プロローグ
私は女装ゲーが大好きだ。
気長に更新をお待ちください。
幼き日に、僕は母様と住み慣れた屋敷から逃げ出した。
そこには変わらぬ日常があった。
木々が生い茂る森の中にある屋敷で、両親と一緒の賑やかな食事。いつも可愛がってくれる叔父。家事が完璧な優しいメイドさん達や、父様の補佐をしている有能な老爺の執事から聞ける面白い話や遊び。
ずっとこの楽しい日常が続くと思ってた――でも、そんなものはすぐ壊された。僕の力のせいで――。
僕の血筋には、稀に特殊な力を持った人が生まれる。初めてその力を持ったご先祖様は、その強大な力を他人に利用されることを恐れ、信頼する臣下を連れて、人知れぬよう隠れて暮らしていった。
ご先祖様は、もし、子供や孫達にその力が宿って悪用や利用されぬように、強くその力の使い方を教え込んだ。その教えは家族代々に受け継がれ、力を宿った子供が誕生したら、その力の強さや恐ろしさを教え込み、子供達はその教えを守り、今に至るまで、その力の悪用や利用されることを防いでいった。
そして、僕が生まれ、僕にもその力が宿っていた。
僕も、その教えを聞き、力を使わないよう生活していた。僕は、この強く恐ろしい力を持っていても、父様や母様、叔父にメイドさん達や執事さんがいれば、力なんて使わなくても幸せだった……。
でもそんなある日――僕達の住む屋敷が襲撃された。
その人達は、黒の装束を纏い、顔はフードで隠されていた。
謎の黒装束達は、片手に西洋剣を持ち、庭の掃除をしていたメイドさん達に、次々と切りかかった。
あっという間の瞬間だった。
僕は屋敷から庭を見ていたため、無残にも切り殺されていくメイドさん達を見てしまった。僕は、目尻に涙を浮かべて、声を荒げそうになったが、母様が僕の口を手で塞ぎ、静かに。と、小声で諭した。今、最も頼れるのは、父様と母様であったため、僕はその言葉に頷いた。
震え上がる体と、絶えず流れる涙に、僕を抱きしめている母様に強く抱き返した。
屋敷にいた他のメイドさん達や老執事は、外の悲鳴をいち早く気づき、すべての扉、窓を閉め、そこの守りを強化した。
しばらくの時間稼ぎができたことを確認した父様は、母様と一緒に、隠れ通路から逃げろと言った。
だが僕は、あの力を持っている。あの力で謎の黒装束達を追いやることができるのではと父親に言っが、父様は首を横に振った。謎の黒装束達の狙いは僕の力。その力を持った僕が行ったとしても、何が起こるか分からないから僕を行かせられない。と、父親は強く拒否した。
僕は、それでもと抗議したが、父様は話を聞かず、僕と母親をそっと抱きしめ、母親に僕を頼んだと告げ、母様は、涙ぐみながら微笑み、僕を抱きかかえ隠し通路に入った。
僕は泣き叫ぶが母様は、嗚咽をしながら隠し通路を走った。
僕が見た父様の最後の姿は、屋敷の皆と笑みを浮かべた姿だった――。
涙が枯れるぐらい泣いた僕は、母様と無事に隠し通路から外に出たが、最悪なことに――、ちょうど屋敷のある方角から、空に向けて激しく燃える炎と煙が見えてしまった僕は、その意味を理解し気を失った――。
そこから先は覚えてなかった――。
気が付くと、僕は見知らぬ部屋のベットで寝かされていた。
母様は、目を覚ました僕に、髪を優しく梳かしながら、説明してくれた。
まずここは、僕の一族の力を知る、母様の友達である女性の家だそうだ。
あの後、何とかして友達の女性に連絡を取り、事情を説明してこの家に匿ってもらったのだった。
僕は、あの記憶が甦り、ベットの縁に腰掛けていた母様に抱きつき、また僕は大声で泣いた。母様はそっと背中に手を回し、僕が泣き止むまで、優しく背中を擦ってくれた。
暫くして落ち着いた僕に、母様は、これからのことを話した。
――いい? 私達は今日からここで生活するの。とりあえず、ここまでくれば安全だけど、あいつらはあなたのことを知っている……このまま生活していれば、いつかはばれてしまうわ。だから、私達は姿を変えなきゃいけない……あなたにはこれから先、きっと辛い思いがまっている。でも、私は絶対あなたを一人にしないし守るわ! ……だからごめんね……私の愛しい希望――。
謝らなくていい。僕が力を持っていたから、皆があんな目に遭ってしまったんだから――。
だから僕は、大切な人を今度こそ守ってみせる。たとえ僕の身にどんな危険が及ぼうとも、この力をを使ってでも守ってみせる。そう固く決意し――、
僕は、『私』になった――――――。
誤字脱字があったら、知らせてくれるとありがたいです。