。悪いなあやこ。聞き取れなかった」


「いいのよ。カズマが無事ならそれで」


 落下の衝撃で火の玉も消え、ロザリアの体も火傷を残しているけれど火は消えている。

 カズマはまだちょっと服が燃え続けているけれど、火傷とか本当にないのね。よかった。


「くっ、なぜだ! こんな偶然が!! こんなことでワタシが負けていいはずがないのに!! 重い! なぜこれっぽっちも動かせない!! ただのシャンデリアが!?」


「正直、悔しいですがエルミナにはなにもできません。あやこさんにお願いします」


「任せて。二人分ね」


 今回のことでエルミナちゃんは凄く悲しんだ。その心に傷を負ったでしょう。

 だから、せめて少しでも傷が癒えるように、きっちり倒さなくちゃいけないわ。


「このっ! 動け!! 花を……花をこいつらに巻きつけて……」


 往生際が悪いわね。なけなしの花がちょっとだけ服の袖から出ているわ。


「無駄よ。ちょーっと動きが鈍いんじゃない? あ、カズマ。愛してるわ」


「ギャアアアァァァ!?」


 私の告白をかき消すために、シャンデリアがぎゃりぎゃり音を立てて高速回転し始めた。

 こういうベーゴマっぽいおもちゃとアニメがあった気がするわ。


「え、なんだって? 回転の音が激しすぎて聞こえなかったよ」


 懐かしい気分に浸っていると、お約束の台詞が飛び出しましたよ。

 回転には疑問とかないのねやっぱり。


「ねえ、ロザリア。聞こえる? 書斎っていいわよね。日記があるっていうのが凄くいいわあぁぁ~。半分しか使われていない日記。ってことは半分は白紙よね? そして書斎で、しかも日記を書くんだもの、当然書くものが存在しているわよねえぇぇ~?」


 回転が終わったことを確認してからロザリアに三メートルくらいまで近づき、半分になった日記を投げ返してあげる。書き終わっているページにもう用はないわ。白紙だったページはもう破り取ってある。


「つまり、大量の紙があれば好きな文字を書ける。素敵よねええぇ~」


「文字…………っ!? こっこいつまさか!? ワタシが間違っていた! 本当にヤバイのは……女のほうだったっ!!」


 シャンデリアに押し潰されても、逃げようと必死にもがいている。

 でもまだまだ終わりじゃない。


「ねえカズマ、ちょっと読んで欲しいものがあるの」


「こんな時までか……いや、こんな時だから読ませたい。というところかね。また読めずに終わりそうだけどな」


「そう思っていくつも用意してるから。わかるまでたーっぷり見ていいわ」


 私はせっせと書いた紙をロザリアの上へと撒き散らす。


「やめろ……やめろ……そいつを……そいつを読むなああああああぁぁぁ!!!」


 『好き』『好き』『好き』『好き』『好き』『好き』『好き』『好き』『好き』『好き』『好き』『好き』

 『好き』『好き』『好き』『好き』『好き』『好き』『好き』『好き』『好き』『好き』『好き』『好き』


「うっうわあああああああぁぁぁぁぁぁアアアアァッ!!!」


 シャンデリアごとロザリアを包み込む光の柱が、天井を貫いて天へと昇ってゆく。

 あまりの眩しさに目を閉じ、光が収まってからようやく目を開ける。

 そこにはシャンデリアもロザリアも影も形もなくなっていました。


「まったく、恋する乙女も楽じゃあないわね」


「あーあ、極光魔法ファイナルシャイニングスペシャルのせいで見えなくなっちまったな」


 まだ光のせいでよく見えないカズマがお約束のセリフを口にする。

 光りすぎよ。目がちかちかするわ。


「きゃああぁぁ!?」


「エルミナちゃん!?」


「エルミナ!?」


 後ろから聞こえた叫び声にあわてて振り向くと、両手で顔を隠して、指の隙間からこちらをちらちら見ているエルミナちゃん。

 特に怪我はないみたいだけど……少し遠くてわからないけどロザリアが生きていたというわけでもなさそうね。


「カッカズマさん!! 服! 服を着てください!!」


「服?」


 そしてカズマを見てしまった。なんの気なしに。ごく自然に。

 なにがあるのかなー? くらいの軽い気持ちで見てしまった。

 服が全焼し、ボロボロになった服の欠片すら、ファイナルなんちゃらで吹き飛ばされて全裸のカズマを。


「あ、悪い。焼けて吹っ飛んじまったみたいだ」


「いいからさっさと服を着なさい!!」


 あーあモロに見てしまった……小さいころとはその……違うのね。

 体つきも筋肉とかで男らしいがっちりしたものになっている。

 なにもこんな状況で見ることにならなくてもいいじゃないの。


「おおぅ……男の人って……凄いです……」


「エルミナちゃんも見ないの!」


「服って言っても他人の家だぞここ」


「もう一回カーテン巻きつけときなさい!!」


 せっかくかっこよかったのに……本当にかっこいいまま終われないわねえ私達って。


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