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小屋

「・・・あれ、ここは・・・?」


気がつくと、俺は小屋の中に居た。辺りを見回せば、隣には緑のローブを着た細身の見知らぬ男性。


「目が覚めましたか?」


その男性が俺に声をかけた。俺が起き上がると、胸部に激しい痛みが襲ってきた。


「まだ動かない方がいいですよ。骨が何本か折れていると思いますから。私はあいにく治癒魔法が使えないんです。申し訳ない」

「お、俺は・・・」

「森の中で木を切っていたら、あなたが近くに落ちてきたので、私の小屋に運んできました」


そうだ、俺は、リディを追いかけてウーアから落ちたんだ。自分の身体に包帯が巻かれていることに気がついた。やはり動くのは無理があるようだ。


「あの、助けていただいてありがとうございます」

「いえ、礼には及びませんよ。それにしても、あなたは武芸の心得がおありですか?あの高さから落下して頭を打たないなど、受身をしたとしか考えられません」

「特には。きっと運がよかったんだと思います」


頭を打たなかったなど、自分では信じられなかった。だが、特に頭部に痛みが感じられないことで、本当だということがわかった。


不思議に思っていた俺に、その男性はふっと微笑んだ。


「相当な運の持ち主なのですね、あなたも、あの方も」

「あの方・・・まさか、リディ・・・!?」


リディもここに落下したというのか。だとすれば、俺は守るべき者を守れなかったということだ。


「金髪の、美しい女性です。今は隣の部屋で休ませてありますよ。彼女は湖に落下したので、たいした怪我はしていません」

「そうですか。・・・よかった」


俺はとりあえずリディの命が無事だったことに、ほっと胸をなでおろした。


「申し遅れました。私はアキム・バラクシナ。この森で、木こりをやっております」

「俺はミシェル・バルビエです。本当に世話になりました」

「まだこの森を出ない方がいい。朝方のこの森は危険だ。ましてやその身体では、この小屋に留まるより他ありません」

「で、でも、俺たち急いでるんです。何か、方法はありませんか」


アキムさんは少し考え込む。そして、ふと何か思いついたように俺を見た。


「私は朝、木を切っているときに見たのですが、あなたたちは、もともとドラゴンに乗っていたのでしょう?」

「ええ。黒い、ドラゴンに」

「では、私がその黒いドラゴンの行方を辿ってみます。あれほどの魔力ならば、すぐに特定が出来るでしょう。行き先がわかれば、日がしっかりと昇ってから、そこへ向かえばいい。焦らなくていいんですよ」

「・・・」

「それとも、何か焦らねばならない事情がおありですか?」


見透かしたように言うアキムさんに、俺は一瞬答えに詰まった。俺たちの身の上を明かしてもいいものか、と。


いくら、ティールの外に住んでいる人といえど、ティールの兵が万が一、捜索に来てしまったら、俺たちを差し出さなくてはならないだろう。


だがしかし、助けてくれたのも、また事実。


「・・・追われてるんです、俺たち」


当たり障りの無いようにただ、それだけ言った。実際には、これから追われることになるのだが。アキムさんは少し驚いた顔をしたが、すぐにもとの静かな顔に戻った。


「そうでしたか。では、ここの小屋に隠れているといいでしょう。この小屋は、なかなか人に見つからない」

「・・・ありがとうございます。ご迷惑をおかけします」

「何も無い家ですが、ゆっくりしていってください。今、暖かいシチューをお持ちします」


そう言って、アキムさんは部屋を出て行った。俺は自分の座っているベッドにぽふっと身体を落とした。


(こんなところで、足止めを食らっている暇は無いのに・・・)


ひとまずはリディが無事だったことに喜ぶべきか。


しかし、これからエーリカ達とちゃんと合流できるかということがかなり不安で仕方が無かった。


(考えても始まらねーな・・・)


アキムさんがいろいろと図ってくれるらしい。それを信じて待つしかない。今の俺には、何も出来ることはないのだ。


俺はそう悟った直後、例えようもないほどの眠気に襲われ、そのまま目を閉じた。



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