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実戦


リディの稽古ははっきり言ってスパルタだった。


何のためらいもなく打ち込んでくるし、めちゃくちゃ痛い。それに素早さ300を余す所なく使って動き回るから攻撃も当てられん。それに俺がへたり込むと容赦なく木剣で打ち込んでくるから休む暇も無い。


「リ、リディ・・・もうちょっと手加減ってもんをだな・・・」

「何を言っている。戦場ではそんな言葉通用しないぞ」

「いや、確かにそうだが・・・」


レベル5にそんな本気で来られても・・・。


リディはふっと笑う。


「だが、お前は確実に強くなっているぞ。VSD、見てみろ」


そう言われて、俺はVSDを立ち上げる。俺の場合、魔法使いではないので、左手につけているリングがVSDを立ち上げる媒体となっていた。


そのステータスを見て、俺は目を疑った。




ミシェル・バルビエ(20)


職業:剣士 Lv12


攻撃力:45

防御力:20

生命力:100


俊敏さ:5



や・・・やった!脱レベル一桁!


ここまで成長しているなんてビックリだ!


俺が感極まっていると、リディは後ろから俺のVSDを覗き込んで呟いた。


「・・・俊敏さは相変わらずだな」

「いや、そこは目をつぶっててくれよ!?」


確かに俺も思ったけどさ!なんでレベルが7も上がって俊敏さが2しか上がんないんだよ!そんだけ鈍くさいってことか、ちくしょう。


リディは木剣を握りなおして言った。


「まぁいい。もう日も暮れたことだ。そろそろ最後の稽古に移ろう」

「最後・・・?」


まだこれから何かやるのだろうか?訝しげな顔をしている俺にリディは言った。


「いいか。このように模擬戦だけではこの先、強敵が出てきたときに生き残れない。そのような状況になったときは俺たちの息を合わせることも必要だ」

「ふむふむ」

「そう。模擬戦だけでは生きていけない。だから、最後に本日のまとめとして実戦をしようじゃないか」

「・・・は?」


何を言ってるんだ?このお姫様は。


「お、おいおい。何を言ってんだよ。実戦て、そこらの魔物を狩りにいくのか?もう夜だぞ?」

「心配するな。ちょうどいい敵が周りに居る。・・・居るのだろう、貴様ら」


リディが小屋の物陰に向かって言い放つ。すると、数人の男達がでてきた。どの男もバンダナと剣という、いかにも盗賊といった風貌だった。


「嬢ちゃん・・・いつから気が付いてた」

「この小屋を見たときからだ」

「じゃあ、嬢ちゃんがここに泊まったのは俺らへの挑戦って受け取っていいんだよなぁ?」

「無論だ。お前達はシゲルへ受け渡す」


静かに火花を散らすリディたちに俺はみっともなくわめいた。


「な・・・なんなんだよ、こいつら!?」

「見ての通り盗賊だ」


驚いている俺に、リディが説明する。


「この小屋はこいつらの罠だ。ここに泊まった者の身ぐるみを剥いでいくのがこいつらのやり方だ。シゲルでも行方を追っていた者達なんだが、ちょうどいい。一網打尽にするぞ」

「お、おいおい!そんな勝手に・・・!」


俺の言葉を聞かずにリディは走り出した。


(正気かよ・・・)


俺はやけになりつつも少しレベルが上がった事で自信がついたので、リディとともに向かっていってしまった。






盗賊どもは全部で5人。人数的にはこちらが不利だ。それにこちらは木剣。あちらは短剣。刃物が付いているかいないかはかなりの違いだった。



リディは手近な一人を木剣で殴り倒す(殴り倒すという表現が相応しいほどにフルスイングで木剣を振るっているのだ)と、俺に叫んだ。


「いいか!二人でいかに息を合わせられるかがポイントだ!一気に行くぞ!」

「わ、わかった!」


俺はリディの隣まで(俊敏さ5で)駆けつけ、横に並ぶ。


息を、合わせる・・・。


リディが横薙ぎに相手の胴体に木剣を振るうのにあわせて、俺は敵の横に跳び、木剣で足払いを掛ける。足払いは相手がこけなくてもそれなりのダメージになるように思いっきりだ。


相手は転ばなかったので思いっきり脛と胴体を強打さて悶絶した。


見てるこっちも痛くなってくるよ。まぁ、敵のことを気にかけてる余裕なんてこっちには無いけどな。


とりあえず行動不能にすればいいので次の敵に向かう。


次は俺がリディより前に出ていたので俺が最初に斬りかかる。大きく構えて大上段に木剣を振るった。


だが、相手の持っている短剣で受けられた。しかしまだ終わりではない。受けられたらそのまま攻撃すればいい。そのまま、二打、三打、と連続攻撃を打ち込む。


視界の端で金の髪がなびいた。リディだった。リディは相手の背後に回ると、思いっきり木剣を叩き込む。相手はなすすべもなく昏倒した。


残りは2人。俺は息を整えつつもリディに、どうする、と目線で聞く。リディは小さく呟いた。


「俺とお前で別々の敵を潰す。その方が効率がいいからな。どちらかに攻撃が集中されないように気をつけろ」

「わかった」


俺は頷くと木剣を構えなおす。そして、同時に走り出した。


俺は木剣を上段から振り下ろすと見せかけてワンテンポ遅らせて胴を打った。フェイントだ。このほうが直撃する可能性が高まる。


案の定、俺の一撃は軽々とヒットし、相手の戦意を削げた。あれ?こんなに強かったっけ、俺。


何はともあれ、リディのほうも何の問題もなく終わったようだった。


これで全員倒した。辺りはうめき声を上げる盗賊で溢れている。死人は全くでなかった。これもリディの強さの証だろう。


「こいつら、どうすんだ?」

「心配はいらない。この辺りはシゲルの兵が巡回している。こいつらがこの辺りで旅人を襲撃していたから、尚更警備を厳重にしていたのだ。そろそろ兵士達を乗せた馬車が来る頃だろう。その者たちに引き渡す」

「なるほどな。そこまで計算に入れてこの小屋に泊まることにしたのか」

「あたりまえだ。俺が家主も居ない小屋に泊まろうなんて思うはずが無いだろう。俺の良心が全力で拒否をするさ」

「・・・だろうな」


にしても、このお姫様はなんておてんばなんだろうな。まさか自ら、騒ぎを起こす盗賊どもを一網打尽にするなんて。


「そういや、俺一人でこいつらのうちの一人を倒せたのが不思議だったな」


俺がふと思い、そう呟くと、リディはそんなことか、と話し始める。


「こいつらのグループは元々寝込みを襲い、殆ど金品を巻き上げる手口だった。それゆえに逃げ足は速いがな。こいつら自体はそれほど強くは無いのだ」

「そういうことだったのか」


どうりで俺なんかでも勝てたわけだ。まだまだ俺も弱いからな。頑張らねば。


少しして、ランタンのような灯りがこちらへやってきた。シゲル国の巡回の兵士だ。


リディは事の次第を説明すると、盗賊どもを引き渡した。リディを見た兵士は「何で王女がこんな所に」という顔をしていた。まぁ、普通は驚くよな。


何はともあれ、これで俺の今日の稽古は終わった。最後の実戦で、レベルが3上がり、15になっていて驚いた。


リディにその事を伝えると、とても嬉しそうにしてくれた。一端の教育係のことに、こんなに親身になってくれる王女様なんて、そうそういないと思う。


俺は心の中でリディに感謝をしつつ、眠りについた。


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