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断章『見えざる剣』8

あけまして、おめでとうございます。

細々とではありますが地味に更新しますので、物好きな皆様、お付き合いください。

一応、3月いっぱいまでに、玖堂タマモと入間ナナミの2025年パートに戻る予定……です。

「話が違う! 〈年代記(クロニクル)収穫者〉(ハーヴェスターズ)はこの国では完全に駆逐されていて、害獣や害鳥レベルの雑魚しか残ってない、そう聞いてたのに!」


アメリカ海洋連合国の軍服を着た小柄な二人組のうち、ひとりが拳銃を両手で構えてそう叫ぶ。

外出時には一応の着用が義務付けられている制帽に隠れているが銀色の髪は目立つ。

14、5歳の凛々しい少年に見える。


「ラネブ様、それは〈忘却戦争〉あるいは第三次世界大戦という〈大断絶〉一歩手前の災厄を生き延びた古強者(ふるつわもの)にとっては、という前置きもあったはずです?」


先行していたもうひとりは後ろを振り返らず緊張感に欠けたのんびりとした口調で補足説明した。

金色の髪をツインテールにして結わえ、メガネをかけた少女は拳銃ではなく、手のひらサイズの六面体サイコロ状の物体を両手でつかみ、その表面に立体表示されるタイプライター鍵盤を叩きながら中央公園に向かって走り続けている。


彼女が操作しているそれは自律型知性体(ヒューマニッカ)の情報処理能力をアデリーランド条約に従って制限し、ある程度の機能だけを行使できるように設定された情報端末機器――論理拡張立方体(ロジック・キューブ)だ。


「ミシュレット、まだ見つからないのか? 支給品の弾丸じゃ、アルケミックチャージのレベルが低いっ!」


ラネブ・テクフールが発砲するたびに、黒いアメーバ状の怪異――〈年代記(クロニクル)収穫者〉(ハーヴェスターズ)の表面にはその行動を抑制する霊波動が拡散して、数秒ほどは活動が停止する。

だが、それは文字通りの瞬間的なものでしかない。


「ラネブ様、古い妨害装置とシェルターが残っています。新宿中央公園、だそうです」

「案内してっ!」


バギルスタン王国の摂政として活動したシエラザード・テクフールの子であるラネブと従卒として付き従うミシュレット・バーネットは、怪異に追われて、新宿中央公園へと逃げ込んできたのだった。

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