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葬儀(帰り道)

 春芳はぼくを家まで送ってくれた。「お前、死にそうな顔してるから」だそうだ。

 ぼくはそんなに窶れてるのかと思った。自覚症状がまったくと言っていいほど無かった。

「良太、明日学校は無理すんなよ」

「ああ、うん。でも行くよ。うじうじしてたって駄目だろ。ミサキが怒りそうだ」

 葬式の後に彼女の話を出していいものか少し躊躇ったが、ぼくは気にしていたらダメだと思うキャラだから、言ってしまう。

 春芳の反応はと言うと少し苦笑して、

「それもそうか」

と言ったのだった。

 その後じゃあな、と言って別れた後、一人静かな家に入った。

 自室に戻り、ベットに深く腰掛けるとそのまま寝転がる。今は身体からだを休めるべきだと判断した。数分後の記憶は無く、気がつけばそのまま朝になっていた。


 ■ □


 夢を見た気がする。ミサキと海へ行く夢だ。

 彼女は真っ白なワンピースを着て、白い帽子を手に踊るように走っていてまるで小刻みにステップを踏む様だ。

 長く白く美しい浜辺を走る二人は、きっと綺麗だったに違いない。優しい潮風と柔らかな日差しがぼく等を歓迎していた。

 ぼくはミサキについて行ったが彼女はぼくから逃げるように、すっと手からすり抜ける。両手で掴もうとしてするけど何度やっても同じことだったのを覚えている。

 気がつけば海を上から見下ろす場所に出た。ミサキが連れて来たんだと思う。

 不意に夏の香りがした。香るものはどこにあるのだと周囲を見渡す。

 くるりひらりと回転しながら、スカートを翻し駈けて行くミサキは目を奪われた。いつもの彼女とはまるで雰囲気が違いやっぱりこれは夢なのだと一人思った。

 彼女が向かった先には一輪の向日葵が空に向かって力強く咲き誇る。丘にぽつんと寂しく咲いていたような気がした。一人の寂しさを思わせないように強がっているみたいにも見えて、ちょっと笑えもした。

 ミサキが手を伸ばし、向日葵の花弁を一枚捥ぎ取った。その花弁を唇にもって、小さく口付けをしたところで目が覚めたのだ。

 ミサキの夢を見るなんてどうかしていると思った。

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