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野宿・・・?




さて、俺たちはある重要な事を忘れていた。


俺たちは当初の予定では、ティール帝国より攻撃を受ける可能性のあるラーグの救援へとやってきたのだ。


つまり何が言いたいかというとだ。


「テント、持ってない・・・」


野宿の準備は何にもしてきてないということだった。


日はもう傾いてきている。この付近には街などあるわけない。大草原のど真ん中だ。


「リディ・・・どうする?」

「やむをえまい。寝ないで進もう」

「いや何を言い出すんだよ!さすがにその選択肢は無いだろ!」

「案ずるな。徹夜くらいどうってことない」

「いやいやいや。人間寝ないと生きてけないの!それに気を張る事だってこれからたくさん出てくるんだ。休めるときに休んどかないとこれから大変だぞ!」

「休めないから困っているのだろう?」

「うっ・・・確かにそうだけどさ」


だからって徹夜はまずい。向こうは戦闘のスペシャリストがごろごろいる国だ。最高のコンディションで臨んでもらわないと困る。



「ん?・・・ミシェル、あれを見ろ!」


リディの指差す先には一つの小屋が。かなりボロいが、一晩止まるにはちょうどいいという感じだった。明らかに怪しい気もしなくも無いが・・・。




「あの小屋を借りて寝るのはどうだろう。人が住んでいたら、頼み込んで一晩泊めてもらえばいいんじゃないか?」

「まぁ、そうだけどさ・・・なんか怪しくねぇか?」


こんな草原のど真ん中にぽつんと立っている小屋なんてそうそう無い。本当にこのまま泊まってもいいんだろうか?


「とりあえず、あの小屋に人が住んでいるか否かを確認するくらいはしたほうがいいだろう。行くぞ、ミシェル」

「わかったよ。あの小屋に泊まるかどうかはそれからだ」


俺たちはその小屋へと向かった。





「すみません。どなたかいらっしゃいませんか?」


小屋の半開きになっている戸の隙間に、リディの凛とした声が響く。しかし、返事は無い。それほど大きな小屋でもないので聞こえなかったということは無いだろう。


「留守ってことなのか・・・それとももう使われてないってことなのか・・・」

「さあな。・・・だが、恐らくは数ヶ月は使っていないだろう」


確かに中は埃っぽかった。人がいた気配は無い。


「どーすんだ?もしここの持ち主が旅に出ているだけだったら、勝手に使わせてもらうわけにはいかねーだろ?」

「そうだな・・・ん?」

「?どうした、リディ」

「・・・いや、大丈夫だ。ここは恐らく誰も使っていないさ。この小屋を使おう。いいだろう、ミシェル」

「何でそんなことがわかるんだよ」


すると、リディががばっと扉を開けた。中はさまざまな物でごちゃごちゃとしていた。藁のような農作物や、何に使うかわからないような機械、奇妙なオブジェなどなど・・・まとまりの無い部屋のように見える。



「人が住めるような場所じゃないだろう。炊事場も、風呂も無い。生活に必要な物が何一つ無いんだ。ただのごちゃっとした部屋があるだけ。恐らく、倉庫か何かだろう」


確かに言われてみれば。それに埃っぽいし、鍵をかかってない所を見ると大丈夫なのかも・・・。いや、でも・・・。


「ミシェル!これを見ろ!」


あれこれ考えているうちにリディはずかずかと中に入っていた。あいつはヘンな所で行動的だよな・・・。


そんなリディが持っているのは一枚の紙。どうやら、唯一の家具であるテーブルの上にあった物だったらしい。


その紙には丁寧な文字で「どなたでも好きにお泊まりください。 ボロ小屋の家主」と書いてあった。


・・・自分でボロ小屋と宣言する辺りが度量の大きい人なんだろうとわかる。


「きっとこの小屋の家主はとても親切な人なんだ。その厚意に甘えさせてもらおう」

「・・・そうだな。こうやって置手紙を置いておく辺り、かなり親切な人だしな」


なるほど。確かにこれから休む間も無くなるはずだし、ここはこの人の親切に甘えさせてもらうのがいいだろう。


俺は荷物を放り投げるとリディに言った。


「じゃあ、そこの藁の所に荷物を置こう。適当に寝る場所見つけて寝りゃあいいな」

「ああ。構わないだろう。・・・それと、ミシェル。二本、アイリスのところで木剣をもらってきた」


リディはそう言って大きなサックから木剣を二本取り出した。樫でできたその木剣は、剣と重さはさして変わらなさそうに思える。いつの間に。そう思いながらもリディが木剣をこちらに渡してくるので素直に受け取る。


「で?これを俺に渡してどうすんだ?」

「お前を鍛える」

「マジでか」


いや、確かに背に腹は変えられんが俺の最後の砦であるプライドが全力で拒否している。


何が悲しゅうて守らなければならないはずの人間に稽古をつけてもらわにゃならんのだ。



・・・だが。


何も守れないで死ぬのだけはごめんだ。


「・・・よろしく、頼む」


俺の中のプライドを黙らせて言葉を搾り出した。リディはふっと笑った。


「よし。それでは始めようか」


こうして俺の修行が始まった。これでレベル5くらいは脱して欲しいもんだ。


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