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断章『見えざる剣』5

と、とりあえず、これだけでも更新を……。

タマモは跳躍と疾走を続けながら攻撃に転ずる間合いを図っていた。

後方から迫ってくる何者かは明らかに敵対的な霊力を放射している。


「警告はしたわよ」


少女の指から呪符が離れて風に舞い、空に解き放たれた。

光を屈折させておのれの姿を隠している何者かは、それを避けて追跡を続行しようとしたが――


「一文字流符法・衣絡(ころもがらみ)


ビルの屋上貯水タンクに着地して振り返ったタマモがつぶやく。

すると、風にそよぐ一枚の呪符は万華鏡に映したかのごとき無数の分身を生成させて不可視の追跡者の全身にまとわりついてその動きを拘束する。


「キド大尉、玖堂です」


タマモは左手首に巻いた大振りな腕時計を口元に近付けてから呼びかける。


「わたしの呪符で拘束した不審者を置いていきますので確保をおまかせします。はい、このまま中央公園まで」


タマモにとっては追跡者のことよりも、危険に陥った可能性のある弟の方が気がかりだった。


「待っててねイサミ。お姉ちゃんがすぐ行くから」


無数の呪符に包まれてミイラのようになった何者かが移動することもできず落下していくのを見届けると、すぐに当初の目的地である新宿中央公園へと――


「なるほど。これがあまたの同志を葬ったというバビロンの魔女の成れの果て……というわけですか」


落下途上の空中で、その人型の塊は停止する。

同時にタマモも足を停めて再度、振り返った。

胸元に手を差し込んで新たな呪符を取り出したが、その時点でもう、拘束は破られてしまう。

白い神父服の男はその宗教の開祖が湖上を進んだのと同様に中空を闊歩する。


「私はカイン・エピファネスという神父でしてね、先を急いでいるのですよ玖堂タマモさん。謝罪してくださるのなら、今のお茶目は見なかったことにして差し上げよう」

傲慢(ごうまん)な物言いね。あいにく、あなたの素性をローマ教皇国大使館に問い合わせて確認を取る時間的余裕など無いわ。破壊活動をするテロリスト扱いされたくなければ、大人しく誘導に従いなさい」

「断る、と言ったら?」


外見的な身体的特徴は映画俳優かモデルでも似合いそうな白人男性が胸元の黒い十字架(ロザリオ)をもてあそびながら問う。


「――仮打(かりう)ち」


タマモの指先にあった短冊状の呪符は霊波動を受けて変化する。

彼女に手に握られたそれは一振りの木刀で、カインという男の問いに対するわかりやすい答えだった。


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