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妖魔の弱点を探せ

 ロザリアさんの弱点を探すため、書斎を荒らす私達。

 この部屋も三人家族で住めるくらい広い。三十畳はあるわね。


「広いですねえ。こういうお屋敷の探索に必要なものってなんでしょうね?」


「……クランクとバルブハンドル?」


「……くら?」


「なんでもないわ」


 壁にはずらっと本棚が並び、窓も本棚でふさがっているため、光が差し込まない。

 高い天井の大きなシャンデリアも、揺れながら本当に小さい光を頼りなさ気に発するだけ。


「基本は机からですよね」


 木製の、私が寝ても余るくらいの大きくて豪華な机と椅子がある。 


「私達がやることは花の正体を調べることと、日記を手に入れることよ。机の引き出しは調べておくわ」


「では本棚を調べますねー」


 引き出しは鍵のかかるタイプじゃない。調査の邪魔にならないように下の段から開けていく。花壇の作り方の本だ。ぱらぱらめくるけど無関係ね。


「うーむ、なんだか物語の本が多いですねー。ジャンルは推理・恋愛・冒険なんでも手広くありますねぇ」


「ヒマなんじゃない? 陽の光に弱いとか言ってたし。家にこもるでしょ」


 次の段はペンと……家計簿? 意外と几帳面ねあの人。でもハズレ。

 どんどん開けていくと、タイトルのない一冊の本。


「これかしら?」


 開いてみると大当たり。半分ほど使われている日記だ。

 本当にマメね。全部日付と体調について書いてあるわ。


「あったわ。とりあえず一つ」


「おおーお手柄ですね」


 半分しか使われていない日記と同じものが三つ出てきた。

 こっちはびっしり書かれている。なんにせよペンと紙があるのは助かるわ。


「これによると……三ヶ月前には来ているわ。日光もそうだけど、光や炎に弱いみたい」


「だからこの部屋は日光が当たらないのですねぇ」


 窓は全部本棚でフタがされているものね。されてなくっても、どうせもう夜でしょうけど。


「花は日光を遮る盾であり、外敵や獲物捕縛用の罠。自分の意志である程度の操作が可能。最初はロザリアの能力じゃあなかったのね」


 花は放っておいても雨水で育つらしい。

 日記には最近になって、花が今までより自在に動かせるようになってきたこと、成長が早くなっていることが書かれている。


「花が手足のように動くのが便利だったので、巻きつけたら同化してより便利に! って書いてあるわ」


「アホですねぇ……ひゃわあ!?」


 お屋敷が大きく揺れる。派手にやっているわねえカズマ。


「まだカズマは無事ね。急ぎましょう」


「無事なんですか!?」


「小さい揺れが続いているでしょう? これは戦いがそれだけ壮絶なのよ」


「どんな戦い方をしているのですか……」


 とはいえ、カズマに甘えてばかりいてはだめ。自分ができることをしましょう。。

 そのまま読み進めると妖魔という単語がちょくちょく出てくることに気づく。


「妖魔は存在が一つの美。誰にも屈しない……ですって。エルミナちゃん。妖魔ってなにかわかる?」


「よ-ま? 多分ですけど……」


「いいわ。話して」


「人間より長生きで、魔物より強い。自分たちは人間以上に強くて美しい存在だーっていう種族です。もともと数が少なくて、何十年も前にほとんどが戦いの中で死んじゃったって聞きました」


「どうもその生き残りらしいわよ。怪我の治療のために引っ越してきたんですって」


「うえぇ!? そんなのがこの街に……気づきませんでしたよぅ……」


 ロザリアは人間の栄養を摂取して永遠に若いままで生き続ける。

 代償として光に弱くなってしまい、メイドを雇って生活しているらしい。

 魅了でメイドを手に入れて、死なないように栄養補給に使う。やっかいね。


「じゃあ最近いなくなったお店の子は……」


「お店だけじゃないわ。もっと多くの人がここにいるのよ」


 そのまま読み進めると、よりやっかいなことが書いてある。


「別の国で偶然瘴気の結晶を取り込んだことがきっかけで、さらに集めてパワーアップを図ったところ、星の巫女に浄化されかけた。ですって」


「ふんふむ。顔と名前を変えて潜伏。怖いですねえ」


 そんなものを取り込んで、さらに追加しようという発想が一番怖いわ。

 その後、この国に来て収集が進まなくなっていったらしい。


「国を間違えたと後悔しているみたいだけど……?」


「この国は善政中毒の王様が治めています。瘴気が侵入しないように幾重にも結界が張られ、定期的に清められていますので、収集は捗らないのでしょうねー」


 そして栄養補給のためにメイドを集める形を取った。最悪ね。


「星の巫女……巫女ならあれを浄化できるというの?」


「そういえばあやこさんも星の巫女ですね! どどーんと倒せたり……」


「私はカズマがいないと無理よ」


 告白できなきゃ普通の女子高生です。どうしようもないわ。


「では弱点の火……本とか燃えそうですけど……もったいないですね」


「そうね、光で考えて、だめなら燃やすことも考えましょう」


 そんなこんなで本棚も調べることになりました。


『世界の歩き方』

『花壇入門』

『どうしてイケメンは発生するんだろう?』

『モテモテボディを極める。いわばケツだな』

『今日からできらあ! 同じ値段で愛情料理』


 見事に節操ないわね。本なら何でもいいのかしら。


「光……流石にシャンデリアをどうこうするのは無理ね。よし、とりあえず机の上の明かりと、寝室から使えそうなものを持ってきましょ」


「はーい!」


 寝室はベッドとクローゼット、小さいテーブルと椅子だけ。

 寝起きすることだけに使うタイプなのかしら。ベッドは豪華だけどそれだけね。

 おかしなところはないわ。


「完全に固定されてて外せませんよこれ……」


 寝室の壁にかかっていたランプは固定されているから使えないわね。

 机にあったランプ一つじゃ目眩ましにもならない気がするわ。


「無理はしないでおきましょう。地下室への階段とかないかしら?」


「本棚の本を入れ替えると、うしろに入り口があったりするやつですねー」


「そうそう……クローゼットには服しかないわ。無駄な物は置かないタイプなのね」


 豪華ではあるけれど、ごく普通の部屋だ。

 秘密の部屋なんてありそうもない。


「お花は一階で栽培されているんですよね?」


「おそらくね。でも花壇にも同じ花があったわ。核がロザリアだった場合、駆除もできないから、花そのものよりロザリアをなんとかしましょう」


「はーい。なにか出ろー。弱点アイテム出ろー」


「弱点は寝室に置かないと思うわよ」


「寝苦しくなりますもんね」


 ほぼ収穫無しでささっと書斎に戻る。


「書斎の照明はそのままにしておきましょう。少しでも違和感は減らすのよ」


 あらかじめ部屋で火種を作ることも考えたけど、煙でバレる。

 火が強くなって落ち合う場所が変わったら、カズマに会える確率が減るので却下。


「そういえば、なにか……静かすぎない?」


「脅かさないでくださいよ……」


「さっきから戦っている音がしないわ。揺れも収まった。急いで準備しないと」


 机に向かい、せっせと準備を進める。カズマが来る前には終えなければならない。


「あやこさん、さっきから日記になにしてるんですか?」


「ちょっとね。カズマが来た時の準備ってところかしら。よし、まあこんなものね」


 なんとか作業を追えた。これが無駄にならないよう、祈りながらカズマを待ちましょう。


「んん? それは……?」


「これ? これはね……」


 しばらくしてドガン! と扉を壊して現れる大量の花。

 まずいわね。カズマに先に来て欲しかったんだけど。


「見つけたわ……人の部屋でなにをしているのかしら?」


 ロザリアだ。とにかくカズマが来るまで時間を稼がなくては。


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