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説得

 目を開けると、布団の横に春芳が座っていた。思っても見なかったことで少しだけ焦っていた。

「おはよ。大丈夫か?」

「おう。まあ大丈夫だ。それより――」

春芳が、ん? という顔をした。

「ミサキが居た」

彼の表情が強張った事が見て取れた。直ぐに返答がなかった。

「春芳、大丈夫か?」

 硬直している春芳を先程と同じように見上げる。

「あ、うん。ミサキが、居たのか……」

「でも、あいつは」

僕は確認するように間を開けた。

「死んでる」

「そうさ。ミサキは死んでる」

「でも、あいつは、自分が死んでる事に気がついていないみたいなんだ」

 春芳の表情はまだ硬いまま僕の話に半信半疑で耳を傾けているみたいだ。

「それでも、あいつが死んだ事は変わらない……。幽霊になったとか――」

「待て! それはありえるか?」

と春芳。

「でも、それしか考えられない」

 僕はかなり大真面目に言った。眠る前の恐怖心は何処へ行ってしまったんだと思うくらいだ。ミサキが会いに来てくれたんだと思えば、怖さなんて可愛いものだった。

 真剣にミサキが幽霊になったと言っても、彼は笑いはしなかったが信じようとはしない。

「春芳は会った、というか、見たか?」

「見てない」

少し戸惑いながら言ったように感じた。

「僕は見た。この目で確かに見たんだ。さっきまでここに居て、僕の脇腹を押した。確かに、だ。なあ、信じろよ」

 すがりつくように彼に言うと

「……ああ、信じるよ」

と言った彼は心成しか元気が無く見える。

「お前はまだ寝てろよ。きっと疲れてんだよ」

 言いながらぼくに布団をかけた。

 春芳はぼくに、まだ寝てろともう一度念を押した。

 ぼくは黙って受け入れた。

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