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ティール国


風になった(自分じゃ実感湧かないが)俺達はとうとうティール国へと侵入する。


ドーラフは乗ってきた馬達に合図をして、馬達をガルナルの民のもとへと帰らせた。


こうして俺たち三人は、ティール国の門をくぐる。


普通なら俺たちは門兵たちの視界に入っているはずだが、まったく反応を示さない所を見ると、魔法は無事成功したようだ。


門をくぐりながらちらり、と横目でドーラフを見ると、ほっとした表情を浮かべていた。


ドーラフもちゃんと成功する確信がなかったから安心しているのだろう。


俺達は物音を立てないように静かに門をくぐり終える。そしてそのまま手近な路地に入った。


「じゃあ魔法、解きますね」


その言葉に俺とリディは頷く。ドーラフは周囲に人がいないのを確認すると槍を地面に立てて解除の魔法を唱えた。


相変わらず変化は感じられないが、どうやらもう他人にも俺たちの姿が見えるようになったらしい。


「・・・ひとまずは上手く潜入できたようだな」


リディが辺りを注意深く観察しながら呟く。俺も周りに目を向けてみる。

戦の国というだけあって、建物も鉄で出来ていて頑丈だ。シゲル国は家の原材料は主にレンガなので、景観からしてまったく違っていた。


「とりあえず、表通りに出ましょうか」


ドーラフが促す。リディは、シゲル国を出るときに使ったフードつきマントを羽織って、そのフードを深くを被る。


そして俺達は改めて表通りに出て、ティール国の全貌を目にした。


まさに、要塞。


帝王のいるであろう城を守るように家が立ち並ぶのはシゲルも同じだが、この国では、高い所にある家々は皆、町の外に向かって大砲が取り付けられていた。


そして極めつけは城の頂にある大きな大砲。とても威圧的だ。


「で、でけぇ・・・」


俺が感嘆の声を漏らすと、ドーラフも頷いた。


「ええ。僕もティールに来たのは初めてですが、まさかこれほどとは・・・」

「二人とも、ぼーっとしてる暇はないぞ。一刻も早くあの城に侵入する方法を考えなければ」

「そうですね。これほどに戦闘に特化した国です。たとえ門が開いていたとしても、恐らく中には高レベルの魔術師がいることでしょう。そうなれば、先ほどの魔法は通用しない」

「なるほどな・・・」


俺達は腕を組んで考える。だが、リディはそんな俺たちの横をすたすたと通り過ぎた。


「お、おい・・・リディ?」

「こんな所でとどまっていたって手段が見つかるわけじゃなかろう。俺は一足先に情報を集めに行く。ちょうどあの辺りなんか人も大勢いるからな。そこの広場に噴水がある。少ししたらそこで待ち合わせだ。いいな」


そうリディは俺たちに告げると、俺の返事も待たずに、ずんずん先に行ってしまった。


「おい!勝手に動くな!もっと慎重に・・・って、もう見えなくなっちまった・・・!」


人ごみに紛れ、すぐにリディの姿は見えなくなり、俺は落胆する。


「ミシェルさん、まずいですよ。俺達はこの国にとって招かれざる客です。それがばれたら、リディさん、どうなるか・・・」

「ああ。だな。一刻も早く追いかけるぞ」


俺は額に冷や汗をかきながら大通りを大股で歩いていった。



町は活気があったが、どこか物々しい雰囲気に包まれている。この国で何かあったのかとも思ったが、そんなことを考えている暇もなかった。


「リディ~!どこにいるんだ~!リディ~!」

「リディさーん、どこにいるんですか~!」


俺たちが大声で呼び続けるも、見当たらない。一瞬、大声でシゲル国の王女の名を連呼のはさすがにまずかったか、と思ったが、リディという名はそう珍しい名前でもなく、ましてや、こんなところに別の国の王女がふらふらしているなどと誰も思わないだろうと、さして気にしないことにした。


「・・・いねーな」

「ですね・・・」


俺たちが落胆しかけたときだった。


「おにーさんたち、人捜し?」


そう声がして俺達は振り返った。そこにいたのは14歳くらいの子供だった。橙色の髪を、可愛らしいサクランボのついたゴムで横に止めたあどけない少女。だが、そんな見た目とは裏腹に、胸当てをして背中に大きな剣を背負っていた。


「えっと、君は?」


ドーラフが少し警戒しながら聞いた。少女は顔いっぱいに笑顔を広げて話す。


「私はそこのギルドのメンバー、エーリカだよ。おにーさんたち、人捜しならあのギルドに頼むといいよ」


そうエーリカが後ろの建物を親指で示した。恐らくこの建物がギルドなんだろう。


ドーラフは俺をちらりと見る。


この国の機能を頼るのは危険ではないか、と目で訴えてきた。俺も同じ意見だ。俺たちが動けずに立ち止まっていると、エーリカが俺たちの腕を掴んだ。


「ホラ、そんなところで立ち止まってないでさー!早くおいでってー」

「ちょ、おい、引っ張るなって・・・」


こうして俺達はなす術もなく、半ば強引にギルドに連れて行かれた。

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