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番外編、一視同仁

よく考えれば相当つらい境遇だな。主人公・・・

『中務大輔、若狭に出兵し武田の倅を保護するのだ。』

朝倉家当主朝倉義景の命を受け、わしは出陣した。


殿は保護と言っていたがこれは若狭を間接支配するために人質を取りに

行くのが目的だ。

こんないやな役回りをやらされるとはな・・・




それほど苦戦せず敵を駆逐し武田氏の居城、後瀬山城に到着し

老臣たちの謝礼を聞いてすぐ本題を

切り出すことにした。


現武田家当主の武田孫八郎はまだ元服も済ましておらぬし、

年の頃も孫七郎と同じくらいではないか。

はぁ、余計に命を果たすのがいやになる。


『此度の援軍の儀、真に感謝いたします。』

「う、うむ。・・・・・武田孫八郎殿は幼年ゆえ朝倉家本拠一乗谷にて

養育するようにとの殿からの命令だ。」


わしがそれを言った瞬間広間にいた重臣たちから驚きや不満から

ざわめきが走った。


それも当たり前だ。自家の当主を人質に寄越せと言われれば

誰だって腹を立てる。

これは罵詈雑言の一つや二つ浴びせられる覚悟を決めて来ているが、

実際浴びせられるのはあまり気分の良いものではない。


憂鬱な気分でいたが覚悟をしていた展開にはならなかった。

広間に響いたのは怒号でも罵詈雑言でもなく


「やめろ!うろたえるな。」


幼子の声だった。

当主である武田孫八郎の一声で広間は静まりかえった。


その後、落ち着きを取り戻し折を見て若狭に帰すと言い聞かせ城を出た。

越前に連れて行くその道中折をみて様子を伺っていたが

悲観に暮れているようで、どこか寂しげで悲しげだった。


その姿に既視感がある。

孫七郎が父、朝倉景垙の死を知ってしばらくはあのような様子だったのだ。

きっとまたあの時と同じように、時が悲しみを癒すまではそっとしておくべきだろう。





殿との面会の時の姿は今でも鮮明に覚えている。

たかが六つの童だと高を括っていた家老たちも、

その立派な姿に驚愕していた。


六つにしてあの顔つきとは・・・将来が怖いくらいだ。

亡き宗滴様がいたらどのように思われただろうか。

一人前の立派な武将に育て上げるために心得を教えるのであろう。


幸いにして殿がわしに養育と監視を行うよう命じたため

屋敷に連れて行ったが孫七郎と馬が合うようで何よりだった。

だがいつも焦っているようで寝る間も惜しんで勉学を修めている。

その性で風邪を拗らせた時は一度思いっきり叱り付けたのが利いたのか

反省したのか前より外に出るようになって表情も豊かになり安心したものだ。


だが何時かは若狭に帰らねばならない。一生をここ一乗谷で終えてはならないのだ。

せめてもうしばらくは、わしの元で平穏を味あわせてやらねばならない。

恐らく若狭に帰れば当面は平穏を過ごすことは敵わぬだろう。

本編はしばらくキンクリします。



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